15 / 37
第15話 市場からも追放
しおりを挟む
都市開発に関わっていた業者の代表者と会議を行った。そして、皆の状況について聞いて、知った。最悪な状況である、ということが分かった。
「突然、仕事場に兵士達が来て、全ての仕事を中止しろと命令してきやがったのさ。それで、作業を続けることが出来なくなった」
「あれは、酷いですぜ。ある日、現場に行ってみたら兵士が待っていて、その仕事は中止だと告げてきやがった。そんな話は聞いていないと抗議したら、問答無用で追い返されましたよ」
「うちも、そうだ。兵士が待ち構えていて、一方的に作業の中止を通告されたんだ。あんなことは初めてだぞ」
業者の代表者たちの言葉を聞いた私は、怒りを抑えるのに必死だった。それから、アーヴァイン王子が予想していたよりも愚かだということを、改めて思い知った。
計画は順調に進んでいた。そのまま放置しておけば、無事に完了していたはずだ。それを、わざわざ中止してしまうなんて。無駄を省くべきだと繰り返し、何度も語っていたアーヴァイン王子。だけど、中止してしまう方が無駄なんじゃないのかしら。
計画が完了した暁には、自分の手柄に出来たはずなのに。
今までの彼らの苦労してきた仕事を全て水の泡にする行為。どうしてこんなことをしたのかしらね……。私には理解できないわ。
でも、これで分かったことがある。それは、アーヴァイン王子が何を考えているかではなくて、彼が何をしようとしているかということだ。
「つまり、私の関係者を市場から追い出そう、ということね……」
婚約を破棄するだけでなく、私の関係者を市場に出さないように手を回したというわけね。一体何のために……?
そんなの、決まっている。私がこの国で商売が出来ないようにするため。私の行動範囲を制限しようとして、そのような暴挙に出たのね。それぐらいしか、彼の行動の理由が思いつかない。
だけど、そんな嫌がらせのためだけに王都を混乱させるだなんて。やっぱり私は、彼が何を考えているのか分からない。
もしかしたら私には思いつかないような、他に大きな目的があるのかもしれない。
「どうしましょうか、クリスティーナ様?」
代表者の皆が、すがるような目でこちらを見つめてくる。このまま彼らを放置すると、仕事がなくなって失業者が大量に出てしまうだろう。そうなると、彼らは路頭に迷ってしまうことになる。
それに、彼らだけではない。他の職人達の多くが仕事を失い、生活が出来なくなるだろう。下手をすれば、スラム街の住民になってしまうことだってあり得るのだ。
それだけは絶対に避けなければならない。
市場から追い出された彼らは、王都では新たな仕事を請け負うことは出来ないわ。新たな仕事を用意する? せっかく優秀なのに、他の仕事で活かせるのか。
こうなってしまうと、王国から別の国へ行くしかない。だけど、大量に人が居る。その大勢で移動するとなると、大規模な準備がいるだろう。他国へ移住するにも、様々な問題がつきまとう。
移住先を探すだけでも一苦労だし、移住した後の生活基盤を整えるにしても時間が必要だ。とてもではないが、すぐに出来るものではない。
私の力だけでは、どうにも出来ないわ。やはり、この問題を解決するためには彼を頼るしか方法がないかもしれない。
とにかく、商人のマティアスと会って話さなければ。
「突然、仕事場に兵士達が来て、全ての仕事を中止しろと命令してきやがったのさ。それで、作業を続けることが出来なくなった」
「あれは、酷いですぜ。ある日、現場に行ってみたら兵士が待っていて、その仕事は中止だと告げてきやがった。そんな話は聞いていないと抗議したら、問答無用で追い返されましたよ」
「うちも、そうだ。兵士が待ち構えていて、一方的に作業の中止を通告されたんだ。あんなことは初めてだぞ」
業者の代表者たちの言葉を聞いた私は、怒りを抑えるのに必死だった。それから、アーヴァイン王子が予想していたよりも愚かだということを、改めて思い知った。
計画は順調に進んでいた。そのまま放置しておけば、無事に完了していたはずだ。それを、わざわざ中止してしまうなんて。無駄を省くべきだと繰り返し、何度も語っていたアーヴァイン王子。だけど、中止してしまう方が無駄なんじゃないのかしら。
計画が完了した暁には、自分の手柄に出来たはずなのに。
今までの彼らの苦労してきた仕事を全て水の泡にする行為。どうしてこんなことをしたのかしらね……。私には理解できないわ。
でも、これで分かったことがある。それは、アーヴァイン王子が何を考えているかではなくて、彼が何をしようとしているかということだ。
「つまり、私の関係者を市場から追い出そう、ということね……」
婚約を破棄するだけでなく、私の関係者を市場に出さないように手を回したというわけね。一体何のために……?
そんなの、決まっている。私がこの国で商売が出来ないようにするため。私の行動範囲を制限しようとして、そのような暴挙に出たのね。それぐらいしか、彼の行動の理由が思いつかない。
だけど、そんな嫌がらせのためだけに王都を混乱させるだなんて。やっぱり私は、彼が何を考えているのか分からない。
もしかしたら私には思いつかないような、他に大きな目的があるのかもしれない。
「どうしましょうか、クリスティーナ様?」
代表者の皆が、すがるような目でこちらを見つめてくる。このまま彼らを放置すると、仕事がなくなって失業者が大量に出てしまうだろう。そうなると、彼らは路頭に迷ってしまうことになる。
それに、彼らだけではない。他の職人達の多くが仕事を失い、生活が出来なくなるだろう。下手をすれば、スラム街の住民になってしまうことだってあり得るのだ。
それだけは絶対に避けなければならない。
市場から追い出された彼らは、王都では新たな仕事を請け負うことは出来ないわ。新たな仕事を用意する? せっかく優秀なのに、他の仕事で活かせるのか。
こうなってしまうと、王国から別の国へ行くしかない。だけど、大量に人が居る。その大勢で移動するとなると、大規模な準備がいるだろう。他国へ移住するにも、様々な問題がつきまとう。
移住先を探すだけでも一苦労だし、移住した後の生活基盤を整えるにしても時間が必要だ。とてもではないが、すぐに出来るものではない。
私の力だけでは、どうにも出来ないわ。やはり、この問題を解決するためには彼を頼るしか方法がないかもしれない。
とにかく、商人のマティアスと会って話さなければ。
24
お気に入りに追加
1,288
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
「聖女はもう用済み」と言って私を追放した国は、今や崩壊寸前です。私が戻れば危機を救えるようですが、私はもう、二度と国には戻りません【完結】
小平ニコ
ファンタジー
聖女として、ずっと国の平和を守ってきたラスティーナ。だがある日、婚約者であるウルナイト王子に、「聖女とか、そういうのもういいんで、国から出てってもらえます?」と言われ、国を追放される。
これからは、ウルナイト王子が召喚術で呼び出した『魔獣』が国の守護をするので、ラスティーナはもう用済みとのことらしい。王も、重臣たちも、国民すらも、嘲りの笑みを浮かべるばかりで、誰もラスティーナを庇ってはくれなかった。
失意の中、ラスティーナは国を去り、隣国に移り住む。
無慈悲に追放されたことで、しばらくは人間不信気味だったラスティーナだが、優しい人たちと出会い、現在は、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。
そんなある日のこと。
ラスティーナは新聞の記事で、自分を追放した国が崩壊寸前であることを知る。
『自分が戻れば国を救えるかもしれない』と思うラスティーナだったが、新聞に書いてあった『ある情報』を読んだことで、国を救いたいという気持ちは、一気に無くなってしまう。
そしてラスティーナは、決別の言葉を、ハッキリと口にするのだった……
実家から絶縁されたので好きに生きたいと思います
榎夜
ファンタジー
婚約者が妹に奪われた挙句、家から絶縁されました。
なので、これからは自分自身の為に生きてもいいですよね?
【ご報告】
書籍化のお話を頂きまして、31日で非公開とさせていただきますm(_ _)m
発売日等は現在調整中です。
【完結】聖女と結婚するのに婚約者の姉が邪魔!?姉は精霊の愛し子ですよ?
つくも茄子
ファンタジー
聖女と恋に落ちた王太子が姉を捨てた。
正式な婚約者である姉が邪魔になった模様。
姉を邪魔者扱いするのは王太子だけではない。
王家を始め、王国中が姉を排除し始めた。
ふざけんな!!!
姉は、ただの公爵令嬢じゃない!
「精霊の愛し子」だ!
国を繁栄させる存在だ!
怒り狂っているのは精霊達も同じ。
特に王太子!
お前は姉と「約束」してるだろ!
何を勝手に反故してる!
「約束」という名の「契約」を破っておいてタダで済むとでも?
他サイトにも公開中
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました
天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。
伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。
無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。
そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。
無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる