女男の世界

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
29 / 50
第2章 学園編

閑話09 懐かしのゲームをプレイ(佐藤優視点)

しおりを挟む
「うわっ、懐かしい!」

 とある日。買い物に向かっている途中で、ゲームセンターの前を通りかかった時に発見した懐かしのゲーム。それを見て、僕は声を上げた。そのゲームは格闘ゲームで昔ブームになったこともあり、僕も何度かゲームセンターで友達とプレイしたことがあるものだった。

「っと、違う違う」

 意識的には、過去のゲーム。だけど、良く考えると、今はまだ1996年だった。筐体の状態などを見ても、最新のゲームだとわかる。

 懐かしいけれど新しい。とても不思議な感覚だった。

 ワンコインだけプレイしていこうかな。腕時計を確認すると、少し時間があった。1プレイなら、急いでいけばタイムサービスに間に合うぐらいの時間だと、頭の中で計算した。

 よし、やろう。

 ちょうど空いていた席に座る。並んでいる人もいなかったので、イスに体をすべり込ませて、ボタンに手を乗せた。

 聞き覚えのある懐かしい音楽、選択画面で一番得意にしていたキャラにカーソルを合わせる。操作の感じを思い出すようにして確かめる。意外と覚えているものだなと感じていた。

 僕の記憶だと数年前のモノだけれど、コマンドを入力することが出来た。COMが操作するキャラクターに、面白いようにコンボ技が決まっていく。

 勝ち上がって次第に強くなっていくCOMのキャラクターを、次々と倒していく。 やがて、EDが流れ始めるた。

「おぉ!」
「すごい」
「クリアした!?」
「……ッ!?」

 いつの間にか後ろに、たくさんの人が居た。ゲームに熱中している間に、集まっていたようだ。

「スゴイね、君」
「えっ?」

 群衆達の中から一人が前に出てきて、話しかけられた。僕に声を掛けてきたのは、小柄な女の子だった。

 つばが逆になるように帽子をかぶって、腰まで届くロングの髪の毛。愛嬌たっぷりの大きな目と口をした、可愛らしい女の子。身長は僕と同じか、僕より少しだけ低いかもしれない小さな子。

 僕が座って彼女を振り返り見上げると、彼女はにっこりと笑ってつづける。

「このゲーム出たばっかりなのに、もう攻略できてる」

 人差し指をゲーム画面に向けながら言う。

「ゲーム、好きなの?」
「あっと、えっと……そうです」

 グイと迫るように話しかけられたので、僕は戸惑いながら聞かれたことを答える。もしかして、知り合いなのかな。でも、知らない相手だ。

「あっ、ゴメン。ナンパとかじゃないよ。ただ君のプレイが気になっただけだから。そんなに緊張しなくても、いいよ」
「えっと、そうなんですか」

 彼女は慌てながら、早口で言うと両腕を目の前で振ってナンパを否定する。見た目よりも、年上の女性なのかもしれない。

「それよりも、私もそのゲームやってもいいかな?」
「あっ、はい。どうぞ、僕は終わったところなんで」

 そう言って、席を空ける。

 ゲーム画面は、ちょうどEDが流れ終わったところだった。なのでちょうど良い。彼女は椅子に座って、慣れた手付きでコインを素早く投入口から入れる。それから、キャラクター画面でしばらく悩んでから、聞いてくる。まだ僕が彼女を見ていたから話しかけられたようだ。

「どれか、オススメのキャラクターとかいる?」
「えっと、そーですね」

 なんとなく、彼女ともう少し話そうかという気になった。僕は古い記憶を探って、キャラクターを指さしで解説していく。

「このキャラクターはオールラウンドで初心者向けですね。こっちのキャラクターは素早く動いて攻撃を繰り出すので、爽快感抜群です。このキャラクターは火力が高く一気に勝負を決めるのに向いています」
「君、凄いね! このゲームをそんなに研究しているなんて!?」

 僕は、ちょっとズルをしているから。だけど、彼女に説明するわけにもいかない。

「いえ、そんな……っと、もう時間が無いですね」
「おっと」

 キャラクター選択画面には時間が表示されていて、見たところ残り10秒になって選択しなければ、強制でキャラクターを決められて先に進んでしまう。

「じゃあ、このキャラクターでやらせてもらおうかな!」

 彼女は、オールラウンドと説明したキャラクターを選択した。ゲームを開始する。初めは戸惑いながらボタンを押して、色々と試しながらコマンドを発見して技を出していく。

「あぁ、なるほど。技は、あのゲームと大体いっしょだね」

 どうやら、彼女はゲーマーのようだ。他のゲームの知識を活用しながら、キャラを操作していく。そして敵を倒して、勝ち進めていく。

「あっ! 駄目か……」

 だが、ボス一歩手前の所で負けてしまった。コンテニュー画面が表示されて残りの数字が減っていく。その画面を眺めながら、彼女はがっくしと肩を落としていた。

 やがて、彼女は顔を上げて僕の方に向いて言った。

「ありがとう。解説してくれたおかげで、いいところまで行けたよ」
「いえ、どういたしまして」
「よかったら、この後……」
「あっ!」

 彼女が何か言いかけたが、急に時間が気になって僕は時計を見た。そして、焦る。既にタイムサービスが始まる時間だったから。今からスーパーまで走って行かないと間に合わない時間だった。

「ごめん。用事があるから、もう行くね!」

 そして僕は彼女の返事も待たずに走り出した。早くスーパーに行かないと、商品が売り切れてしまうから。急がないと!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます

neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。 松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。 ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。 PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

処理中です...