22 / 27
第22話 プロポーズ
しおりを挟む
私なんかでいいのだろうか。
結婚してくれと言われた時、とても嬉しかった。でも、私の抱える問題を解決するために結婚するなんて、そんなの申し訳ない。
これまで、ハルトヴィヒさんには色々と助けられてきた。帝国でお店を始める時、店舗の用意や材料の仕入先の開拓、資金の調達までサポートしてもらった。
これ以上、彼に負担をかけてしまうのが心苦しいと思ってしまう。そんな私の考えを見抜いたのだろう。彼は言ってくれた。
「何も気にする必要はない。これでも俺は、帝国でかなりの権力を持っているんだ。王国の王子を相手にしても負けないぐらい」
ハルトヴィヒさんの正体について、詳しい話は聞いていない。しかし彼が、高貴な身分であるということは感じていた。普通の貴族じゃない、皇族に近しい上級貴族。もしかしたら、皇族かもしれないと疑っていた。
他国の王子を相手にしても負けない、ということは。つまり。
「実は、俺はリメルルカ帝国の皇子なんだ」
「そう、だったのですか」
「今まで黙っていて、すまない」
「い、いえッ、そんな! 私の方こそ、失礼な態度を」
「いや、それは構わないよ。今までと同じように接してくれると嬉しい」
「えっと、はい……。わかりました」
予想はしていた。だけど、実際に聞いたら驚いてしまう。今までの関係が変わってしまうような、大きな衝撃を受けた。
けれど、ハルトヴィヒさんは今までと同じように接してほしいと言ってくれた。私も、それを望んでいる。今までの関係が変わってしまうのは、とても悲しい。
そして、ハルトヴィヒさんは色々と教えてくれた。皇族だけど、帝位継承の権利を放棄していること。正確にはまだ権利は失っていない。帝位を継ぐ可能性もある存在であること。継承者については、もう既に他の人で確定している。なので、可能性はほぼゼロらしい。本人も、皇帝になりたいという気持ちは一切ないという。
皇帝になるようなお方ではないことが判明した。それでも、貴族の令嬢でしかない私よりも、遥かに高い地位にいる人だというのは間違いなかった。
「どうして、そこまでしてくださるのですか? 私は、何一つ返せていないのに」
「そんな事はないよ。俺は、君から沢山のものを貰っている。君と出会えて、本当に良かったと思っている。これから先も、ずっと一緒にいたいと思うほどにね」
「……っ!」
情熱的な言葉に、顔が熱くなってしまう。胸の鼓動が激しくなるのを感じていた。こんなにも想われていることが、とても嬉しくて。
ずっと一緒にいたい。彼も、私と同じように思っていることが分かって、本当に幸せだと思った。
「君を、失いたくないんだ」
「ッッッ!?」
真っ直ぐな目で、私を見つめながら言う彼。彼の言葉が胸に染み渡る。愛されている事が伝わってきて、どうしようもなく嬉しかった。
「シャルロッテ」
ハルトヴィヒさんの指先が頬に触れる。優しく撫でられて、ドキッとした。そしてそのまま、ゆっくりと顔を近づけてくる。今まで一番、彼との近い距離。
あぁ、キスされるんだ。
目を閉じて受け入れた。唇同士が触れ合う。最初は、優しく触れるだけ。それから段々と深くなっていく。やがて口づけが終わると、離れていく彼の唇。
名残惜しく感じる。離れたくない。もっと近くで、ずっと一緒に。
「結婚しよう、シャルロッテ」
「はい、ハルトヴィヒ様! これから末永く、よろしくお願いします」
断ることなんて考えられない。こうして私は、彼と結婚することになった。
結婚してくれと言われた時、とても嬉しかった。でも、私の抱える問題を解決するために結婚するなんて、そんなの申し訳ない。
これまで、ハルトヴィヒさんには色々と助けられてきた。帝国でお店を始める時、店舗の用意や材料の仕入先の開拓、資金の調達までサポートしてもらった。
これ以上、彼に負担をかけてしまうのが心苦しいと思ってしまう。そんな私の考えを見抜いたのだろう。彼は言ってくれた。
「何も気にする必要はない。これでも俺は、帝国でかなりの権力を持っているんだ。王国の王子を相手にしても負けないぐらい」
ハルトヴィヒさんの正体について、詳しい話は聞いていない。しかし彼が、高貴な身分であるということは感じていた。普通の貴族じゃない、皇族に近しい上級貴族。もしかしたら、皇族かもしれないと疑っていた。
他国の王子を相手にしても負けない、ということは。つまり。
「実は、俺はリメルルカ帝国の皇子なんだ」
「そう、だったのですか」
「今まで黙っていて、すまない」
「い、いえッ、そんな! 私の方こそ、失礼な態度を」
「いや、それは構わないよ。今までと同じように接してくれると嬉しい」
「えっと、はい……。わかりました」
予想はしていた。だけど、実際に聞いたら驚いてしまう。今までの関係が変わってしまうような、大きな衝撃を受けた。
けれど、ハルトヴィヒさんは今までと同じように接してほしいと言ってくれた。私も、それを望んでいる。今までの関係が変わってしまうのは、とても悲しい。
そして、ハルトヴィヒさんは色々と教えてくれた。皇族だけど、帝位継承の権利を放棄していること。正確にはまだ権利は失っていない。帝位を継ぐ可能性もある存在であること。継承者については、もう既に他の人で確定している。なので、可能性はほぼゼロらしい。本人も、皇帝になりたいという気持ちは一切ないという。
皇帝になるようなお方ではないことが判明した。それでも、貴族の令嬢でしかない私よりも、遥かに高い地位にいる人だというのは間違いなかった。
「どうして、そこまでしてくださるのですか? 私は、何一つ返せていないのに」
「そんな事はないよ。俺は、君から沢山のものを貰っている。君と出会えて、本当に良かったと思っている。これから先も、ずっと一緒にいたいと思うほどにね」
「……っ!」
情熱的な言葉に、顔が熱くなってしまう。胸の鼓動が激しくなるのを感じていた。こんなにも想われていることが、とても嬉しくて。
ずっと一緒にいたい。彼も、私と同じように思っていることが分かって、本当に幸せだと思った。
「君を、失いたくないんだ」
「ッッッ!?」
真っ直ぐな目で、私を見つめながら言う彼。彼の言葉が胸に染み渡る。愛されている事が伝わってきて、どうしようもなく嬉しかった。
「シャルロッテ」
ハルトヴィヒさんの指先が頬に触れる。優しく撫でられて、ドキッとした。そしてそのまま、ゆっくりと顔を近づけてくる。今まで一番、彼との近い距離。
あぁ、キスされるんだ。
目を閉じて受け入れた。唇同士が触れ合う。最初は、優しく触れるだけ。それから段々と深くなっていく。やがて口づけが終わると、離れていく彼の唇。
名残惜しく感じる。離れたくない。もっと近くで、ずっと一緒に。
「結婚しよう、シャルロッテ」
「はい、ハルトヴィヒ様! これから末永く、よろしくお願いします」
断ることなんて考えられない。こうして私は、彼と結婚することになった。
112
お気に入りに追加
1,458
あなたにおすすめの小説
【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります
禅
恋愛
妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。
せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。
普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……
唯一の味方は学友のシーナのみ。
アリーシャは幸せをつかめるのか。
※小説家になろうにも投稿中
虐待され続けた公爵令嬢は身代わり花嫁にされました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
カチュアは返事しなかった。
いや、返事することができなかった。
下手に返事すれば、歯や鼻の骨が折れるほどなぐられるのだ。
その表現も正しくはない。
返事をしなくて殴られる。
何をどうしようと、何もしなくても、殴る蹴るの暴行を受けるのだ。
マクリンナット公爵家の長女カチュアは、両親から激しい虐待を受けて育った。
とは言っても、母親は血のつながった実の母親ではない。
今の母親は後妻で、公爵ルイスを誑かし、カチュアの実母ミレーナを毒殺して、公爵夫人の座を手に入れていた。
そんな極悪非道なネーラが後妻に入って、カチュアが殺されずにすんでいるのは、ネーラの加虐心を満たすためだけだった。
食事を与えずに餓えで苛み、使用人以下の乞食のような服しか与えずに使用人と共に嘲笑い、躾という言い訳の元に死ぬ直前まで暴行を繰り返していた。
王宮などに連れて行かなければいけない場合だけ、治癒魔法で体裁を整え、屋敷に戻ればまた死の直前まで暴行を加えていた。
無限地獄のような生活が、ネーラが後妻に入ってから続いていた。
何度か自殺を図ったが、死ぬことも許されなかった。
そんな虐待を、実の父親であるマクリンナット公爵ルイスは、酒を飲みながらニタニタと笑いながら見ていた。
だがそんあ生き地獄も終わるときがやってきた。
マクリンナット公爵家どころか、リングストン王国全体を圧迫する獣人の強国ウィントン大公国が、リングストン王国一の美女マクリンナット公爵令嬢アメリアを嫁によこせと言ってきたのだ。
だが極悪非道なネーラが、そのような条件を受け入れるはずがなかった。
カチュアとは真逆に、舐めるように可愛がり、好き勝手我儘放題に育てた、ネーラそっくりの極悪非道に育った実の娘、アメリアを手放すはずがなかったのだ。
ネーラはカチュアを身代わりに送り込むことにした。
絶対にカチュアであることを明かせないように、いや、何のしゃべれないように、舌を切り取ってしまったのだ。
「これは私ですが、そちらは私ではありません」
イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。
その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。
「婚約破棄だ!」
と。
その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。
マリアの返事は…。
前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。
婚約破棄により婚約者の薬のルートは途絶えました
マルローネ
恋愛
子爵令嬢であり、薬士でもあったエリアスは有名な侯爵家の当主と婚約することになった。
しかし、当主からの身勝手な浮気により婚約破棄を言われてしまう。
エリアスは突然のことに悲しんだが王家の親戚であるブラック公爵家により助けられた。
また、彼女の薬士としての腕前は想像を絶するものであり……
婚約破棄をした侯爵家当主はもろにその影響を被るのだった。
亡国の大聖女 追い出されたので辺境伯領で農業を始めます
夜桜
恋愛
共和国の大聖女フィセルは、国を安定させる為に魔力を使い続け支えていた。だが、婚約を交わしていたウィリアム将軍が一方的に婚約破棄。しかも大聖女を『大魔女』認定し、両親を目の前で殺された。フィセルだけは国から追い出され、孤独の身となる。そんな絶望の雨天の中――ヒューズ辺境伯が現れ、フィセルを救う。
一週間後、大聖女を失った共和国はモンスターの大規模襲来で甚大な被害を受け……滅びの道を辿っていた。フィセルの力は“本物”だったのだ。戻って下さいと土下座され懇願されるが、もう全てが遅かった。フィセルは辺境伯と共に農業を始めていた。
【完結】キズモノになった私と婚約破棄ですか?別に構いませんがあなたが大丈夫ですか?
なか
恋愛
「キズモノのお前とは婚約破棄する」
顔にできた顔の傷も治らぬうちに第二王子のアルベルト様にそう宣告される
大きな傷跡は残るだろう
キズモノのとなった私はもう要らないようだ
そして彼が持ち出した条件は婚約破棄しても身体を寄越せと下卑た笑いで告げるのだ
そんな彼を殴りつけたのはとある人物だった
このキズの謎を知ったとき
アルベルト王子は永遠に後悔する事となる
永遠の後悔と
永遠の愛が生まれた日の物語
妹ばかりを贔屓し溺愛する婚約者にウンザリなので、わたしも辺境の大公様と婚約しちゃいます
新世界のウサギさん
恋愛
わたし、リエナは今日婚約者であるローウェンとデートをする予定だった。
ところが、いつになっても彼が現れる気配は無く、待ちぼうけを喰らう羽目になる。
「私はレイナが好きなんだ!」
それなりの誠実さが売りだった彼は突如としてわたしを捨て、妹のレイナにぞっこんになっていく。
こうなったら仕方ないので、わたしも前から繋がりがあった大公様と付き合うことにします!
虐げられるのは嫌なので、モブ令嬢を目指します!
八代奏多
恋愛
伯爵令嬢の私、リリアーナ・クライシスはその過酷さに言葉を失った。
社交界がこんなに酷いものとは思わなかったのだから。
あんな痛々しい姿になるなんて、きっと耐えられない。
だから、虐められないために誰の目にも止まらないようにしようと思う。
ーー誰の目にも止まらなければ虐められないはずだから!
……そう思っていたのに、いつの間にかお友達が増えて、ヒロインみたいになっていた。
こんなはずじゃなかったのに、どうしてこうなったのーー!?
※小説家になろう様・カクヨム様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる