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第18話 取引
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「もう、準備を進めているの!?」
「あぁ、そうだ。いくつか用意してある。民を助ける方法を」
コクリと頷く。私は、マティアスの言葉に驚いた。もう準備を進めているなんて。そうなることを予想していたのかしら。そして、流石はマティアスだと思った。私が王国の状況を知って、代表者達と話し合っている僅かな時間の間に、彼も動き出していたらしい。
「だけどその前に一つ、君に確かめておきたいことがあるあるんだ」
「何かしら?」
マティアスが真面目な顔で、尋ねてくる。なんだろうか? 彼は一体何を言おうとしているのかしら。わからない。私も真剣な表情で、マティアスの話を聞く。
「君は、ロアリルダ王国を救いたいのか? それとも、民を助けたいのか? どっちだ?」
「それは」
マティアスの質問を聞いた私は、一旦落ち着いて考えてみた。でも、すぐに答えは出てきた。
「もちろん、民を助けたい」
「王国の滅亡を避けるのは、もう無理だと思う。このまま混乱が大きくなって、近いうちに王国は崩壊するだろうね」
「そうね。マティアスの考えている通りだと、私も思う」
マティアスの予想は正しいと思う。私だって、今の王国を救うのは難しいと思っているもの。どんどん衰退していって、崩壊する。既に手遅れだと思う。
こうなってしまうまで、本当に早かった。だから、これから先も私が予想している以上に早く崩壊するかもしれない。だからこそ、急がなければならない。
「クリスティーナが助けたいと思った人達が混乱に巻き込まれないようにするには、皆で遠くに逃げればいいよ」
「遠くへ移動? でも、王都には数多くの人が居るわ。その人達を受け入れてくれる場所はあるの? 王都だけじゃない、王都以外に住んでいる民も大勢居る。その人達は、どうするつもりなの?」
マティアスの言葉に、私は疑問を抱く。確かに、今の王都から離れれば良いだろうと思うけど、他の場所へ皆を連れて行くのは難しいはずだ。
移動している途中で襲われる可能性がある。そして、移動するためには食料などの準備が必要になってくる。そう簡単に、別の場所へ逃げることは出来ないはず。
それに、移動するとしても受け入れてもらう場所があるのかどうか。逃げる先を用意する必要がある。
問題が山積みだった。しかし、提案したマティアスは当然想定済みだったようだ。
「とりあえず、連れて行くのは王都の民。地方に住んでいる者達は、様子を見よう。おそらく、大丈夫なはずだ。王都から人が居なくなれば、地方まで手を伸ばしている余裕が無くなるだろうから」
「なるほど」
「移動手段と食料を大量に用意してある。それを使えば、なんとかなるだろう」
彼の言葉を聞いて安心した。用意してあると言ってくれたので、本当に用意してあるのだろう。彼が協力してくれて、問題は解決されたと思った。
「その代わり」
やっぱり来たわね。協力してもらう代わりに対価を支払う必要があるだろう。その対価は、一体なんだろうか。私に支払える金額だろうか。でも、彼に協力してもらうためには、絶対に支払う必要がある。
私から協力を求めたのだから。覚悟を決めないといけない。マティアスからどんなことを要求されても、必ず払うと決めた。
「全てが終わった後、ネバントラ共和国まで僕と一緒に行ってほしい」
「わかりました。他には?」
ネバントラ共和国とは、周りを山々に囲まれて陸の孤島になっている、小さな国。商人達が選んだ者が元首を努めていて、他国には商人の国と呼ばれている。
その国に、マティアスと一緒に行けばいいのね。それぐらいなら、お安い御用だ。だけど、それだけじゃないはず。価値が等価になっていない。だから、私が支払うべき物は、他にもあるはず。
「えーっと、それはね……」
その他の対価について聞いてみると、マティアスは珍しく歯切れの悪い様子を見せる。言いにくいことでもあるのかしら? そんなことを考えていたら、彼は私の方を見て口を開いた。
「その他の用件については、ネバントラ共和国に行ってから話したい。君に頼みたいことは、この場で話すのは少し難しい内容なんだよ」
やはり、マティアスの様子が少しおかしかった。取引を行うのに内容を事前に提示しないなんて、今まで無かったこと。それほど、重要な内容ということなのかしら。
「そんなに難しい用件じゃない。法外な費用を請求したり、無理難題を押し付けたりするつもりはないから、安心してくれ」
「わかりました。内容については、ネバントラ共和国に行ってから聞きます」
「ありがとう、クリスティーナ」
私はマティアスの様子を見ながら、彼からの申し出を受けることにした。彼を信じることにしたのだ。そんな私の返答を聞いて、彼はホッとしていた。
ロアリルダ王国の混乱に、民が巻き込まれないようにする王都脱出計画について。私達は、それからしばらく話し合い続けた。
「あぁ、そうだ。いくつか用意してある。民を助ける方法を」
コクリと頷く。私は、マティアスの言葉に驚いた。もう準備を進めているなんて。そうなることを予想していたのかしら。そして、流石はマティアスだと思った。私が王国の状況を知って、代表者達と話し合っている僅かな時間の間に、彼も動き出していたらしい。
「だけどその前に一つ、君に確かめておきたいことがあるあるんだ」
「何かしら?」
マティアスが真面目な顔で、尋ねてくる。なんだろうか? 彼は一体何を言おうとしているのかしら。わからない。私も真剣な表情で、マティアスの話を聞く。
「君は、ロアリルダ王国を救いたいのか? それとも、民を助けたいのか? どっちだ?」
「それは」
マティアスの質問を聞いた私は、一旦落ち着いて考えてみた。でも、すぐに答えは出てきた。
「もちろん、民を助けたい」
「王国の滅亡を避けるのは、もう無理だと思う。このまま混乱が大きくなって、近いうちに王国は崩壊するだろうね」
「そうね。マティアスの考えている通りだと、私も思う」
マティアスの予想は正しいと思う。私だって、今の王国を救うのは難しいと思っているもの。どんどん衰退していって、崩壊する。既に手遅れだと思う。
こうなってしまうまで、本当に早かった。だから、これから先も私が予想している以上に早く崩壊するかもしれない。だからこそ、急がなければならない。
「クリスティーナが助けたいと思った人達が混乱に巻き込まれないようにするには、皆で遠くに逃げればいいよ」
「遠くへ移動? でも、王都には数多くの人が居るわ。その人達を受け入れてくれる場所はあるの? 王都だけじゃない、王都以外に住んでいる民も大勢居る。その人達は、どうするつもりなの?」
マティアスの言葉に、私は疑問を抱く。確かに、今の王都から離れれば良いだろうと思うけど、他の場所へ皆を連れて行くのは難しいはずだ。
移動している途中で襲われる可能性がある。そして、移動するためには食料などの準備が必要になってくる。そう簡単に、別の場所へ逃げることは出来ないはず。
それに、移動するとしても受け入れてもらう場所があるのかどうか。逃げる先を用意する必要がある。
問題が山積みだった。しかし、提案したマティアスは当然想定済みだったようだ。
「とりあえず、連れて行くのは王都の民。地方に住んでいる者達は、様子を見よう。おそらく、大丈夫なはずだ。王都から人が居なくなれば、地方まで手を伸ばしている余裕が無くなるだろうから」
「なるほど」
「移動手段と食料を大量に用意してある。それを使えば、なんとかなるだろう」
彼の言葉を聞いて安心した。用意してあると言ってくれたので、本当に用意してあるのだろう。彼が協力してくれて、問題は解決されたと思った。
「その代わり」
やっぱり来たわね。協力してもらう代わりに対価を支払う必要があるだろう。その対価は、一体なんだろうか。私に支払える金額だろうか。でも、彼に協力してもらうためには、絶対に支払う必要がある。
私から協力を求めたのだから。覚悟を決めないといけない。マティアスからどんなことを要求されても、必ず払うと決めた。
「全てが終わった後、ネバントラ共和国まで僕と一緒に行ってほしい」
「わかりました。他には?」
ネバントラ共和国とは、周りを山々に囲まれて陸の孤島になっている、小さな国。商人達が選んだ者が元首を努めていて、他国には商人の国と呼ばれている。
その国に、マティアスと一緒に行けばいいのね。それぐらいなら、お安い御用だ。だけど、それだけじゃないはず。価値が等価になっていない。だから、私が支払うべき物は、他にもあるはず。
「えーっと、それはね……」
その他の対価について聞いてみると、マティアスは珍しく歯切れの悪い様子を見せる。言いにくいことでもあるのかしら? そんなことを考えていたら、彼は私の方を見て口を開いた。
「その他の用件については、ネバントラ共和国に行ってから話したい。君に頼みたいことは、この場で話すのは少し難しい内容なんだよ」
やはり、マティアスの様子が少しおかしかった。取引を行うのに内容を事前に提示しないなんて、今まで無かったこと。それほど、重要な内容ということなのかしら。
「そんなに難しい用件じゃない。法外な費用を請求したり、無理難題を押し付けたりするつもりはないから、安心してくれ」
「わかりました。内容については、ネバントラ共和国に行ってから聞きます」
「ありがとう、クリスティーナ」
私はマティアスの様子を見ながら、彼からの申し出を受けることにした。彼を信じることにしたのだ。そんな私の返答を聞いて、彼はホッとしていた。
ロアリルダ王国の混乱に、民が巻き込まれないようにする王都脱出計画について。私達は、それからしばらく話し合い続けた。
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