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第27話 とあるパーティーにて
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「カナリニッジ侯爵、ご懐妊とのことで誠におめでとうございます」
「ありがとうございます」
当主として私が挨拶回りする横で、彼も笑顔を浮かべて愛想良く振る舞っていた。その堂々とした姿を見ると頼もしいなと思いつつ、周囲の女性からの熱い視線を浴びていることに気付いた。
「シャロットは、本当に凄いな」
「何がでしょうか?」
「私は、こういった場に慣れていないからね。いつも以上に緊張しているよ」
「そんなことありませんよ。私から見て、ウェヌスレッド様の振る舞いは特に問題はありません。落ち着いていますし、とても素敵です」
「そうか。それなら良かった」
不安そうな彼に、私は大丈夫ですよと声をかける。すると、彼はホッとした表情を見せた。
ただ、熱い視線は相変わらず注がれていた。
「これだけ周りから見られている、ということも緊張する原因なのかもしれません」
「実は、これでもかなり減った方なんだよ。みんな、僕が結婚したことを知っているだろうし」
これで、減ったというのね。つまり全盛期は、今と比べて本当に大変だった。彼が外に出たくないという理由を、改めて痛感した。
そんな会話をしつつ、私たちは会場内を歩いた。挨拶をして回る。
ようやく挨拶も終わったので、今日はこれで帰りましょう。
その時、ライトナム侯爵家の三男デーヴィスと目が合った。彼もパーティーに参加していたらしい。
彼との婚約を破棄した後、私の屋敷に手紙が何十通も届いた。彼から送られてきた復縁を求める内容の手紙だ。面倒なので全部は読んでいないけれど、保管してある。ライトナム侯爵家との交渉時に、役立てようと思って。
その手紙は、ある日から急にぱたりと来なくなった。何かあったのかと思いつつ、気にする必要はないと判断した。
そんな彼が、無言で近寄ってくる。チラチラと、私の夫を気にしながら。少し嫌な予感がする。挨拶だけして、早く離れる。こんな人が多い場所で、暴挙に出ないとは思うけど。
だが、その考えは甘かった。
「そこは、俺の居場所だ!」
「ッ!」
ウェヌスレッド様を指さして、怒鳴り声を張り上げる。その声に驚いて、周囲がざわつき始めた。逃げないと。手を伸ばしてくるデーヴィス。
「「シャロット!」」
2人の男の声が重なる。襲い掛かってくるデーヴィスを接近させないように、ウェヌスレッド様が立ちふさがる。私を守ってくれている。でも、危ない!
さらに、別の男が現れた。デーヴィスの斜め後ろから手を振り上げる男。あれは、ライトナム侯爵家の当主。襲い掛かって来たデーヴィスの父親。
バチンと、ものすごい音が響いた。デーヴィスを父親がビンタした。私は唖然としながら、その様子を見ていた。
ビンタされたデーヴィスは、床に倒れると白目をむいて気絶した。突然の危機は、一瞬にして過ぎ去る。
「ありがとうございます」
当主として私が挨拶回りする横で、彼も笑顔を浮かべて愛想良く振る舞っていた。その堂々とした姿を見ると頼もしいなと思いつつ、周囲の女性からの熱い視線を浴びていることに気付いた。
「シャロットは、本当に凄いな」
「何がでしょうか?」
「私は、こういった場に慣れていないからね。いつも以上に緊張しているよ」
「そんなことありませんよ。私から見て、ウェヌスレッド様の振る舞いは特に問題はありません。落ち着いていますし、とても素敵です」
「そうか。それなら良かった」
不安そうな彼に、私は大丈夫ですよと声をかける。すると、彼はホッとした表情を見せた。
ただ、熱い視線は相変わらず注がれていた。
「これだけ周りから見られている、ということも緊張する原因なのかもしれません」
「実は、これでもかなり減った方なんだよ。みんな、僕が結婚したことを知っているだろうし」
これで、減ったというのね。つまり全盛期は、今と比べて本当に大変だった。彼が外に出たくないという理由を、改めて痛感した。
そんな会話をしつつ、私たちは会場内を歩いた。挨拶をして回る。
ようやく挨拶も終わったので、今日はこれで帰りましょう。
その時、ライトナム侯爵家の三男デーヴィスと目が合った。彼もパーティーに参加していたらしい。
彼との婚約を破棄した後、私の屋敷に手紙が何十通も届いた。彼から送られてきた復縁を求める内容の手紙だ。面倒なので全部は読んでいないけれど、保管してある。ライトナム侯爵家との交渉時に、役立てようと思って。
その手紙は、ある日から急にぱたりと来なくなった。何かあったのかと思いつつ、気にする必要はないと判断した。
そんな彼が、無言で近寄ってくる。チラチラと、私の夫を気にしながら。少し嫌な予感がする。挨拶だけして、早く離れる。こんな人が多い場所で、暴挙に出ないとは思うけど。
だが、その考えは甘かった。
「そこは、俺の居場所だ!」
「ッ!」
ウェヌスレッド様を指さして、怒鳴り声を張り上げる。その声に驚いて、周囲がざわつき始めた。逃げないと。手を伸ばしてくるデーヴィス。
「「シャロット!」」
2人の男の声が重なる。襲い掛かってくるデーヴィスを接近させないように、ウェヌスレッド様が立ちふさがる。私を守ってくれている。でも、危ない!
さらに、別の男が現れた。デーヴィスの斜め後ろから手を振り上げる男。あれは、ライトナム侯爵家の当主。襲い掛かって来たデーヴィスの父親。
バチンと、ものすごい音が響いた。デーヴィスを父親がビンタした。私は唖然としながら、その様子を見ていた。
ビンタされたデーヴィスは、床に倒れると白目をむいて気絶した。突然の危機は、一瞬にして過ぎ去る。
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