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第12話 平穏な日々
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屋敷が落ち着きを取り戻してから、しばらくの月日が経過していた。
私はカナリニッジ侯爵家の当主として、仕事に追われる日々を送っている。領内の食料供給を安定させ、治安を維持する。反乱が起きないように法を整備して、不安の芽を摘み取り、犯罪者には厳しい処罰を行う。
領地の経営は、かなり順調。領民の生活は安定して、税収も上がった。面倒な連中が屋敷から居なくなったのが大きいだろう。集中して、自分の仕事に取り組めた。
そんな忙しい日々を過ごしていると、あっという間に時間は過ぎていく。
ライトナム侯爵家から婚約破棄の件について謝罪があり、その謝罪を受け入れると返答。一旦の和解が成立した。だが、関係が改善されたわけではない。
表面上は友好的な関係を装っているものの、水面下では相手の出方を探り合っている状態だった。貴族社会とは、そんな世界。
ライトナム侯爵家の当主は、デーヴィスを使ってカナリニッジ侯爵家の乗っ取りを計画していた可能性が高い。なので、警戒を続けている。向こうは、なんとか婚約関係を元通りにしたいという思惑があるようだが、断固として拒否している。
私とデーヴィスの関係が元に戻る可能性は一切ない。
ただ問題なのは、新しい婚約相手の候補が見つからないことだ。条件に合うような男性がなかなか見つからなかった。早く決めないと、跡継ぎ問題で困ることになる。既に困っているけれど、もっと困ることになる。
そんな私の状況を把握しているのか、元婚約者となったデーヴィスが最近しつこく復縁を迫ってくる。馬鹿馬鹿しい手紙を、何度も繰り返し送りつけてくる。無視しても、全く諦める様子がない。もちろん、絶対に受け入れない。前の関係に戻ることは絶対にないだろう。
屋敷から居なくなった後も、面倒な男だと思った。こんな男が婚約相手だったなんて。そして、将来結婚する予定だったなんて……。改めて考えてみると、ゾッとする。もう過去の話だけれど、嫌悪感が込み上げてきた。
気分を変えるために、椅子から立ち上がって窓の外を眺める。いい天気ね。
「はぁ……」
ここ最近ずっと私の頭を悩ませている跡継ぎ問題については、しばらく解決するのが難しそう。候補の相手が見つからない。どうにかしないといけないと、常に考えていた。だが、そんな都合の良い相手が残っているはずもなく。やっぱりデーヴィスと復縁して、子供を作るまで我慢しないといけないのかしら。
じっくり考えてみるが絶対にダメ。それを受け入れてしまうと、カナリニッジ侯爵家の当主が軽く見られてしまう。威厳を保つために、それだけはできないわ。
でも他に方法がないのよね……。本当に困ったものだわ。
私本人の気持ちとしても、嫌だから。なんとしても、他の方法を考えないと。
「ん? あれは」
窓の外に視線を向けると、こちらに向かってくる馬車が視界に入った。
馬車についている紋章は、ノルイン公爵家のはず。つまり、あの馬車に乗っているのは公爵家の関係者? 何の用事かしら?
ノルイン公爵って、うちと何か関係があったかしら。記憶を遡っても、特に思い当たらない。心当たりがなかった。考えても分からないので、直接確認するしかないわね。とりあえず出迎えましょう。
私は疑問に思いながら、急に屋敷にやって来た客人の出迎えを準備するために動き出した。
私はカナリニッジ侯爵家の当主として、仕事に追われる日々を送っている。領内の食料供給を安定させ、治安を維持する。反乱が起きないように法を整備して、不安の芽を摘み取り、犯罪者には厳しい処罰を行う。
領地の経営は、かなり順調。領民の生活は安定して、税収も上がった。面倒な連中が屋敷から居なくなったのが大きいだろう。集中して、自分の仕事に取り組めた。
そんな忙しい日々を過ごしていると、あっという間に時間は過ぎていく。
ライトナム侯爵家から婚約破棄の件について謝罪があり、その謝罪を受け入れると返答。一旦の和解が成立した。だが、関係が改善されたわけではない。
表面上は友好的な関係を装っているものの、水面下では相手の出方を探り合っている状態だった。貴族社会とは、そんな世界。
ライトナム侯爵家の当主は、デーヴィスを使ってカナリニッジ侯爵家の乗っ取りを計画していた可能性が高い。なので、警戒を続けている。向こうは、なんとか婚約関係を元通りにしたいという思惑があるようだが、断固として拒否している。
私とデーヴィスの関係が元に戻る可能性は一切ない。
ただ問題なのは、新しい婚約相手の候補が見つからないことだ。条件に合うような男性がなかなか見つからなかった。早く決めないと、跡継ぎ問題で困ることになる。既に困っているけれど、もっと困ることになる。
そんな私の状況を把握しているのか、元婚約者となったデーヴィスが最近しつこく復縁を迫ってくる。馬鹿馬鹿しい手紙を、何度も繰り返し送りつけてくる。無視しても、全く諦める様子がない。もちろん、絶対に受け入れない。前の関係に戻ることは絶対にないだろう。
屋敷から居なくなった後も、面倒な男だと思った。こんな男が婚約相手だったなんて。そして、将来結婚する予定だったなんて……。改めて考えてみると、ゾッとする。もう過去の話だけれど、嫌悪感が込み上げてきた。
気分を変えるために、椅子から立ち上がって窓の外を眺める。いい天気ね。
「はぁ……」
ここ最近ずっと私の頭を悩ませている跡継ぎ問題については、しばらく解決するのが難しそう。候補の相手が見つからない。どうにかしないといけないと、常に考えていた。だが、そんな都合の良い相手が残っているはずもなく。やっぱりデーヴィスと復縁して、子供を作るまで我慢しないといけないのかしら。
じっくり考えてみるが絶対にダメ。それを受け入れてしまうと、カナリニッジ侯爵家の当主が軽く見られてしまう。威厳を保つために、それだけはできないわ。
でも他に方法がないのよね……。本当に困ったものだわ。
私本人の気持ちとしても、嫌だから。なんとしても、他の方法を考えないと。
「ん? あれは」
窓の外に視線を向けると、こちらに向かってくる馬車が視界に入った。
馬車についている紋章は、ノルイン公爵家のはず。つまり、あの馬車に乗っているのは公爵家の関係者? 何の用事かしら?
ノルイン公爵って、うちと何か関係があったかしら。記憶を遡っても、特に思い当たらない。心当たりがなかった。考えても分からないので、直接確認するしかないわね。とりあえず出迎えましょう。
私は疑問に思いながら、急に屋敷にやって来た客人の出迎えを準備するために動き出した。
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