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第3話 婚約相手の考え
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「シャロット、話したいことがあるそうだけど何かな」
そう言って、笑顔を浮かべて部屋に入ってきた私の婚約者であるデーヴィス。彼は部屋にいる私の顔を見て、次に幼馴染のローレインが居ることに気が付いた。そちらに視線を向ける。
「おや、ローレインも居たのか。2人して、どうしたのかな?」
私と彼女の顔を交互に見つつ不思議そうな表情で問いかけてくる彼に、私は真剣な表情を向けながら口を開く。婚約破棄の件について、事実を解き明かすために。
「実は、彼女が先ほど教えてくれたのですが――」
「私、デーヴィスの代わりに伝えてあげたのよ! この女との婚約を破棄したい、って言ってたでしょ? だから」
私の言葉を遮って、ローレインが説明する。まぁ、別にいいんですけれど。非常に失礼な態度だと思う。いちいち人の神経を逆撫でするような態度を取らないで欲しいものね。
彼女は本当に、私を苛立たせる才能があるようだ。他の貴族相手にやったら、処罰される可能性のある行為だった。わざわざ指摘するのも面倒だから、何も言わないけどね。彼女の場合は、本気で私に喧嘩を売っている可能性もあるようだけど……。
「え、ええっ!?」
ローレインの説明を聞いて本気で驚くデーヴィス。その反応は、やっぱり婚約破棄したいなんて彼女の嘘だったのかしら。そうなんだとしたら、かなりの問題行動よ。ローレインには、屋敷から出て行ってもらわないといけないかも。
本当に面倒ね。ここまで放置してしまったのは私の失敗。もっと早く対処しておくべきだった。
「デーヴィス。彼女はこう言っているけれど、本当なの?」
「あ、いや……、うーん」
問い詰めると、彼は言葉を濁した。あら、その反応は。つまりそういうこと。彼は婚約を破棄したいと思っていた様子。まさか、本気で言っていたなんて。それを、幼馴染の女性に打ち明けていた。
こうなってしまうと、もっと面倒なことになる前に彼との関係を終わらせる必要があるかも。他の婚約相手の候補を探すのも面倒だけど、カナリニッジ侯爵家の将来のためには仕方ない。とにかく、デーヴィスとの関係は諦めるしかないようね。
今の関係が、ある意味では面倒が少なくてよかったのに。残念だわ。時間も無駄にしてしまった。もう本当に。色々と諦めながら、私は言う。
「わかりました。それでは貴方の望む通り、婚約を破棄する手続きをしましょう」
「ちょ、ちょっと待ってくれシャロット。俺は、そんな、いきなり婚約を破棄するなんて……!」
「よかったわね、デーヴィス! あなたの望みが叶うわよ!」
戸惑うデーヴィスに喜ぶローレイン。彼が望んでいたことなのに、どうしてそんな反応をするの。理解できない態度を取る彼は、慌てながら口を開いた。
「違うんだよ、シャロット。お、俺はただ寂しかっただけなんだ。君は仕事で忙しいみたいだし、部屋に閉じこもってばかりだった。2人で会う時間だって、あまり取れなかったし。結婚した後にも、そんな時間が続くかもしれない。でも、パートナーがいるのに他の女性で発散するわけにもいかないだろう? だから彼女には、ちょっとした愚痴を聞いてもらっていたんだよ。ストレスも溜まっていたし、そこでポロッと漏らしただけの冗談じゃないか!」
ペラペラと喋り出した彼は、婚約破棄を冗談だということにしたかったようだ。だけどもう、遅い。私の中で、彼との婚約を破棄する件は確定事項になっていた。
デーヴィスが、私との婚約を破棄したいという気持ちがあったことは確か。なら。
「そうですか。ですが、もう婚約を破棄しましょう。冗談だと思って言ったことだとしても、そうしたいという気持ちが奥底に確かにあるようですから」
「そ、それは困るよッ!」
「困る? 何がですか?」
「じゃないと、俺たちは……」
「いいじゃない! こんな女との婚約なんてさっさと破棄して、屋敷から出て行ってもらえば」
「お、おい! ローレイン、何を言って」
「デーヴィス! 本当のことでしょう!」
望み通り婚約を破棄しようと告げたら、慌て続けるデーヴィス。その横で、意味のわからないことを言い出したローレイン。屋敷から出て行ってもらう、ってのは私に対して言っているのかしら。
そう言って、笑顔を浮かべて部屋に入ってきた私の婚約者であるデーヴィス。彼は部屋にいる私の顔を見て、次に幼馴染のローレインが居ることに気が付いた。そちらに視線を向ける。
「おや、ローレインも居たのか。2人して、どうしたのかな?」
私と彼女の顔を交互に見つつ不思議そうな表情で問いかけてくる彼に、私は真剣な表情を向けながら口を開く。婚約破棄の件について、事実を解き明かすために。
「実は、彼女が先ほど教えてくれたのですが――」
「私、デーヴィスの代わりに伝えてあげたのよ! この女との婚約を破棄したい、って言ってたでしょ? だから」
私の言葉を遮って、ローレインが説明する。まぁ、別にいいんですけれど。非常に失礼な態度だと思う。いちいち人の神経を逆撫でするような態度を取らないで欲しいものね。
彼女は本当に、私を苛立たせる才能があるようだ。他の貴族相手にやったら、処罰される可能性のある行為だった。わざわざ指摘するのも面倒だから、何も言わないけどね。彼女の場合は、本気で私に喧嘩を売っている可能性もあるようだけど……。
「え、ええっ!?」
ローレインの説明を聞いて本気で驚くデーヴィス。その反応は、やっぱり婚約破棄したいなんて彼女の嘘だったのかしら。そうなんだとしたら、かなりの問題行動よ。ローレインには、屋敷から出て行ってもらわないといけないかも。
本当に面倒ね。ここまで放置してしまったのは私の失敗。もっと早く対処しておくべきだった。
「デーヴィス。彼女はこう言っているけれど、本当なの?」
「あ、いや……、うーん」
問い詰めると、彼は言葉を濁した。あら、その反応は。つまりそういうこと。彼は婚約を破棄したいと思っていた様子。まさか、本気で言っていたなんて。それを、幼馴染の女性に打ち明けていた。
こうなってしまうと、もっと面倒なことになる前に彼との関係を終わらせる必要があるかも。他の婚約相手の候補を探すのも面倒だけど、カナリニッジ侯爵家の将来のためには仕方ない。とにかく、デーヴィスとの関係は諦めるしかないようね。
今の関係が、ある意味では面倒が少なくてよかったのに。残念だわ。時間も無駄にしてしまった。もう本当に。色々と諦めながら、私は言う。
「わかりました。それでは貴方の望む通り、婚約を破棄する手続きをしましょう」
「ちょ、ちょっと待ってくれシャロット。俺は、そんな、いきなり婚約を破棄するなんて……!」
「よかったわね、デーヴィス! あなたの望みが叶うわよ!」
戸惑うデーヴィスに喜ぶローレイン。彼が望んでいたことなのに、どうしてそんな反応をするの。理解できない態度を取る彼は、慌てながら口を開いた。
「違うんだよ、シャロット。お、俺はただ寂しかっただけなんだ。君は仕事で忙しいみたいだし、部屋に閉じこもってばかりだった。2人で会う時間だって、あまり取れなかったし。結婚した後にも、そんな時間が続くかもしれない。でも、パートナーがいるのに他の女性で発散するわけにもいかないだろう? だから彼女には、ちょっとした愚痴を聞いてもらっていたんだよ。ストレスも溜まっていたし、そこでポロッと漏らしただけの冗談じゃないか!」
ペラペラと喋り出した彼は、婚約破棄を冗談だということにしたかったようだ。だけどもう、遅い。私の中で、彼との婚約を破棄する件は確定事項になっていた。
デーヴィスが、私との婚約を破棄したいという気持ちがあったことは確か。なら。
「そうですか。ですが、もう婚約を破棄しましょう。冗談だと思って言ったことだとしても、そうしたいという気持ちが奥底に確かにあるようですから」
「そ、それは困るよッ!」
「困る? 何がですか?」
「じゃないと、俺たちは……」
「いいじゃない! こんな女との婚約なんてさっさと破棄して、屋敷から出て行ってもらえば」
「お、おい! ローレイン、何を言って」
「デーヴィス! 本当のことでしょう!」
望み通り婚約を破棄しようと告げたら、慌て続けるデーヴィス。その横で、意味のわからないことを言い出したローレイン。屋敷から出て行ってもらう、ってのは私に対して言っているのかしら。
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