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第7話 辺境伯との初対面
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「こちらです、レティシア様」
「案内ありがとう」
目的地だった辺境の街に無事到着することが出来た私は早速、スタンレイ辺境伯が住んでいる屋敷に行き、彼と面会することになった。
どうやらスタンレイ辺境伯は、私が屋敷に到着するのを待ってくれていたらしい。
実は、予定よりも1日遅れての到着になってしまった。すぐ会えると言われたので侍女に案内してもらい、彼の待つ部屋へと向かうことになった。
これ以上、待たせてしまうのは申し訳ない。私は急いで、彼が待機しているという応接室に向かっていた。
「この部屋で、ブレイク様がお待ちです」
「わかったわ」
木製の立派な扉が開かれて、私は部屋の中に入る。するとそこには、背丈の大きな男性が立っていた。窓から見える外の景色を眺めながら、ジッと待ち構えている。
あの人が、スタンレイ辺境伯なのだろう。背を向けていて彼の表情は見えないが、もしかすると怒っているかもしれない。私が予定の日時に遅刻してしまったから。
到着を待ってくれていたようだから、待たせすぎたのかもしれない。
私は、恐る恐る声をかけることにした。
「初めまして、レティシア・ルブルトンと申します。遅れて申し訳ありません」
頭を下げて、心を込めて丁寧に挨拶と謝罪をする。最初の出会いは非常に肝心だ。結婚する相手だから、やはり仲良くしたい。そのために、嫌な印象を与えないように気をつけて接する。
だけど、いきなり遅刻してしまって、私に対する印象は既に致命的かもしれないが。
スタンレイ辺境伯は私に対して、どんな印象を抱くのだろうか。頭を下げたまま、彼の返答を待った。
「いえいえ、王都から辺境まで来るのに予定が狂ってしまうのは仕方ありませんよ。それより、遠路はるばるご苦労さまでした。俺がブレイク・スタンレイです。どうぞよろしくおねがいします」
良かった。彼の声の感じから、怒ってはいないようでホッとした。でも、やっぱり私が遅刻したことには変わりはない。本当に申し訳ないことをしたと思う。
私は下げていた頭を、ゆっくりと上げてスタンレイ辺境伯の顔を見た。
「はい。よろしくおね、がい、します……」
「どうかしましたか?」
「……あっ! い、いえ」
頭を上げてから改めて挨拶する途中で私は、言葉を詰まらせてしまった。なぜなら顔を上げた時に、目の前に想像もしていなかった魅力溢れる男性が立っていたから。
慌てて視線を外す。だけど、その一瞬で彼の顔は私の目に焼き付いていた。
黒髪短髪で力強い金色の瞳。野性的でワイルドな男性に見つめられるのを感じて、顔が急激に熱くなっていく。
心臓がドキドキして苦しい。こんな気持ちになったのは、生まれて初めてだった。
どうしよう、直視できない。胸がバクバクと高鳴っている。チラ見すると、やはりそこに素敵な人が居た。見間違いじゃない。
まさか、自分が男性と顔を合わせただけなのにこんな状態になるなんて、全く予想していなかった。どうしよう、頭が真っ白。
私は、どうにか平静さを保とうとするが上手くいかない。
「……やはり、俺との結婚は嫌ですよね。今からでも、婚約の話は無かったことに」
「いえッ! 違います!」
「え?」
彼の悲しそうな声に、私は即座に否定した。違う、そうじゃないの。
「そ、その。ブレイク様が、す、素敵、すぎて……お顔が、見れ、ないん、です」
「なんですって?」
彼は唖然としている。いきなり、そんなことを面と向かって言うなんて変な女だと思われたかも。だが、自分でも何を言っているのか分からないぐらい混乱している。
ああ、もう!
私は勢いに任せて、逸していた視線を前方に向ける。スタンレイ辺境伯と正面から見つめ合った。そして。
「好きです!」
「えーっと……。それは何かの冗談、ですか?」
「いいえ! 冗談なんかじゃ、ありませんッ! 私は本気です!」
気持ちが抑えきれず、告白してしまった。容姿だけ見て惚れるなんて、はしたない女だと思われたかも。だけど、それほど彼は魅力的だったから。私の気持ちを、彼に知ってもらいたかった。
スタンレイ辺境伯は戸惑っていた。当たり前の反応だと思う。私だって、逆の立場なら同じ反応をしてしまうと思うわ。初めて会った人から急に、そんな事を言われて困惑しないはずがない。
「……」
「……」
それから私も彼も困って、しばらく沈黙の時間が続いた。彼との初対面は大失敗で終わってしまった。
「案内ありがとう」
目的地だった辺境の街に無事到着することが出来た私は早速、スタンレイ辺境伯が住んでいる屋敷に行き、彼と面会することになった。
どうやらスタンレイ辺境伯は、私が屋敷に到着するのを待ってくれていたらしい。
実は、予定よりも1日遅れての到着になってしまった。すぐ会えると言われたので侍女に案内してもらい、彼の待つ部屋へと向かうことになった。
これ以上、待たせてしまうのは申し訳ない。私は急いで、彼が待機しているという応接室に向かっていた。
「この部屋で、ブレイク様がお待ちです」
「わかったわ」
木製の立派な扉が開かれて、私は部屋の中に入る。するとそこには、背丈の大きな男性が立っていた。窓から見える外の景色を眺めながら、ジッと待ち構えている。
あの人が、スタンレイ辺境伯なのだろう。背を向けていて彼の表情は見えないが、もしかすると怒っているかもしれない。私が予定の日時に遅刻してしまったから。
到着を待ってくれていたようだから、待たせすぎたのかもしれない。
私は、恐る恐る声をかけることにした。
「初めまして、レティシア・ルブルトンと申します。遅れて申し訳ありません」
頭を下げて、心を込めて丁寧に挨拶と謝罪をする。最初の出会いは非常に肝心だ。結婚する相手だから、やはり仲良くしたい。そのために、嫌な印象を与えないように気をつけて接する。
だけど、いきなり遅刻してしまって、私に対する印象は既に致命的かもしれないが。
スタンレイ辺境伯は私に対して、どんな印象を抱くのだろうか。頭を下げたまま、彼の返答を待った。
「いえいえ、王都から辺境まで来るのに予定が狂ってしまうのは仕方ありませんよ。それより、遠路はるばるご苦労さまでした。俺がブレイク・スタンレイです。どうぞよろしくおねがいします」
良かった。彼の声の感じから、怒ってはいないようでホッとした。でも、やっぱり私が遅刻したことには変わりはない。本当に申し訳ないことをしたと思う。
私は下げていた頭を、ゆっくりと上げてスタンレイ辺境伯の顔を見た。
「はい。よろしくおね、がい、します……」
「どうかしましたか?」
「……あっ! い、いえ」
頭を上げてから改めて挨拶する途中で私は、言葉を詰まらせてしまった。なぜなら顔を上げた時に、目の前に想像もしていなかった魅力溢れる男性が立っていたから。
慌てて視線を外す。だけど、その一瞬で彼の顔は私の目に焼き付いていた。
黒髪短髪で力強い金色の瞳。野性的でワイルドな男性に見つめられるのを感じて、顔が急激に熱くなっていく。
心臓がドキドキして苦しい。こんな気持ちになったのは、生まれて初めてだった。
どうしよう、直視できない。胸がバクバクと高鳴っている。チラ見すると、やはりそこに素敵な人が居た。見間違いじゃない。
まさか、自分が男性と顔を合わせただけなのにこんな状態になるなんて、全く予想していなかった。どうしよう、頭が真っ白。
私は、どうにか平静さを保とうとするが上手くいかない。
「……やはり、俺との結婚は嫌ですよね。今からでも、婚約の話は無かったことに」
「いえッ! 違います!」
「え?」
彼の悲しそうな声に、私は即座に否定した。違う、そうじゃないの。
「そ、その。ブレイク様が、す、素敵、すぎて……お顔が、見れ、ないん、です」
「なんですって?」
彼は唖然としている。いきなり、そんなことを面と向かって言うなんて変な女だと思われたかも。だが、自分でも何を言っているのか分からないぐらい混乱している。
ああ、もう!
私は勢いに任せて、逸していた視線を前方に向ける。スタンレイ辺境伯と正面から見つめ合った。そして。
「好きです!」
「えーっと……。それは何かの冗談、ですか?」
「いいえ! 冗談なんかじゃ、ありませんッ! 私は本気です!」
気持ちが抑えきれず、告白してしまった。容姿だけ見て惚れるなんて、はしたない女だと思われたかも。だけど、それほど彼は魅力的だったから。私の気持ちを、彼に知ってもらいたかった。
スタンレイ辺境伯は戸惑っていた。当たり前の反応だと思う。私だって、逆の立場なら同じ反応をしてしまうと思うわ。初めて会った人から急に、そんな事を言われて困惑しないはずがない。
「……」
「……」
それから私も彼も困って、しばらく沈黙の時間が続いた。彼との初対面は大失敗で終わってしまった。
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