経済的令嬢活動~金遣いの荒い女だという理由で婚約破棄して金も出してくれって、そんなの知りませんよ~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
34 / 37

第34話 臨機応変に対応して

しおりを挟む
「彼らは、我々のことなど何も考えてくれないんだッ!」

 そう訴えるのは、白旗投降してきた王国の兵士たちだ。強引に徴兵されて、ろくな装備も与えられず突然の命令で前線に送り出された彼らは、不満を溜め込んでいた。

 命令されるままに戦っていたら、無駄死にするだけ。だから、戦いもせず投降してきたのだと語る。

 そんな彼らを受け入れるかどうか。いくつか問題があった。

 ここから移住予定地に向かうまでの食料が足りるのかどうか。同行者が増えたら、予定していた以上に食料を消費するだろう。

 実は、食料の問題については対処することが可能。

 マティアスが移動ルートを確保してくれていて、途中にある補給地点で食料を用意してくれている。万が一に備えて、予定の人数分よりも多く用意してくれていた。

 その予備を使えば、同行者が増えても食料に困ることはないだろう。

 まさか、こうなることを予想してマティアスは大量の食料を事前に用意してくれていたのかしら。だとしたら、私は商人としてまだまだね。そして、先を読む力に優れた彼に対する尊敬の念を強めた。私も、いつか彼のような商人になりたい。

 それから、もう一つの問題として彼らを信用してもいいのかどうか。

 もしかすると、これは策略の可能性もある。こちらが油断したところで襲いかかってきて、全員を捕まえるつもりなのかもしれない。そう考えると、簡単に信じるわけにはいかない。

 しかし、彼らの話を聞いているうちに策略の可能性は低いだろうと思った。王家や貴族に対する不満を語る彼らは、嘘をついているように見えなかったから。

 それに、装備が貧弱なのも事実だ。それが偽装だとしても、戦いになった時にその装備では勝てるなんて思えなかった。戦いに関しては素人の私が見ても勝敗が分かるぐらい、王国兵士の武器や防具の品質が悪いのだ。

 この前のアーヴァイン王子との会談で、私の部下が騎士の装備について指摘した。その時と同じように、今回も兵士の装備の質が悪い。あの時よりも、一層酷くなっている。アーヴァイン王子は、失敗したのに直そうとしなかったらしい。

 それから、移動速度の問題もある。同行者が増えると、それだけ移動のスピードが落ちてしまう。第二第三の王国軍が追いかけてくる可能性を考えると、なるべく早く先へ進みたい。

 しかし、王国軍の追手の可能性は低いようだ。

 投降してきた王国の兵士の話によると、ほぼ全ての動かせる兵士を今回の作戦に投入されたそうだ。つまり現在、王国の兵士の大半が私のもとに居る。彼らが動かせる兵士が居ない。次の作戦を実行するためには、まず徴兵をして、戦いの準備を整える時間が必要。だから、しばらく追手が現れる可能性は低いという予想。

「彼は一体、何を考えているのかしら……」

 私は思わず呟いた。アーヴァイン王子が、どういう理由で兵士たちに命令したのか分からない。なぜ、一気に兵士を投入してしまったのか。しかも、その兵士が戦いもせずに投降してきた。やっぱり何か企んでいるのではないか、と疑ってしまう。

 色々と考えてみた結果、私は彼らを受け入れることに決めた。いくつかの問題は、対処できそうだから。

 彼らを受け入れることによるメリットもあった。移住予定地には、労働力が必要になる。いくらあっても足りないぐらい、人手が欲しかったところだ。

 なので、彼らを移住先まで連れて行って、仕事を与える。そうすれば、私も彼らも助かるし、お互いに利益があるはずだから。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

最初からここに私の居場所はなかった

kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。 死なないために努力しても認められなかった。 死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。 死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯ だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう? だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。 二度目は、自分らしく生きると決めた。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。 私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~ これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)

【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません

冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」 アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。 フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。 そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。 なぜなら―― 「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」 何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。 彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。 国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。 「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」 隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。 一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。

ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。

ねお
恋愛
 ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。  そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。  「そんなこと、私はしておりません!」  そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。  そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。  そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

婚約破棄された私は、世間体が悪くなるからと家を追い出されました。そんな私を救ってくれたのは、隣国の王子様で、しかも初対面ではないようです。

冬吹せいら
恋愛
キャロ・ブリジットは、婚約者のライアン・オーゼフに、突如婚約を破棄された。 本来キャロの味方となって抗議するはずの父、カーセルは、婚約破棄をされた傷物令嬢に価値はないと冷たく言い放ち、キャロを家から追い出してしまう。 ありえないほど酷い仕打ちに、心を痛めていたキャロ。 隣国を訪れたところ、ひょんなことから、王子と顔を合わせることに。 「あの時のお礼を、今するべきだと。そう考えています」 どうやらキャロは、過去に王子を助けたことがあるらしく……?

【完結】『婚約破棄』『廃嫡』『追放』されたい公爵令嬢はほくそ笑む~私の想いは届くのでしょうか、この狂おしい想いをあなたに~

いな@
恋愛
婚約者である王子と血の繋がった家族に、身体中をボロボロにされた公爵令嬢のレアーは、穏やかな生活を手に入れるため計画を実行します。 誤字報告いつもありがとうございます。 ※以前に書いた短編の連載版です。

処理中です...