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第24話 ウェディングケーキ

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 今回の結婚式では、特別な催し物を用意する。私達らしいと言える、素敵な企画。参加者の皆も気に入ってくれると思う。

 帝国の古くからある伝統を参考にした。今ではあまり見られなくなったらしいが、昔の結婚式でやっていたこと。繁栄を祈願して、特別なものを食べてお祝いをする。小麦と卵やバター、砂糖などをふんだんに使った焼き菓子のケーキを参加者に振る舞うのだ。

 菓子なら私達の得意分野。菓子店シェトレボーのスタッフたちも全力で、結婚式の準備に協力してくれた。

「シャルロッテ様とハルトヴィヒ様、2人の結婚式は盛大にやりましょう! 私達はいつでも協力しますよ!」
「遠慮なく、何でも言って下さい」
「ぜひ、成功させましょう」
「頑張りましょう。きっと、特別で素晴らしい結婚式になります」
「ありがとう。あなた達が居てくれて良かったわ」

 私は笑顔で、皆に礼を言う。本当に感謝しているのだ。彼らは、いつも私の味方でいてくれる。帝国まで一緒に来てくれて、菓子店シェトレボーも成功させてくれた。彼らが居るから、今回の結婚式でも催し物を用意することが出来る。

 感謝しても、しきれないほどだ。



 私達の結婚式の参加者は、とても多かった。ほとんど、ハルトヴィヒさんの関係者である。そして私の関係者は、ほぼ全てが代理人だ。帝国と王国では距離が遠くて、参加するのも大変だから仕方ない。代理人を立ててくれているだけでも、ありがたいと思うべきだろう。

 もちろん、ヴィラルドワン公爵家の当主である父も今回の式には参加せず、代理の者が出席していた。家族に無関心な父らしい、と思った。

「さぁ、シャルロッテ。用意したイベントを開始しようか。皆も期待して待っているようだから、早く始めないとね」
「はい! 喜んでくれると良いですね」

 私はハルトヴィヒさんと一緒に、会場に居る人たちに菓子を取り分けて、振る舞い始めた。焼きたての菓子の良い匂いが会場内に広がる。皆、嬉しそうな顔で受け取り食べてくれた。

「こちらを、どうぞ」
「ありがとう、頂くよ。結婚式で菓子を振る舞うなんて、懐かしい感じがするな」
「そうですね。昔を思い出しますわ」

 老夫婦の貴族に菓子を手渡すと、そんな会話をしていた。懐かしむような表情を浮かべる2人を見て、私も嬉しくなった。この催し物をやってよかったと、心の底から思う。

 結婚式も大成功で、多くの人たちが祝福してくれた。幸せになれる、という実感を得ることが出来た。

 参加してくれた人たちの記憶にも鮮明に残る、楽しい結婚式だったみたい。今回の式と同じように、結婚式の参加者に菓子を振る舞うという催し物が、帝国で流行するきっかけになったそうだ。昔の伝統で、今ではあまり見られなくなっていたけれど、また復活することになったらしい。

 後に、帝国の文化を復活させたという功績を認められて、皇帝陛下から勲章を賜ることになるのだが、それはまた別のお話。
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