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第2話 はじまり
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最初は、婚約相手と仲良くなろうと努力した。これから先、一生を共にすることになるパートナーだから。お互いの理解を深めておこうと思った。
私から積極的に話しかけて、話題を探ったりした。だけど、ダメだった。
「あの、エヴラール様」
「鬱陶しい」
「……」
婚約者であるエヴラール王子は、私に対して冷たい態度を取り続けた。話しかけただけで、とても面倒そうな表情を向けられる。そして彼は、私との会話を拒否する。
吐き捨てるような彼の言葉を、何度も聞かされた。
「お前みたいな女が僕の妻になるなんて、信じられないな」
「私は、貴方と仲良くなりたいのに……」
私は、彼に嫌われているのだろう。理由はわからないけれど、これでは仲良くなるなんて無理だ。歩み寄ろうとしても、完全に拒絶されているから。
「仲良くなる必要なんてない。僕が、君を好きになることもないから。婚約は、親が勝手に決めたこと。人が見てない所では、ベタベタする必要もない」
「……そうですか」
そう言われて、婚約相手と仲良くなることを諦めた。
彼は、私を好きになることはないらしい。私も彼を好きじゃないから。それなら、お互いに無関心でいた方がいいのかもしれない。
「好き勝手にすればいい。僕もそうする」
「……わかりました」
ということで私達は、必要以上に干渉しないことを決めた。婚約相手と一緒に参加しなければいけないパーティーや式典などには参加するするけど、それ以外の場所でなるべく会わないようにした。
私が彼と合うのは、何か用事があって呼び出された時だけ。それも、事務的な会話しかしなかった。
そんな日々が続いていたある日、私は自分がやりたいことを考えていた。
「どうしようかしら?」
今まで、結婚に向けた花嫁修業に集中してきた。けれど、程々で大丈夫になった。エヴラール王子が求めたのは、表面上だけの夫婦だったから。なので、頑張る必要はないらしい。
時間が余って暇になってしまったから、自分のやりたいことを見つけたかった。
おヒゲの立派な執事のパトリックに相談してみた。人生経験が豊富そうな彼なら、何か良いアイデアを出してくれるかもしれないと思ったから。
「そうですね。……シャルロッテお嬢様が好きなことは、何でしょうか?」
「私が好きなこと? うーん、そうだなぁ」
パトリックは、私と一緒になって真剣に考えてくれた。そして、問いかけてくる。彼からの質問は、私の求めている答えにゆっくりと導いてくれた。
「美味しいお菓子を食べることかな! とっても幸せな気持ちになれるのよ」
「では、それを皆で共有するというのはどうでしょうか?」
「皆?」
「はい。家族と、屋敷の使用人達と、それから街の皆と一緒に」
彼の提案を聞いて、ハッとした。目から鱗が落ちるような思いだった。やりたいと思う事が見つかった。皆で一緒に素敵で美味しいお菓子を食べて、幸せになる。
「いいわね! それ、凄く素敵だわ!!」
嬉しさを感じた瞬間、頭の中にイメージが湧いてきた。
街の中にある、お菓子を売っているお店。そこに人々が集まって、楽しくお菓子を食べて幸せそうな表情。
私は、さっそく準備に取り掛かった。執事のパトリックに手伝ってもらい、計画を立てる。街の中に私のお菓子店を建てるための。
やることがたくさんあって、大変だった。だけど、それ以上にワクワクしていた。
やりたいことが見つかって、楽しみながら新しいことに挑戦できることが嬉しくてたまらなかった。
お父様に、会議を重ねて完成させた計画を報告する。そして、許可をもらった。
「……ふむ。まあ、いいんじゃないか。やってみれば」
「ありがとうございます!」
私の計画を聞いても、あまり興味はなさそうだったお父様。でも、ちゃんと許可はもらえたので好き勝手やらせてもらう。
スタッフを集めて、仕入れルートを開拓し、レシピとメニューを考える。こうして完成したのが、お菓子店シェトレボーである。
私から積極的に話しかけて、話題を探ったりした。だけど、ダメだった。
「あの、エヴラール様」
「鬱陶しい」
「……」
婚約者であるエヴラール王子は、私に対して冷たい態度を取り続けた。話しかけただけで、とても面倒そうな表情を向けられる。そして彼は、私との会話を拒否する。
吐き捨てるような彼の言葉を、何度も聞かされた。
「お前みたいな女が僕の妻になるなんて、信じられないな」
「私は、貴方と仲良くなりたいのに……」
私は、彼に嫌われているのだろう。理由はわからないけれど、これでは仲良くなるなんて無理だ。歩み寄ろうとしても、完全に拒絶されているから。
「仲良くなる必要なんてない。僕が、君を好きになることもないから。婚約は、親が勝手に決めたこと。人が見てない所では、ベタベタする必要もない」
「……そうですか」
そう言われて、婚約相手と仲良くなることを諦めた。
彼は、私を好きになることはないらしい。私も彼を好きじゃないから。それなら、お互いに無関心でいた方がいいのかもしれない。
「好き勝手にすればいい。僕もそうする」
「……わかりました」
ということで私達は、必要以上に干渉しないことを決めた。婚約相手と一緒に参加しなければいけないパーティーや式典などには参加するするけど、それ以外の場所でなるべく会わないようにした。
私が彼と合うのは、何か用事があって呼び出された時だけ。それも、事務的な会話しかしなかった。
そんな日々が続いていたある日、私は自分がやりたいことを考えていた。
「どうしようかしら?」
今まで、結婚に向けた花嫁修業に集中してきた。けれど、程々で大丈夫になった。エヴラール王子が求めたのは、表面上だけの夫婦だったから。なので、頑張る必要はないらしい。
時間が余って暇になってしまったから、自分のやりたいことを見つけたかった。
おヒゲの立派な執事のパトリックに相談してみた。人生経験が豊富そうな彼なら、何か良いアイデアを出してくれるかもしれないと思ったから。
「そうですね。……シャルロッテお嬢様が好きなことは、何でしょうか?」
「私が好きなこと? うーん、そうだなぁ」
パトリックは、私と一緒になって真剣に考えてくれた。そして、問いかけてくる。彼からの質問は、私の求めている答えにゆっくりと導いてくれた。
「美味しいお菓子を食べることかな! とっても幸せな気持ちになれるのよ」
「では、それを皆で共有するというのはどうでしょうか?」
「皆?」
「はい。家族と、屋敷の使用人達と、それから街の皆と一緒に」
彼の提案を聞いて、ハッとした。目から鱗が落ちるような思いだった。やりたいと思う事が見つかった。皆で一緒に素敵で美味しいお菓子を食べて、幸せになる。
「いいわね! それ、凄く素敵だわ!!」
嬉しさを感じた瞬間、頭の中にイメージが湧いてきた。
街の中にある、お菓子を売っているお店。そこに人々が集まって、楽しくお菓子を食べて幸せそうな表情。
私は、さっそく準備に取り掛かった。執事のパトリックに手伝ってもらい、計画を立てる。街の中に私のお菓子店を建てるための。
やることがたくさんあって、大変だった。だけど、それ以上にワクワクしていた。
やりたいことが見つかって、楽しみながら新しいことに挑戦できることが嬉しくてたまらなかった。
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「ありがとうございます!」
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スタッフを集めて、仕入れルートを開拓し、レシピとメニューを考える。こうして完成したのが、お菓子店シェトレボーである。
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◆◆◆ 更新中の作品 ◆◆◆
【新作】婚約者を妹に取られましたが、社交パーティーの評価で見返してやるつもりです
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/595922033
【完結】欲しいというなら、あげましょう。婚約破棄したら返品は受け付けません。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/88950443/82917838
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