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第5章 家族旅行編
第34話 温泉宿に到着
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「皆、到着したぞ」
春姉さんの運転により、3時間ほど車で走って目的地に到着した。
「ここが、あの有名な温泉街か! テレビで見たことある!」
停まった瞬間、最初に車から飛び降りた沙希姉さんが感嘆の声を上げた。周りの景色をキョロキョロと眺めている。そんな彼女の後に続いて、僕達も車から降りる。
天気は快晴。雲ひとつ無い晴れた青空が広がっている。その場所は山々に囲まれていて、空気も澄んでいる。近くには川が流れており、自然に囲まれているのがよくわかる場所だった。
空気が澄んでいるせいで、空が高く感じる。空気が美味しいって、こういう事なんだと実感する。
休日ということもあって、人で賑わっている。駐車場の近くにも土産物屋や食事処などが立ち並んでいて、活気に満ち溢れていた。けれとも、よく見てみると男性客は見当たらない。ほぼ皆、女性客だった。
予約している宿に向かう道中で、2人か3人だけすれ違った。向こうも珍しいものを見るような目をしていた。それぐらい少ない。こういう所で、この世界は本当に男性が少ないんだなぁ、と感じる。
女性客の多くにも僕は注目されていた。すれ違った人達が、何人も振り返って僕を見る視線を感じる。やっぱり珍しいから。でも、僕の周りには母や姉妹が居てくれたから、見るだけで誰も話しかけて来なかった。
「優、見てみろ。木刀を売ってるぞ」
「ホントだ」
春姉さんが何故か木刀に食いついて、テンションを上げる。お土産屋さんの軒先に飾られている木刀を指さして、僕に教えてくれる。欲しいのかな。
「あっちは、まんじゅうが売ってるみたいだぞ」
「美味しそうだね」
温泉饅頭と書かれた看板を見つけて、嬉しそうにする沙希姉さん。他にも色々と食べ物のお店があったけど、まだ夕食前なので食べないことにした。しばらく歩くと、目的の旅館が見えてきた。
外観は純和風の建物で、瓦屋根が特徴の平屋造りになっている。玄関には暖簾がかけられていて、入り口付近には竹で作られた植木鉢が置かれていた。
年季の入った大きな木製の門柱があって、そこに旅館の名前が書かれている。今日は、この宿に宿泊するらしい。とても良さそうな雰囲気の旅館だ。
「ようこそ、いらっしゃいました」
「予約していた、佐藤です」
「はい、承っております。こちらへどうぞ」
中に入ると着物姿の男性が出迎えてくれて、スリッパを出してくれた。彼が、宿を案内してくれるようだ。男性なんて珍しいと思ったけれど、もしかすると他の宿でもこうなのかもしれない。彼の後ろについていきながら、僕は思った。
僕の知っている常識だと、旅館では仲居さんが出迎てくれてくれる。客を接待してくれる女性が居るはずだ。価値観の逆転。彼が、こちらの世界での女将的な存在、ということなのかな。
呼び方は、女将ではなく大将、とか?
香織さんが受付を済ませて、部屋の鍵を受け取った。そして皆で宿泊する部屋まで移動する。そこは、男性が居ないと借りることが出来ない特別な部屋らしい。そんな部屋に通された。
「息子様は、旅館の中でも1人だけで行動しないようにお願いします。必ず、家族とご一緒に。何かございましたら、すぐに駆けつけられるようにいたしております」
部屋に入ると、案内してくれた彼から注意を受けた。何があるのかわからないから気をつけろ、という事だろう。その言葉に僕以外の全員が納得して、首を縦に振る。そんなに気をつけないとダメなのか。
「夕食は、19時頃。朝は、6時から8時までの間です。朝食後にチェックアウトとなりますが、よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
彼は、テキパキと説明してくれた。食事の時間と、チェックアウトする時間など。香織さんが説明を聞いて、問題ないことを伝える。
「それでは、ごゆっくりお過ごしください。失礼致します」
最後に、一礼してから退室していく彼。部屋の中には、僕達だけとなった。荷物を置いて、座布団の上に座り込む。
「しかし、広いなぁ」
春姉さんが部屋を見回して、ポツリと呟く。僕も、周りを見て同じことを思った。
部屋は広くて、とても綺麗だった。畳が敷かれている和室で、窓から見える景色も良い。きっと、良いお値段なんだと思う。窓際には、小さなテーブルと椅子が置かれていて、窓を開けると川が見えるようになっていた。
温泉街の旅館、という感じで凄くいい雰囲気だった。
「あれ、沙希姉さんは? あと、紗綾姉さん」
いつの間にか、沙希姉さんが居なくなっていた。よく見ると、紗綾姉さんも居なくなっている。一瞬で2人の姿が消えた。
「2人とも旅館の中を探検してくる、って」
「あ、そうなんだ」
香織さんが苦笑しながら教えてくれた。早速、行動し始めたらしい。沙希姉さんはこういう所に来ると、じっとしていられない性格そうだからなぁ。
紗綾姉さんは、1人で行動するのが好きそうだ。とてもマイペースで、自分だけの世界に没頭するタイプ。
2人が同じタイミングで旅館の探検に行った。そういうところが、姉妹で似ていると思う。
「それじゃあ、私も。ちょっと旅館の中を見てこようかな」
「行ってらっしゃい」
春姉さんが立ち上がって、部屋の外に出ていった。そして部屋には僕と香織さんと葵の3人だけが残った。
皆、それぞれで行動するのか。僕は何をしようか。何もすることが無いや。あまり出歩かないほうが良さそうだし、部屋の中でゴロゴロしておこうかな。
「香織さんは、温泉には行かないの?」
「うーん。私は、夕食の後に大浴場に行ってみようかしら。だけど、部屋にも温泉が引いてあるから、そっちでもいいかも。ゆうくんは?」
今すぐ温泉に入ってみようかと思ったけれど、香織さんは後にするらしいので僕も後回しにすることにした。1人じゃ寂しいので、誰かと一緒に入りたいな。
「僕も、温泉に入るのは後にします。今は、この部屋でゆっくりしようかな」
「それがいいわね」
「葵も、ゆっくりしよう」
「……うん」
ということで、部屋に残った組の皆でボーっとしながらテレビを見て、だらーんと緩みきった空気で過ごした。かなり、リフレッシュすることが出来たと思う。
春姉さんの運転により、3時間ほど車で走って目的地に到着した。
「ここが、あの有名な温泉街か! テレビで見たことある!」
停まった瞬間、最初に車から飛び降りた沙希姉さんが感嘆の声を上げた。周りの景色をキョロキョロと眺めている。そんな彼女の後に続いて、僕達も車から降りる。
天気は快晴。雲ひとつ無い晴れた青空が広がっている。その場所は山々に囲まれていて、空気も澄んでいる。近くには川が流れており、自然に囲まれているのがよくわかる場所だった。
空気が澄んでいるせいで、空が高く感じる。空気が美味しいって、こういう事なんだと実感する。
休日ということもあって、人で賑わっている。駐車場の近くにも土産物屋や食事処などが立ち並んでいて、活気に満ち溢れていた。けれとも、よく見てみると男性客は見当たらない。ほぼ皆、女性客だった。
予約している宿に向かう道中で、2人か3人だけすれ違った。向こうも珍しいものを見るような目をしていた。それぐらい少ない。こういう所で、この世界は本当に男性が少ないんだなぁ、と感じる。
女性客の多くにも僕は注目されていた。すれ違った人達が、何人も振り返って僕を見る視線を感じる。やっぱり珍しいから。でも、僕の周りには母や姉妹が居てくれたから、見るだけで誰も話しかけて来なかった。
「優、見てみろ。木刀を売ってるぞ」
「ホントだ」
春姉さんが何故か木刀に食いついて、テンションを上げる。お土産屋さんの軒先に飾られている木刀を指さして、僕に教えてくれる。欲しいのかな。
「あっちは、まんじゅうが売ってるみたいだぞ」
「美味しそうだね」
温泉饅頭と書かれた看板を見つけて、嬉しそうにする沙希姉さん。他にも色々と食べ物のお店があったけど、まだ夕食前なので食べないことにした。しばらく歩くと、目的の旅館が見えてきた。
外観は純和風の建物で、瓦屋根が特徴の平屋造りになっている。玄関には暖簾がかけられていて、入り口付近には竹で作られた植木鉢が置かれていた。
年季の入った大きな木製の門柱があって、そこに旅館の名前が書かれている。今日は、この宿に宿泊するらしい。とても良さそうな雰囲気の旅館だ。
「ようこそ、いらっしゃいました」
「予約していた、佐藤です」
「はい、承っております。こちらへどうぞ」
中に入ると着物姿の男性が出迎えてくれて、スリッパを出してくれた。彼が、宿を案内してくれるようだ。男性なんて珍しいと思ったけれど、もしかすると他の宿でもこうなのかもしれない。彼の後ろについていきながら、僕は思った。
僕の知っている常識だと、旅館では仲居さんが出迎てくれてくれる。客を接待してくれる女性が居るはずだ。価値観の逆転。彼が、こちらの世界での女将的な存在、ということなのかな。
呼び方は、女将ではなく大将、とか?
香織さんが受付を済ませて、部屋の鍵を受け取った。そして皆で宿泊する部屋まで移動する。そこは、男性が居ないと借りることが出来ない特別な部屋らしい。そんな部屋に通された。
「息子様は、旅館の中でも1人だけで行動しないようにお願いします。必ず、家族とご一緒に。何かございましたら、すぐに駆けつけられるようにいたしております」
部屋に入ると、案内してくれた彼から注意を受けた。何があるのかわからないから気をつけろ、という事だろう。その言葉に僕以外の全員が納得して、首を縦に振る。そんなに気をつけないとダメなのか。
「夕食は、19時頃。朝は、6時から8時までの間です。朝食後にチェックアウトとなりますが、よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です」
彼は、テキパキと説明してくれた。食事の時間と、チェックアウトする時間など。香織さんが説明を聞いて、問題ないことを伝える。
「それでは、ごゆっくりお過ごしください。失礼致します」
最後に、一礼してから退室していく彼。部屋の中には、僕達だけとなった。荷物を置いて、座布団の上に座り込む。
「しかし、広いなぁ」
春姉さんが部屋を見回して、ポツリと呟く。僕も、周りを見て同じことを思った。
部屋は広くて、とても綺麗だった。畳が敷かれている和室で、窓から見える景色も良い。きっと、良いお値段なんだと思う。窓際には、小さなテーブルと椅子が置かれていて、窓を開けると川が見えるようになっていた。
温泉街の旅館、という感じで凄くいい雰囲気だった。
「あれ、沙希姉さんは? あと、紗綾姉さん」
いつの間にか、沙希姉さんが居なくなっていた。よく見ると、紗綾姉さんも居なくなっている。一瞬で2人の姿が消えた。
「2人とも旅館の中を探検してくる、って」
「あ、そうなんだ」
香織さんが苦笑しながら教えてくれた。早速、行動し始めたらしい。沙希姉さんはこういう所に来ると、じっとしていられない性格そうだからなぁ。
紗綾姉さんは、1人で行動するのが好きそうだ。とてもマイペースで、自分だけの世界に没頭するタイプ。
2人が同じタイミングで旅館の探検に行った。そういうところが、姉妹で似ていると思う。
「それじゃあ、私も。ちょっと旅館の中を見てこようかな」
「行ってらっしゃい」
春姉さんが立ち上がって、部屋の外に出ていった。そして部屋には僕と香織さんと葵の3人だけが残った。
皆、それぞれで行動するのか。僕は何をしようか。何もすることが無いや。あまり出歩かないほうが良さそうだし、部屋の中でゴロゴロしておこうかな。
「香織さんは、温泉には行かないの?」
「うーん。私は、夕食の後に大浴場に行ってみようかしら。だけど、部屋にも温泉が引いてあるから、そっちでもいいかも。ゆうくんは?」
今すぐ温泉に入ってみようかと思ったけれど、香織さんは後にするらしいので僕も後回しにすることにした。1人じゃ寂しいので、誰かと一緒に入りたいな。
「僕も、温泉に入るのは後にします。今は、この部屋でゆっくりしようかな」
「それがいいわね」
「葵も、ゆっくりしよう」
「……うん」
ということで、部屋に残った組の皆でボーっとしながらテレビを見て、だらーんと緩みきった空気で過ごした。かなり、リフレッシュすることが出来たと思う。
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