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第1話 婚約者の素顔
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私、エレノア・ブラックウェルには、同じ男爵家の長男である、レイモンド・ラザフォードという婚約相手がいた。
私とレイモンド様が婚約したのは約5年前のことである。まだ幼かった私は、婚約相手が決まったという話だけ聞かされていて、実際にその相手と顔を合わせる機会はなかった。
噂では、婚約相手の彼はとてもカッコイイ人らしい。どんな人なのだろうと期待に胸を膨らませていた。
「ついに、彼と会えるのね」
学園に通う年齢になり、私は初めてレイモンドと出会える。2歳年上だった彼は、私よりも2年早く学園に通っていたのだ。せっかくなら一緒に通いたいと思っていたけれど、年齢が違うので仕方ない。せめて1年だけでも楽しい時間を婚約相手と共有したい。この期間を大切にして、仲を深めて、結婚に向けての準備を進める。そんな計画を立てていた。
ワクワクしながら初めて彼に会いに行ったのだが、私の期待はあっけなく打ち砕かれた。私の考えていた計画は、スタートから間違っていた。
「貴方が、レイモンド様ですか?」
学園の広場にあるベンチに座る彼に話しかける。事前に聞いていた容姿から、彼で間違いないと思う。けれど、間違っていてほしいと思った。
話しかけると、彼は視線を上げて私の顔を見る。それからジロジロと上から下までじっくり見られた。そして、ようやく彼が口を開く。
「あー、そうだが。お前は新入生か?」
「私は、エレノアです。貴方の婚約者の」
「えぇ? あぁ、そういえば。そんな話もあったっけな」
「……」
レイモンド様は、私とは違って婚約について無関心だったみたいだ。そんな彼は、隣りに座っていた女性の肩を抱いてイチャイチャし始めた。まるで、恋人のように。私は、今の感情を外面に出さないように注意しながら彼に問いかける。
「その女性は誰ですか? 恋人ですか?」
「あ? こいつは、恋人なんかじゃねぇよ」
「えー! ひっどい! あんなことも、こんなこともしたのに」
「アレぐらいで恋人面するなよ。めんどくせぇな」
「……」
目の前でイチャイチャし続ける男女の様子に、私は辟易した。彼は否定したけど、どう見ても友人なんかじゃない。友人関係を超えた、男女の仲にしか見えない。
婚約者である私がいるにも関わらず、レイモンド様はそんな相手を作っていたのだ。
後日、私の情報網を駆使して彼について調べさせると、数々の交際歴が発覚した。何人もの貴族令嬢たちと一緒にいるという目撃情報が、次々と出てきた。怒りよりも恐怖が湧き上がる。
このままでは、とんでもないことになってしまう。彼は、それを自覚しているのかしら。どちらにしても、見過ごすことは出来ない。どうにかしないと。
私は、レイモンド様に事情を聴きに行った。
「別に、浮気なんかじゃないさ。ちょっと遊んでるだけで、結婚したらやめるから、これぐらい見逃してよ」
これぐらい。彼の言葉を聞いて、私は絶句した。悪びれた様子もなく、全てを遊びだと言い切るレイモンド様。私の気持ちなんて、全く考えていない。それから、その行為が何を引き起こすのかを分かっていない。
「そんなに言うなら、君が相手してくれよ」
「婚前交渉はダメです」
「固いなぁ。あれもダメ、これもダメって、いちいち指図してくるなよ」
そう言い残して、彼は立ち去る。これ以上、私の注意なんて聞きたくない。そんな表情を浮かべて、逃げるように行ってしまった。
私は途方に暮れた。婚約相手が、こんなにも常識から外れた行動をする男性だったなんて。私の忠告にも全く耳を貸さない。
レイモンド様の現状を、実家であるラザフォード家に知らせようと手紙を送った。息子さんがとんでもないことをしているので、両親から諌めてほしいと訴えた。
「おい、お前!」
数日後、学園の廊下を歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。そして、背後からいきなり襟を掴まれた。
「きゃっ!?」
突然の首が締まる衝撃に驚いて、私は悲鳴を上げて体が固くなる。とても乱暴な男に捕まり、逃げられないという恐怖で、さらに動けなくなる。
「お前、実家に何かチクったな! お前のせいで俺が怒られたじゃないか!」
「……ッ! 私は、貴方のしている行為を伝えただけです」
レイモンド様だ。彼に掴まれたまま睨まれて、恐怖で震えそうになるのを必死で抑える。私は、怖がっている感情を隠す。この男に、今の私の感情を悟られたくない。
「チッ! 今度、勝手なことしたら許さないからなッ!」
「……」
ようやく襟から手を放したレイモンド様は、捨て台詞を吐いて立ち去った。彼が居なくなってから、私の目から涙が溢れ、体がガタガタと震える。理不尽な仕打ちに、悔しさがこみ上げる。悪いことをしているのはレイモンド様なのに、なんで私が脅されなきゃいけないのよ。
暴力的で、傲慢で、ひどい男だった。
後日、ラザフォード家から返事が届いた。けれど、息子は何もしていないと言っているので、嘘の情報で惑わせないでほしいと返された。まるで、私が悪いかのような書き方で。
私は、心が決まった。どうにかして、この最低な男性との婚約を破棄しなければ。なるべく早くしないと、取り返しのつかないことになる。
このままだと、これから起きるであろう出来事に巻き込まれてしまい、私の人生も狂わされてしまう。そうならないように、急いで離れないと。
学園に通いながら情報を集め、婚約破棄の準備を整えてから、中庭でレイモンドと対峙した。
「え、なに。俺に用でもあるの?」
彼の周りには3人の女子生徒が座っている。浮気を指摘されてからは、私にわざと見せつけるようにほかの女性とイチャイチャし続けている。注意しても止めないし、むしろ激しくなる始末。もう、こんな男と関わりたくない。
「レイモンド様、浮気をやめてください」
「また、それ? これは浮気じゃなくて、ただ親しくしてるだけだって。なぁ」
彼の両脇に座っている彼女たちは私をからかい、馬鹿にするような目で見てくる。ムカつくけれど、レイモンド様と2人きりで対峙するのは怖い。暴力を振るわれるかもしれない。だから、今の状況は悪いわけじゃない。良くもないけれど。
「そうそう。私たちはレイモンド様と、とっても仲良しなの」
「邪魔しないでよね」
「ねー、ねー。次は、何して遊ぶ? あんな娘、無視して考えようよ」
女たちに色々言われるのは、やっぱりムカつく。そんな言葉で感情を表に出さないように、私は話し合いに集中する。
「どうしても、浮気をやめてもらえないですか?」
「うっせーな。しつこいぞ」
私だって、こんなにしつこく言いたくない。だけど、これは最終確認。これでダメなら、もう無理でしょう。彼は、どうやっても変わるつもりはないらしい。
「では、貴方との婚約を破棄させてもらいます」
「は?」
レイモンドが驚いた様子で目を見開く。一瞬、動揺が表情に現れたけれど、すぐに彼は不敵な笑みを浮かべる。私が、冗談で言っている。そう思ったのかしら。
冗談じゃなく、私は本気なのよ。
「えー、レイモンド様、婚約を破棄するの!? それじゃあ私、次に婚約する相手に立候補しようかな!」
「ずるい! 私もレイモンド様の相手に選んでほしいわよ」
「私は、別にいいかな。でも、あんなダサい女より、私のほうがいいでしょ?」
婚約破棄。それを聞いた女たちが湧き上がり、私の顔を見てクスクスと笑ったり、婚約相手にしてくれとレイモンドに懇願する。
「答えを聞かせてください。婚約を破棄してもいいんですね?」
「ふん! あぁ、いいぜ。好きなようにしなよ」
レイモンド様が傲慢な表情を浮かべて、鼻で笑う。
「じゃあ、この書類にサインを。婚約破棄を認めるという内容です」
「は? そこまでするのかよ」
「いいじゃない! 早くサインしましょ! これで婚約破棄が決まるんでしょ」
「ちっ! 面倒くさいな」
女たちが急かす。私にとっては、ナイスアシストだわ。渋々ながら、レイモンドは私の用意した書類にサインした。サイン済みの書類を受け取る。
「ほら、書いたぞ。用が済んだのなら、さっさと失せろ」
「邪魔だよねー」
「そうそう、邪魔邪魔」
「レイモンド様と私たちの時間を奪いすぎよ」
あぁ、面倒だ。でも、最後まで感情は隠したまま耐えきる。私は笑顔を浮かべて、言った。
「それは失礼しました。では、さようなら」
振り返って、彼らから離れる。背後から馬鹿にするような笑い声が聞こえてきた。けれど、私は満足している。これで、第1段階クリアしたから。
だけど、まだまだ慎重に進めないと。失敗してしまったら、私も大変なことに巻き込まれかねない。気を引き締めて、次のステップへ進めましょう。
私とレイモンド様が婚約したのは約5年前のことである。まだ幼かった私は、婚約相手が決まったという話だけ聞かされていて、実際にその相手と顔を合わせる機会はなかった。
噂では、婚約相手の彼はとてもカッコイイ人らしい。どんな人なのだろうと期待に胸を膨らませていた。
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ワクワクしながら初めて彼に会いに行ったのだが、私の期待はあっけなく打ち砕かれた。私の考えていた計画は、スタートから間違っていた。
「貴方が、レイモンド様ですか?」
学園の広場にあるベンチに座る彼に話しかける。事前に聞いていた容姿から、彼で間違いないと思う。けれど、間違っていてほしいと思った。
話しかけると、彼は視線を上げて私の顔を見る。それからジロジロと上から下までじっくり見られた。そして、ようやく彼が口を開く。
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「……」
レイモンド様は、私とは違って婚約について無関心だったみたいだ。そんな彼は、隣りに座っていた女性の肩を抱いてイチャイチャし始めた。まるで、恋人のように。私は、今の感情を外面に出さないように注意しながら彼に問いかける。
「その女性は誰ですか? 恋人ですか?」
「あ? こいつは、恋人なんかじゃねぇよ」
「えー! ひっどい! あんなことも、こんなこともしたのに」
「アレぐらいで恋人面するなよ。めんどくせぇな」
「……」
目の前でイチャイチャし続ける男女の様子に、私は辟易した。彼は否定したけど、どう見ても友人なんかじゃない。友人関係を超えた、男女の仲にしか見えない。
婚約者である私がいるにも関わらず、レイモンド様はそんな相手を作っていたのだ。
後日、私の情報網を駆使して彼について調べさせると、数々の交際歴が発覚した。何人もの貴族令嬢たちと一緒にいるという目撃情報が、次々と出てきた。怒りよりも恐怖が湧き上がる。
このままでは、とんでもないことになってしまう。彼は、それを自覚しているのかしら。どちらにしても、見過ごすことは出来ない。どうにかしないと。
私は、レイモンド様に事情を聴きに行った。
「別に、浮気なんかじゃないさ。ちょっと遊んでるだけで、結婚したらやめるから、これぐらい見逃してよ」
これぐらい。彼の言葉を聞いて、私は絶句した。悪びれた様子もなく、全てを遊びだと言い切るレイモンド様。私の気持ちなんて、全く考えていない。それから、その行為が何を引き起こすのかを分かっていない。
「そんなに言うなら、君が相手してくれよ」
「婚前交渉はダメです」
「固いなぁ。あれもダメ、これもダメって、いちいち指図してくるなよ」
そう言い残して、彼は立ち去る。これ以上、私の注意なんて聞きたくない。そんな表情を浮かべて、逃げるように行ってしまった。
私は途方に暮れた。婚約相手が、こんなにも常識から外れた行動をする男性だったなんて。私の忠告にも全く耳を貸さない。
レイモンド様の現状を、実家であるラザフォード家に知らせようと手紙を送った。息子さんがとんでもないことをしているので、両親から諌めてほしいと訴えた。
「おい、お前!」
数日後、学園の廊下を歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。そして、背後からいきなり襟を掴まれた。
「きゃっ!?」
突然の首が締まる衝撃に驚いて、私は悲鳴を上げて体が固くなる。とても乱暴な男に捕まり、逃げられないという恐怖で、さらに動けなくなる。
「お前、実家に何かチクったな! お前のせいで俺が怒られたじゃないか!」
「……ッ! 私は、貴方のしている行為を伝えただけです」
レイモンド様だ。彼に掴まれたまま睨まれて、恐怖で震えそうになるのを必死で抑える。私は、怖がっている感情を隠す。この男に、今の私の感情を悟られたくない。
「チッ! 今度、勝手なことしたら許さないからなッ!」
「……」
ようやく襟から手を放したレイモンド様は、捨て台詞を吐いて立ち去った。彼が居なくなってから、私の目から涙が溢れ、体がガタガタと震える。理不尽な仕打ちに、悔しさがこみ上げる。悪いことをしているのはレイモンド様なのに、なんで私が脅されなきゃいけないのよ。
暴力的で、傲慢で、ひどい男だった。
後日、ラザフォード家から返事が届いた。けれど、息子は何もしていないと言っているので、嘘の情報で惑わせないでほしいと返された。まるで、私が悪いかのような書き方で。
私は、心が決まった。どうにかして、この最低な男性との婚約を破棄しなければ。なるべく早くしないと、取り返しのつかないことになる。
このままだと、これから起きるであろう出来事に巻き込まれてしまい、私の人生も狂わされてしまう。そうならないように、急いで離れないと。
学園に通いながら情報を集め、婚約破棄の準備を整えてから、中庭でレイモンドと対峙した。
「え、なに。俺に用でもあるの?」
彼の周りには3人の女子生徒が座っている。浮気を指摘されてからは、私にわざと見せつけるようにほかの女性とイチャイチャし続けている。注意しても止めないし、むしろ激しくなる始末。もう、こんな男と関わりたくない。
「レイモンド様、浮気をやめてください」
「また、それ? これは浮気じゃなくて、ただ親しくしてるだけだって。なぁ」
彼の両脇に座っている彼女たちは私をからかい、馬鹿にするような目で見てくる。ムカつくけれど、レイモンド様と2人きりで対峙するのは怖い。暴力を振るわれるかもしれない。だから、今の状況は悪いわけじゃない。良くもないけれど。
「そうそう。私たちはレイモンド様と、とっても仲良しなの」
「邪魔しないでよね」
「ねー、ねー。次は、何して遊ぶ? あんな娘、無視して考えようよ」
女たちに色々言われるのは、やっぱりムカつく。そんな言葉で感情を表に出さないように、私は話し合いに集中する。
「どうしても、浮気をやめてもらえないですか?」
「うっせーな。しつこいぞ」
私だって、こんなにしつこく言いたくない。だけど、これは最終確認。これでダメなら、もう無理でしょう。彼は、どうやっても変わるつもりはないらしい。
「では、貴方との婚約を破棄させてもらいます」
「は?」
レイモンドが驚いた様子で目を見開く。一瞬、動揺が表情に現れたけれど、すぐに彼は不敵な笑みを浮かべる。私が、冗談で言っている。そう思ったのかしら。
冗談じゃなく、私は本気なのよ。
「えー、レイモンド様、婚約を破棄するの!? それじゃあ私、次に婚約する相手に立候補しようかな!」
「ずるい! 私もレイモンド様の相手に選んでほしいわよ」
「私は、別にいいかな。でも、あんなダサい女より、私のほうがいいでしょ?」
婚約破棄。それを聞いた女たちが湧き上がり、私の顔を見てクスクスと笑ったり、婚約相手にしてくれとレイモンドに懇願する。
「答えを聞かせてください。婚約を破棄してもいいんですね?」
「ふん! あぁ、いいぜ。好きなようにしなよ」
レイモンド様が傲慢な表情を浮かべて、鼻で笑う。
「じゃあ、この書類にサインを。婚約破棄を認めるという内容です」
「は? そこまでするのかよ」
「いいじゃない! 早くサインしましょ! これで婚約破棄が決まるんでしょ」
「ちっ! 面倒くさいな」
女たちが急かす。私にとっては、ナイスアシストだわ。渋々ながら、レイモンドは私の用意した書類にサインした。サイン済みの書類を受け取る。
「ほら、書いたぞ。用が済んだのなら、さっさと失せろ」
「邪魔だよねー」
「そうそう、邪魔邪魔」
「レイモンド様と私たちの時間を奪いすぎよ」
あぁ、面倒だ。でも、最後まで感情は隠したまま耐えきる。私は笑顔を浮かべて、言った。
「それは失礼しました。では、さようなら」
振り返って、彼らから離れる。背後から馬鹿にするような笑い声が聞こえてきた。けれど、私は満足している。これで、第1段階クリアしたから。
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