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11.素顔

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 毎日ちゃんと食べることが出来て、空腹に苦しむこともなく、運動もして健康的な生活を送っている私。こんな日々が続くようにと願った。



 しかし、状況が少しだけ変化する。それは、ある日のこと。

 いつものように朝食を一緒にしようと待っていたが、時間になってもジョセフ様が食堂に現れなかった。

 どうやら今から外出するらしいと侍女から聞いて、私は玄関先まで走って向かう。突然、どうしたのだろう。彼は、ずっと屋敷で過ごしていた。私が屋敷に来てからは初めて、ジョセフ様が外に出る。

 怪我をしていたから屋敷で安静にしていたのに、出歩いても大丈夫なのかが心配。外出する目的は何だろうか。私も一緒に行ったら駄目か、聞いてみないと。

 玄関先に目的の人物は居た。侍女から聞いた通り通り、出かけようとしているようだが。

「ジョセフ、さま?」
「ディアヌか」

 そこには、いつもの白い包帯を巻いていないジョセフ様が立っていた。初めて見るジョセフ様の素顔に、私は驚く。

 とても整った顔立ちをしている。怪我をして包帯を巻いていた人物とは思えない。けれど金色の力強くて鋭い瞳を見れば、彼が間違いなくジョセフ様だと分かる。

「すまない。緊急で仕事が入ってな。今から出かけるので、今日の予定はキャンセルにしてくれ」
「は、はい。それは分かりましたが、お体は大丈夫なのですか?」

 いつも杖を使って歩いているのに、今日は何も使わずに立っている。足の怪我は、大丈夫なのか心配になった。

「あぁ。実は、……すまないが、詳しい話は後で」
「……はい。それも、了解しました」

 自分の足を見て、大丈夫だと示すように何度か地面を踏み鳴らす。あの様子だと、本当に大丈夫そうだ。無事に怪我が治ったのか。いや、でも怪我をしたと聞いてから治るほどの時間が経過しただろうか。

 もしかして、もともと怪我はしていなかったのかしら……。

 詳しい事情を聞きたかったけれど、ジョセフ様はとても急いでいる様子。よく見ると、鎧を装着して剣を腰から下げている。武装していた。初めて見る、ジョセフ様の騎士の姿。

 それを見て、彼の邪魔になってしまうと理解した。これ以上、引き止めたら迷惑になるだろう。

「後で必ず説明する、だから屋敷でおとなしく待っていてくれ」
「はい。いってらっしゃいませ」

 ジョセフ様は、普通に歩いて玄関から出ていく。どうやら、本当に怪我は問題ないらしい。なぜ、怪我したフリなんてしていたのか。なぜ、急に仕事が入ったのか。

 気になることが、色々とあった。

 おそらく、何か深い事情があるはず。気になるけれども、私は事情を聞かずに彼を見送った。言われた通り、おとなしく過ごしておこう。

 ジョセフ様が無事に帰ってくるのを祈りながら、屋敷で静かに待つ。それが、今の私に出来ること。
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