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第2話 別れと新たな始まり
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話し合いが終わって、私は侍女たちと一緒に馬車に乗り込んだ。婚約を破棄されたことについて考える。
アレクサンダーとは愛し合う人というよりも、同じ転生者として前世の記憶を持つ仲間のようなものだった。だから、別れは寂しいけれどショックではない。協力する気にはなれないので、この別れは仕方のないことだった。
自宅の屋敷に向かって砂利道を進む中、私は新しい婚約相手について考える。親が新しい相手を探してくれると思う。でも、平穏な暮らしを脅かすような相手は嫌ね。私の望みを理解してくれるような、そんな相手に巡り会えるかしら。不安になった。
やはり、ウィルフレッドを頼るべきかしら。彼は、世界的に有名なルーセント商会を率いている人物。そんな彼なら、相談したらどうにかしてくれるかも。
実は、私が今乗っているこの馬車もルーセント商会から仕入れたもの。乗り心地や車内の設備の充実ぶりが最高で、王国一の馬車だと言われている。他国からも注文が殺到しているらしい。
そんな売れ筋の馬車は、私とウィルフレッドの何気ない会話がヒントになって作り出されたものだった。私はそのことに気付いていなかったけれど、ウィルフレッドは私の一言一言に重要なヒントを感じ取っていたようだ。
ある日、私たちは馬車での移動について話していた。私は「長距離の移動は疲れるわね。座席がもっと快適だったらいいのに」と漏らした。
「どういうことだい?」
「例えば、そうね――」
話していると、前世の記憶にあった新幹線に乗った時のことを思い出した。座席が大きくて快適だった。リクライニングもでき、ゆったりと寛げる。広々とした座席に身を沈めると、まるでベッドに横たわっているかのようだった。
「それは、例の夢の話かな?」
「うん、そう」
私はウィルフレッドに、夢に出てきた不思議な乗り物の座席という感じで話した。これまでも私の前世の記憶について、夢の話という形で彼に色々と話していた。その内容からウィルフレッドは、新たな商品開発のヒントを得ているということだ。
「その乗り物の座席は、背もたれが高くて、クッションがふかふかしていて、座面が広いの。まるでベッドみたいに寛げるのよ」
他にも「窓が大きくて景色が楽しめる」とか「荷物を置けるスペースがある」など、新幹線の良さを夢の内容として語った。
ウィルフレッドは興味深そうに私の話に耳を傾けていた。「そんな夢を見たのか。面白いね。確かにそんな座席なら、長旅も苦にならないだろう」と共感してくれた。
それから数ヶ月後、ウィルフレッドから知らせが届いた。
「君の夢の内容を参考に、新しい馬車を作ってみた。ぜひ試してみてほしい」
そう言われて、完成した馬車をプレゼントしてもらった。早速、その馬車に乗ってみると、本当に快適だった。
座席は背もたれが高く、クッションが柔らかい。座面も広くてゆったりとくつろげる。窓は大きくて外の景色が存分に楽しめた。荷物を置ける場所も用意されていた。
以前まで感じていた馬車の不便さは解消されていた。これなら、長距離移動も大変じゃないかも。
私は、前世の記憶を言葉に出して伝えただけ。具体的な技術の知識や設計図などを知っているわけじゃない。それなのに、話を聞いただけで実際に形にして、仕上げたウィルフレッドが凄い。
「到着は、まだ?」
「もうしばらく、かかります」
御者に確認すると、そんな答えが返ってきた。
「そう。急がないで、安全運転で頼むわね」
「かしこまりました、お嬢様」
屋敷に到着するまで、もう少しかかるみたいね。なので私は、ウィルフレッドとの最初の出会いについて思い出していた。
アレクサンダーとは愛し合う人というよりも、同じ転生者として前世の記憶を持つ仲間のようなものだった。だから、別れは寂しいけれどショックではない。協力する気にはなれないので、この別れは仕方のないことだった。
自宅の屋敷に向かって砂利道を進む中、私は新しい婚約相手について考える。親が新しい相手を探してくれると思う。でも、平穏な暮らしを脅かすような相手は嫌ね。私の望みを理解してくれるような、そんな相手に巡り会えるかしら。不安になった。
やはり、ウィルフレッドを頼るべきかしら。彼は、世界的に有名なルーセント商会を率いている人物。そんな彼なら、相談したらどうにかしてくれるかも。
実は、私が今乗っているこの馬車もルーセント商会から仕入れたもの。乗り心地や車内の設備の充実ぶりが最高で、王国一の馬車だと言われている。他国からも注文が殺到しているらしい。
そんな売れ筋の馬車は、私とウィルフレッドの何気ない会話がヒントになって作り出されたものだった。私はそのことに気付いていなかったけれど、ウィルフレッドは私の一言一言に重要なヒントを感じ取っていたようだ。
ある日、私たちは馬車での移動について話していた。私は「長距離の移動は疲れるわね。座席がもっと快適だったらいいのに」と漏らした。
「どういうことだい?」
「例えば、そうね――」
話していると、前世の記憶にあった新幹線に乗った時のことを思い出した。座席が大きくて快適だった。リクライニングもでき、ゆったりと寛げる。広々とした座席に身を沈めると、まるでベッドに横たわっているかのようだった。
「それは、例の夢の話かな?」
「うん、そう」
私はウィルフレッドに、夢に出てきた不思議な乗り物の座席という感じで話した。これまでも私の前世の記憶について、夢の話という形で彼に色々と話していた。その内容からウィルフレッドは、新たな商品開発のヒントを得ているということだ。
「その乗り物の座席は、背もたれが高くて、クッションがふかふかしていて、座面が広いの。まるでベッドみたいに寛げるのよ」
他にも「窓が大きくて景色が楽しめる」とか「荷物を置けるスペースがある」など、新幹線の良さを夢の内容として語った。
ウィルフレッドは興味深そうに私の話に耳を傾けていた。「そんな夢を見たのか。面白いね。確かにそんな座席なら、長旅も苦にならないだろう」と共感してくれた。
それから数ヶ月後、ウィルフレッドから知らせが届いた。
「君の夢の内容を参考に、新しい馬車を作ってみた。ぜひ試してみてほしい」
そう言われて、完成した馬車をプレゼントしてもらった。早速、その馬車に乗ってみると、本当に快適だった。
座席は背もたれが高く、クッションが柔らかい。座面も広くてゆったりとくつろげる。窓は大きくて外の景色が存分に楽しめた。荷物を置ける場所も用意されていた。
以前まで感じていた馬車の不便さは解消されていた。これなら、長距離移動も大変じゃないかも。
私は、前世の記憶を言葉に出して伝えただけ。具体的な技術の知識や設計図などを知っているわけじゃない。それなのに、話を聞いただけで実際に形にして、仕上げたウィルフレッドが凄い。
「到着は、まだ?」
「もうしばらく、かかります」
御者に確認すると、そんな答えが返ってきた。
「そう。急がないで、安全運転で頼むわね」
「かしこまりました、お嬢様」
屋敷に到着するまで、もう少しかかるみたいね。なので私は、ウィルフレッドとの最初の出会いについて思い出していた。
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