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第4章 親権問題編
第28話 相談
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元父親、名前を都築精児《つづきせいじ》と言うらしい、その人が去ってから香織さんの元気がなくなり、部屋で休むと言って閉じこもってしまった。
「大丈夫かな?」
心配だけど、今の僕に出来ることはなさそう。部屋から出てくるのを大人しく待つだけ。
「もしかして、あの人が来てた?」
「春お姉ちゃん。あの人って、元父親の?」
「うん、アイツ」
「それなら、さっき来てた」
「そうか」
リビングに春お姉ちゃんが来て、心配そうな顔で質問してきた。答えると、今度は深刻そうな表情に変わる。
春お姉ちゃんの反応を見ると、やはり印象は良くないようだ。姉さんたちや妹と、あの男が遭遇しなくてよかったな。もし会っていたら、面倒なことになっていたかもしれない。
香織さんが部屋に閉じ籠もっていることも伝えると、春お姉ちゃんは眉間にシワを寄せながら小さく息を吐いた。
「母さんは、とりあえず落ち着くまでそっとしておいてあげよう。それよりも、優もちゃんと休みなさい。朝から大変だったんでしょう?」
「あ、うん。わかった」
春お姉ちゃんに言われて、今日は休むことにした。明日になれば、香織さんも元気になってるはず。そう信じて。
「おはよう、優くん」
「あ。おはよう、香織さん」
翌朝。香織さんは、笑顔で挨拶してくれた。昨日のことを気にしている様子もないみたいで、安心した。吹っ切れたのかな。そう思っていると、香織さんが言った。
「今日、これから私と一緒に行ってほしいところがあるの。学園には後で連絡するから、お願いしてもいい?」
「わかった。いいよ」
一緒に行ってほしいと言われて、断る理由はない。もちろん、僕は即答した。平日だけど、学園にも連絡してくれるらしいので問題ないと思う。
皆の朝食を用意してから、支度をして、香織さんと一緒に家を出る。車に乗って、着いた先は街中にある駐車場。
ここに、何の用事があるんだろうか?
疑問に思いながら、車を降りて駐車場から少し歩いた。そして、ビルの中に入る。僕は香織さんの後ろを歩いて、ビルのエレベーターに乗り込んで5階へ。
「ここよ」
「小池法律事務所?」
「そう。ここに私の知り合いが居るの」
「へぇ、そうなんだ」
僕が連れてこられたのは、法律事務所だった。つまり、昨日の件について相談するつもりなのだろう。それは、とても良い方法だと思った。専門家に相談するのが一番だと思う。
事務所に入り、香織さんが手続きを済ませる。すると、すぐに一人の女性がやって来た。黒のスーツを着た、銀縁メガネの知的そうな見た目の人。
「カオリ、待たせた」
「急にごめんなさい、アイ。ちょっと大変なことになって、助けてほしいの」
「君の頼みなら、私は何でも聞くぞ。それで、どうしたんだ?」
女性はハキハキとした口調で、香織さんと会話をする。そんな2人は挨拶すると、握手を交わして笑顔になった。
とても仲良さそうな感じで、信頼関係があるように見える。彼女なら、とても頼もしい味方になってくれそうだ。
「その前に、この子も連れてきたの」
「初めまして、佐藤優です。よろしくお願いします」
香織さんが僕のことを紹介すると言ってくれたので、一歩前に出て自己紹介した。名前を言って、頭を下げる。
顔をあげると、香織さんの友人の女性は微笑んでいた。
「こちらこそ初めまして。私は弁護士をしている、小池《こいけ》亜衣子《あいこ》と言う者だ。よろしく頼む」
そう言うと、彼女は右手を差し出してきた。僕は、その手を握る。力強く握り返されて、とてもパワフルな人なんだと感じた。
「ユウくん。実は、アイとは小さい時に何度か会ったことがあるのよ」
「え、そうだったんですか? 覚えてなくて、申し訳ありません」
「いやいや、気にする必要はないよ。君の事情について、色々と聞いているからね。かなり大変だったと」
実は何度か会ったことがあると、香織さんに教えてもらったけれど覚えていない。申し訳ないと思っていると、小池さんは気にしないで大丈夫と優しく言ってくれた。事情も知ってくれているらしい。
「しかし、あの男の子が大きくなったな。それに、とっても美人になった」
「あの、ありがとうございます」
小池さんに褒められて、お礼を言う。美人になったという評価は照れくさいけど、悪い気はしない。
「それじゃあ早速、君たちの話を聞かせてもらおうか」
小池さんに案内されて、事務所の中にある部屋へ移動する。そこにあるソファーに座って、話すことになった。香織さんと僕が並んで、向かい側に小池さんが座った。昨日の件について、香織さんが弁護士の小池さんに説明し始める。
「大丈夫かな?」
心配だけど、今の僕に出来ることはなさそう。部屋から出てくるのを大人しく待つだけ。
「もしかして、あの人が来てた?」
「春お姉ちゃん。あの人って、元父親の?」
「うん、アイツ」
「それなら、さっき来てた」
「そうか」
リビングに春お姉ちゃんが来て、心配そうな顔で質問してきた。答えると、今度は深刻そうな表情に変わる。
春お姉ちゃんの反応を見ると、やはり印象は良くないようだ。姉さんたちや妹と、あの男が遭遇しなくてよかったな。もし会っていたら、面倒なことになっていたかもしれない。
香織さんが部屋に閉じ籠もっていることも伝えると、春お姉ちゃんは眉間にシワを寄せながら小さく息を吐いた。
「母さんは、とりあえず落ち着くまでそっとしておいてあげよう。それよりも、優もちゃんと休みなさい。朝から大変だったんでしょう?」
「あ、うん。わかった」
春お姉ちゃんに言われて、今日は休むことにした。明日になれば、香織さんも元気になってるはず。そう信じて。
「おはよう、優くん」
「あ。おはよう、香織さん」
翌朝。香織さんは、笑顔で挨拶してくれた。昨日のことを気にしている様子もないみたいで、安心した。吹っ切れたのかな。そう思っていると、香織さんが言った。
「今日、これから私と一緒に行ってほしいところがあるの。学園には後で連絡するから、お願いしてもいい?」
「わかった。いいよ」
一緒に行ってほしいと言われて、断る理由はない。もちろん、僕は即答した。平日だけど、学園にも連絡してくれるらしいので問題ないと思う。
皆の朝食を用意してから、支度をして、香織さんと一緒に家を出る。車に乗って、着いた先は街中にある駐車場。
ここに、何の用事があるんだろうか?
疑問に思いながら、車を降りて駐車場から少し歩いた。そして、ビルの中に入る。僕は香織さんの後ろを歩いて、ビルのエレベーターに乗り込んで5階へ。
「ここよ」
「小池法律事務所?」
「そう。ここに私の知り合いが居るの」
「へぇ、そうなんだ」
僕が連れてこられたのは、法律事務所だった。つまり、昨日の件について相談するつもりなのだろう。それは、とても良い方法だと思った。専門家に相談するのが一番だと思う。
事務所に入り、香織さんが手続きを済ませる。すると、すぐに一人の女性がやって来た。黒のスーツを着た、銀縁メガネの知的そうな見た目の人。
「カオリ、待たせた」
「急にごめんなさい、アイ。ちょっと大変なことになって、助けてほしいの」
「君の頼みなら、私は何でも聞くぞ。それで、どうしたんだ?」
女性はハキハキとした口調で、香織さんと会話をする。そんな2人は挨拶すると、握手を交わして笑顔になった。
とても仲良さそうな感じで、信頼関係があるように見える。彼女なら、とても頼もしい味方になってくれそうだ。
「その前に、この子も連れてきたの」
「初めまして、佐藤優です。よろしくお願いします」
香織さんが僕のことを紹介すると言ってくれたので、一歩前に出て自己紹介した。名前を言って、頭を下げる。
顔をあげると、香織さんの友人の女性は微笑んでいた。
「こちらこそ初めまして。私は弁護士をしている、小池《こいけ》亜衣子《あいこ》と言う者だ。よろしく頼む」
そう言うと、彼女は右手を差し出してきた。僕は、その手を握る。力強く握り返されて、とてもパワフルな人なんだと感じた。
「ユウくん。実は、アイとは小さい時に何度か会ったことがあるのよ」
「え、そうだったんですか? 覚えてなくて、申し訳ありません」
「いやいや、気にする必要はないよ。君の事情について、色々と聞いているからね。かなり大変だったと」
実は何度か会ったことがあると、香織さんに教えてもらったけれど覚えていない。申し訳ないと思っていると、小池さんは気にしないで大丈夫と優しく言ってくれた。事情も知ってくれているらしい。
「しかし、あの男の子が大きくなったな。それに、とっても美人になった」
「あの、ありがとうございます」
小池さんに褒められて、お礼を言う。美人になったという評価は照れくさいけど、悪い気はしない。
「それじゃあ早速、君たちの話を聞かせてもらおうか」
小池さんに案内されて、事務所の中にある部屋へ移動する。そこにあるソファーに座って、話すことになった。香織さんと僕が並んで、向かい側に小池さんが座った。昨日の件について、香織さんが弁護士の小池さんに説明し始める。
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