お菓子店の経営に夢中な私は、婚約破棄されても挫けない!

キョウキョウ

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第25話 菓子暴動 ※エヴラール王子視点

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「シャルロッテは、どうして戻ってこない? 王子である僕の命令を、ここまで無視するなんて許されることではないぞ!」
「えーっと……。実は彼女は、その……」

 歯切れの悪い部下の態度に、イライラする。まさか、何か僕に隠しているのかも。追求しなければ。

「早く言え! 一体何があったんだ!? 彼女が戻ってこない理由は?」
「実は、帝国に行ったシャルロッテ嬢は結婚するようです」
「は? 結婚?」

 突然の報告に、頭がついていかない。シャルロッテが結婚するだと? そんな話は聞いていない。いや、そもそも相手は誰なのか。帝国まで行って何をしているのかと思えば、結婚するためだったなんて。

 僕の命令を無視して戻ってこないことにも怒りが湧いたが、それよりも許せない。王国が大変な時に、勝手に結婚するなんて。



「とにかく、今すぐにシャルロッテを連れ戻せ! 結婚するなんて事情など、知ったことではない!」
「それが、無理なのです。結婚する相手の方というのが、ハルトヴィヒ様なので」
「誰だ、それは。名も知らないような帝国の貴族よりも、王子である僕の命令の方が優先されるべきだ! シャルロッテを連れ戻せッ!」
「だから、無理なのです。ハルトヴィヒ様は、帝国の皇子なんです」
「はぁ?」

 衝撃的な事実に言葉を失う。どうして、帝国の皇子がシャルロッテなんかと結婚をすることになったのか。訳が、わからなかった。

「リメルルカ帝国の皇帝も全面的に協力しているようで、結婚の邪魔をしないようにという通告がありました。なので、彼女を王国に連れ戻すことは不可能です」
「何で、そんな事に……っく!」

 悔しくて仕方がない。こんなに僕が困っているというのに、誰も助けてくれないなんて。元婚約者という関係も、所詮はその程度のものだったということか。彼女を頼ろうとした僕が馬鹿だった。

「た、大変ですッ!」
「今度は、何だ……!」

 シャルロッテに関する情報を聞いている最中に別の部下たちが数名、この執務室に駆け込んできた。彼らは血相を変えて、何かを報告しようとしている。

「どうした、何があったんだ?」
「民による暴動が、起きています!」
「なんだとッ!?」

 信じられない報告だった。今まで、王国の民には不満を持たせないように対処してきたはずなのに。

「暴動の原因は、何だ?」
「王国の菓子店に不満があるようで、彼らは今すぐ戻せと要求しているようです」
「くそ! また、菓子か……ッ!」

 この前、金を積んで問題を解決するように指示したはず。それが失敗してしまったようだ。暴動にまで発展するなんて。本当に、馬鹿馬鹿しい。

「すぐに兵士を派遣して、暴動を鎮圧しろ!」
「りょ、了解しました」

 僕は必死になって、混乱する頭を整理しようとした。とりあえず、指示を出した。民の暴動なんて、急いで止めないといけない。

「こんな状況になって、父は何をしてるんだ?」
「陛下は、諦めてしまったようです。こうなってしまったら、手の施しようがないと」
「はぁ? 何を言っているんだ。国を守るのが王の役目だろうが!」

 父の無責任な態度に腹が立って、机を思いっきり叩いた。やはり、自分でなんとかしないといけない。僕の周りには、愚か者しかいない。
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