上 下
20 / 27

第20話 かけがえのない時間 ※ハルトヴィヒ視点

しおりを挟む
 それはとても楽しくて、何事にも代えがたい大切な時間だった。

「こういうのは、どうだろうか?」
「なるほど。それは、試してみる価値がありますね!」

 シャルロッテ嬢と一緒に、最近ますます大盛況らしい菓子店シェトレボーの商品を味わいながら、彼女と意見を交わし合う。

 感じたことや、思いついたことを伝える。するとシャルロッテ嬢は目を輝かせて、俺の話を熱心に聞いてくれた。

「俺のような男の意見なんて、参考になるかな?」
「はい、とても! 私には、思いつかない視点からの意見ばかりですよ」

 そう言ってもらい、とても嬉しくなる。役に立って良かったと、そう思った。



 以前、自分で菓子店を開いたことがあった。自分の理想を生み出すために、優秀なスタッフを集めて、設備を整えた。

 けれど、それは失敗した。俺の思うような形に仕上げることが出来なかったから。指示の出し方が悪かったのか、上手く伝わらなかったのか。

 甘い物、菓子は大好きだけれど、自分で生み出すのには向いていないのだろうと、そう思って諦めた。それからは、別の方法で菓子作り等に関わろうと考えた。

 世界各地にある甘い物に関する事業、商品を調査して、気に入った物を発見したら支援する活動を始めた。

 今までに、様々な関係を築いてきた。甘いものを取り扱う商人、果樹農家、砂糖の製造業者に菓子店の店主、他にも色々と。そちらの活動は上手くいって、満足できる成果が出せていた。

 そして、菓子店シェトレボーの情報を入手し、シャルロッテ嬢と出会った。

 彼女との関係を深めて、とうとう帝国に来てもらえた。そして何故か今は、彼女に依頼されて菓子店シェトレボーの商品開発に関わることに。

 こんな事になるとは、予想していなかった。だけど、とても嬉しい状況だ。だから俺は、全力で取り組む。前のように失敗しないよう、気を付けながら。

 思いついた意見を、次々と提案していく。その度にシャルロッテ嬢が笑顔を浮かべてくれるから、それが本当に楽しかった。

 意見を聞いてシャルロッテ嬢が理解し、それを形にしてくれた。俺の理想の形に。いや、理想以上に仕上げてくれていた。まさに、俺が求めていたものはコレだ。

 以前は出来なかったことが、今は出来ている。失敗しないのは、シャルロッテ嬢が理解してくれるから。彼女が居なければ、再び失敗していたと思う。

 これから菓子店シェトレボーで売り出される新たな商品の開発に、俺も関わらせてもらった。出来上がった新たしい商品を見て味わい、感動した。自分が関わっていることが誇らしくなった。

 そしてまた、次の商品開発が始まる。シャルロッテ嬢と意見を交わし合う、楽しい時間。いつまでもこのまま、楽しい時間が続けばいいのに。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈 
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。

新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。 そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。 しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。 ※カクヨムにも投稿しています!

「これは私ですが、そちらは私ではありません」

イチイ アキラ
恋愛
試験結果が貼り出された朝。 その掲示を見に来ていたマリアは、王子のハロルドに指をつきつけられ、告げられた。 「婚約破棄だ!」 と。 その理由は、マリアが試験に不正をしているからだという。 マリアの返事は…。 前世がある意味とんでもないひとりの女性のお話。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

「聖女に比べてお前には癒しが足りない」と婚約破棄される将来が見えたので、医者になって彼を見返すことにしました。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
「ジュリア=ミゲット。お前のようなお飾りではなく、俺の病気を癒してくれるマリーこそ、王妃に相応しいのだ!!」 侯爵令嬢だったジュリアはアンドレ王子の婚約者だった。王妃教育はあんまり乗り気ではなかったけれど、それが役目なのだからとそれなりに頑張ってきた。だがそんな彼女はとある夢を見た。三年後の婚姻式で、アンドレ王子に婚約破棄を言い渡される悪夢を。 「……認めませんわ。あんな未来は絶対にお断り致します」 そんな夢を回避するため、ジュリアは行動を開始する。

山に捨てられた令嬢! 私のスキルは結界なのに、王都がどうなっても、もう知りません!

甘い秋空
恋愛
婚約を破棄されて、山に捨てられました! 私のスキルは結界なので、私を王都の外に出せば、王都は結界が無くなりますよ? もう、どうなっても知りませんから! え? 助けに来たのは・・・

【完結】魅了が解けたので貴方に興味はございません。

恋愛
「こんなに、こんなにこんなに愛してるのに……!!」 公爵令嬢のサラは婚約者である王太子を盲目的に愛していた。どんなに酷くされても嫌いになれない、そんな感情で狂いそうになりながらも王太子への愛だけを信じ続けてきた。 あるパーティーの夜、大勢の前で辱しめを受けたサラの元に一人の青年が声をかける。どうやらサラは長年、ある人物に魅了と呼ばれる魔術をかけられていた。魔術が解けると…… 「……あれ?何で私、あんなクズのこと愛してたのかしら」 目が覚めた公爵令嬢の反撃が始まる。 ※未完作品のリメイク版。一部内容や表現を修正しております。執筆完了済み。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

処理中です...