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第4話 酒場に広まるリバーシブーム
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私は、前世で遊んだことのあるリバーシのルールを説明した。ウィルフレッドは、私の説明に真剣な眼差しで耳を傾けている。時折うなずきながら、大事なポイントはメモも取っていた。
「なるほど。これは、とてもユニークで面白そうですね。シンプルなルールながら、奥深い駆け引きが楽しめそうです。これなら、道具を作るのも難しくないでしょう」
彼は即座に理解し、前向きな返事をくれた。私は内心で喜びを感じた。私の考えを理解し、協力してくれる人と出会えたのかもしれない。
「本当に作っていただけるの?」
「もちろんです。エリザベートお嬢様のアイデア、とても素晴らしいと思いますよ。ぜひ、ウチで実現させてください!」
ウィルフレッドの言葉に、私は思わず笑顔になった。彼の目はキラキラと輝いていて、私のアイデアに心から賛同してくれているのが伝わってくる。
しばらく経って、完成品が届いた。
「おー! 凄い。イメージ通り」
「お気に召しましたか?」
「うん! ありがとう、ウィルフレッド」
区切りの入った緑の盤面に、白と黒の艶やかな駒が目の前に広がっている。サイズも手に馴染む良い感じだ。駒を握って、盤面の上に置く。パチンと心地よい音が鳴った。
「ちょっと、対戦してみましょう! 相手をしてくれる?」
「もちろん、いいですよ」
しばらく、ウィルフレッドと白熱した対戦を繰り広げた。互いに一手一手慎重に考えながら、時に大胆な手を打つ。勝ったり負けたりしながら、あっという間に時間が過ぎていく。
多分、彼は手加減をしてくれているのを感じる。きっと彼なら、もっとうまい手を思いついていそうな気がしたから。リバーシでも、定石ってあるのかしらね。そんなことを考えながら、楽しくゲームに興じた。
その後、これをウィルフレッドのいるルーセント商会で売って欲しいとお願いしてみる。
「ルーセント商会で扱っても、よろしいのですか?」
「もちろん! ウィルフレッドに任せたいの」
「わかりました。エリザベートお嬢様の期待に応えられるよう、全力を尽くします」
意気込むウィルフレッドに任せていたら、きっと大丈夫だと思っていた。彼なら、上手く売ってくれるはずだと。
そしてまた、しばらくの時が経った。リバーシは売れて人気になるだろうと思っていたけど、あまり広まっていないみたい。
「売れ行きはどうなの?」
ウィルフレッドが屋敷に訪れたので、聞いてみた。
「順調ですよ」
「本当に?」
ニコニコと笑う彼。だが、なんとなく違う気がした。ここは本音を言って欲しい。そう思って、ウィルフレッドを真っ直ぐ見つめる。
すると、彼が口を開いた。
「……正直に言うと、まだ初期投資分を半分ほどしか回収できていませんね」
「そうなの」
やっぱり、あまり売れていないみたい。そっか。ガッカリした気持ちを隠せない。
「買っていただいた方には好評で、追加でいくつか購入して頂いたのですが、それは一部のお客様です。ほとんどの人は、リバーシという遊戯の存在自体を知らないので、買うという発想に至らないようですね」
知名度が低いという問題なのね。テレビでコマーシャルを流して、広告活動をするのは無理だし。どうにかして、まずリバーシの面白さを知ってもらわないとダメなのね。
もしかして、この世界の人はリバーシにハマらないのかも。他に面白いものがあるのかもしれない。あまりにも前世の感覚で、これを売ってお金を稼ごうなんて異世界の定番だと考えたのは、少し浅はかだったかしら。
そんなことを考えていると、ウィルフレッドが口を開いた。
「実は、ちょっと考えていることがあるんですが、聞いてもらっていいですか?」
「なに? リバーシをどうにかする、アイデアがあるの?」
「はい。まず――」
それから私は、ウィルフレッドのリバーシを売るためのアイデアについて聞かせてもらった。
それは、リバーシの道具を酒場などに置くということ。そして、人を雇いルールを熟知したスタッフを雇い、いつでも対戦できるようにする。
このスタッフに勝てたら、賞金を用意する。スタッフに挑戦するためプレイ料金を設定する。ということ。
「市民が利用する酒場で気軽にリバーシをプレイできるようにして、まずはルールを覚えてもらう。対戦する楽しさを知ってもらう。そんな考えです」
「うん、とても良さそう! それなら、リバーシの魅力を伝えられそう」
「それでは早速、ルーセント商会が経営している酒場にリバーシを置かせてもらってもいいですか?」
「ぜひ、やってみましょう!」
ということで、リバーシを酒場でプレイできるように用意してもらった。スタッフの教育なども、ウィルフレッドに一任する。
それから数週間後。
「エリザベートお嬢様、良いニュースです!」
ウィルフレッドが、屋敷を訪れた時に嬉しそうに告げる。
「なに? なにかあったの?」
私は、彼の表情を見て期待を込めて尋ねた。
「はい。リバーシを酒場に置いてみたのですが、これが大変好評でして」
「そうなの! 良かった」
嬉しくて思わず、大きな声を出してしまった。
「リバーシを酒場に置いてもらってすぐ、お客さんの間で人気になったようですよ。賞金を目指して挑戦する人が続出しています。そこから、純粋に対戦する楽しさのために遊ぶ人も増えてきました」
ウィルフレッドの言葉に、人気が出ているのが手に取るように分かる。
「中には、とんでもない腕前のお客様も現れているんですよ。その方を、スタッフとして専属で雇おうかと考えているんです」
「へぇ、凄い!」
「リバーシの道具も、品薄状態が続いています。初期投資の費用はとっくに回収できましたし、これからどんどん売上が増えていきそうですよ」
ニコニコしながら話すウィルフレッド。彼の目は、達成感と喜びに満ちあふれている。おそらく私も、同じような笑顔になっていると思う。
こうして、私が目標にしていたお金の力が思ったより早く手に入りそうだった。これもすべて、ウィルフレッドの協力あってこそ。彼に出会えて本当に良かった。
「なるほど。これは、とてもユニークで面白そうですね。シンプルなルールながら、奥深い駆け引きが楽しめそうです。これなら、道具を作るのも難しくないでしょう」
彼は即座に理解し、前向きな返事をくれた。私は内心で喜びを感じた。私の考えを理解し、協力してくれる人と出会えたのかもしれない。
「本当に作っていただけるの?」
「もちろんです。エリザベートお嬢様のアイデア、とても素晴らしいと思いますよ。ぜひ、ウチで実現させてください!」
ウィルフレッドの言葉に、私は思わず笑顔になった。彼の目はキラキラと輝いていて、私のアイデアに心から賛同してくれているのが伝わってくる。
しばらく経って、完成品が届いた。
「おー! 凄い。イメージ通り」
「お気に召しましたか?」
「うん! ありがとう、ウィルフレッド」
区切りの入った緑の盤面に、白と黒の艶やかな駒が目の前に広がっている。サイズも手に馴染む良い感じだ。駒を握って、盤面の上に置く。パチンと心地よい音が鳴った。
「ちょっと、対戦してみましょう! 相手をしてくれる?」
「もちろん、いいですよ」
しばらく、ウィルフレッドと白熱した対戦を繰り広げた。互いに一手一手慎重に考えながら、時に大胆な手を打つ。勝ったり負けたりしながら、あっという間に時間が過ぎていく。
多分、彼は手加減をしてくれているのを感じる。きっと彼なら、もっとうまい手を思いついていそうな気がしたから。リバーシでも、定石ってあるのかしらね。そんなことを考えながら、楽しくゲームに興じた。
その後、これをウィルフレッドのいるルーセント商会で売って欲しいとお願いしてみる。
「ルーセント商会で扱っても、よろしいのですか?」
「もちろん! ウィルフレッドに任せたいの」
「わかりました。エリザベートお嬢様の期待に応えられるよう、全力を尽くします」
意気込むウィルフレッドに任せていたら、きっと大丈夫だと思っていた。彼なら、上手く売ってくれるはずだと。
そしてまた、しばらくの時が経った。リバーシは売れて人気になるだろうと思っていたけど、あまり広まっていないみたい。
「売れ行きはどうなの?」
ウィルフレッドが屋敷に訪れたので、聞いてみた。
「順調ですよ」
「本当に?」
ニコニコと笑う彼。だが、なんとなく違う気がした。ここは本音を言って欲しい。そう思って、ウィルフレッドを真っ直ぐ見つめる。
すると、彼が口を開いた。
「……正直に言うと、まだ初期投資分を半分ほどしか回収できていませんね」
「そうなの」
やっぱり、あまり売れていないみたい。そっか。ガッカリした気持ちを隠せない。
「買っていただいた方には好評で、追加でいくつか購入して頂いたのですが、それは一部のお客様です。ほとんどの人は、リバーシという遊戯の存在自体を知らないので、買うという発想に至らないようですね」
知名度が低いという問題なのね。テレビでコマーシャルを流して、広告活動をするのは無理だし。どうにかして、まずリバーシの面白さを知ってもらわないとダメなのね。
もしかして、この世界の人はリバーシにハマらないのかも。他に面白いものがあるのかもしれない。あまりにも前世の感覚で、これを売ってお金を稼ごうなんて異世界の定番だと考えたのは、少し浅はかだったかしら。
そんなことを考えていると、ウィルフレッドが口を開いた。
「実は、ちょっと考えていることがあるんですが、聞いてもらっていいですか?」
「なに? リバーシをどうにかする、アイデアがあるの?」
「はい。まず――」
それから私は、ウィルフレッドのリバーシを売るためのアイデアについて聞かせてもらった。
それは、リバーシの道具を酒場などに置くということ。そして、人を雇いルールを熟知したスタッフを雇い、いつでも対戦できるようにする。
このスタッフに勝てたら、賞金を用意する。スタッフに挑戦するためプレイ料金を設定する。ということ。
「市民が利用する酒場で気軽にリバーシをプレイできるようにして、まずはルールを覚えてもらう。対戦する楽しさを知ってもらう。そんな考えです」
「うん、とても良さそう! それなら、リバーシの魅力を伝えられそう」
「それでは早速、ルーセント商会が経営している酒場にリバーシを置かせてもらってもいいですか?」
「ぜひ、やってみましょう!」
ということで、リバーシを酒場でプレイできるように用意してもらった。スタッフの教育なども、ウィルフレッドに一任する。
それから数週間後。
「エリザベートお嬢様、良いニュースです!」
ウィルフレッドが、屋敷を訪れた時に嬉しそうに告げる。
「なに? なにかあったの?」
私は、彼の表情を見て期待を込めて尋ねた。
「はい。リバーシを酒場に置いてみたのですが、これが大変好評でして」
「そうなの! 良かった」
嬉しくて思わず、大きな声を出してしまった。
「リバーシを酒場に置いてもらってすぐ、お客さんの間で人気になったようですよ。賞金を目指して挑戦する人が続出しています。そこから、純粋に対戦する楽しさのために遊ぶ人も増えてきました」
ウィルフレッドの言葉に、人気が出ているのが手に取るように分かる。
「中には、とんでもない腕前のお客様も現れているんですよ。その方を、スタッフとして専属で雇おうかと考えているんです」
「へぇ、凄い!」
「リバーシの道具も、品薄状態が続いています。初期投資の費用はとっくに回収できましたし、これからどんどん売上が増えていきそうですよ」
ニコニコしながら話すウィルフレッド。彼の目は、達成感と喜びに満ちあふれている。おそらく私も、同じような笑顔になっていると思う。
こうして、私が目標にしていたお金の力が思ったより早く手に入りそうだった。これもすべて、ウィルフレッドの協力あってこそ。彼に出会えて本当に良かった。
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