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第33話 兄への報告 ※エドガー王子視点
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俺は重い足取りで、兄であるアルフレッド王子の部屋へと向かった。外出を禁じられた兄に、今回の件の結末を伝えるためだ。
本当は、こんな役目は嫌だった。だが、最後まで自分がきっちり終わらせないと。そして、最後まで見届けなければならないと思っていた。
扉の前で深呼吸をして、覚悟を決めて扉を開けた。疲れ切った兄の姿が目に入る。監視の目が光る中、息苦しい空気が部屋中に満ちていた。
俺が部屋に入ると、兄は不機嫌そうな表情を浮かべる。その目には、怒りと諦め、そして僅かな期待が混在していた。
「さっさと、ここから出してくれ」
「それは出来ません」
俺の冷たい返事に、兄の表情が一瞬歪んだ。
「フン……」
兄は鼻を鳴らした。挨拶もなく、座ったまま部屋から出せと言う。扉の前に立ったまま、俺は冷静に対処を続ける。感情的にならないよう、気を付けて話さないといけない。心の中で何度も自分に言い聞かせる。
「兄上、あなたに伝えなければならないことがあります」
俺は切り出した。面倒だし言いたくないな。でも、言わないと。
「兄上の王位継承権が剥奪されることが決まりました」
「そんなこと、許されない! たしかに俺は事件を起こした。だが、あんなちょっとした間違いで王位継承権を剥奪されるなんて!」
兄は激昂した。その声は怒りに震え、顔は紅潮していた。
「広場の事件のこと、だけではありませんよ。これまでの行為が積み重なって、そうなってしまったのです」
俺は諭すように言った。兄は黙り込んだ。意外なほどあっさりと抵抗をやめたが、それは納得したわけではないことは明らかだった。兄の目に憎悪の炎が浮かぶ。
おそらく、この部屋を出た後に、この屈辱を何倍にもして返そうと考えているのだろう。つまり、兄は懲りていない。何も学んでいないのだ。部屋を出たら、また同じように繰り返しそうだ。
「それからもう一つ、伝えておくことがあります」
俺は続けた。
「なんだ?」
傲慢な態度で、兄は俺の声に耳を傾けた。その目には、まだ希望の光が残っていた。
「ヴァネッサが処刑されました」
「え?」
初めて、兄の顔に驚きの色が浮かんだ。何を言ったのか理解できていない様子だった。
「いま、なんて言った……?」
「ヴァネッサは処刑されました。もう、この世にはいません」
もう一度、同じ言葉を伝える。すると、今度ははっきりと聞こえたようで、兄の顔が真っ白になった。時が止まったかのような沈黙が流れる。
「……うわぁぁぁっ!」
突然、兄が椅子から飛び上がり、俺に掴みかかろうとした。
「おい!」
「暴れるなッ!」
兵士たちが即座に動き、兄を制止した。しかし、兄は激しく暴れ続けた。その姿は、まるで野獣のようだった。そして、どんどん力が失われていく。やがて、静かになった。
「そんな……、どうして彼女が……」
かなりショックを受けているようだった。ヴァネッサのことをそこまで思っていたのか。だとすれば、なぜあんな危険な行動を取らせてしまったのだろう。
「やりすぎたんです」
俺は冷静に言った。
「公爵家の令嬢に危害を加えるよう命じるなんて、どう考えてもダメでした」
「そんなことになるなんて、思わなかったんだ」
兄が呟く。力が完全に抜けて、兵士たちの腕の中でうなだれた。
「そうするように命じたのは、兄上ではありませんか? ならば、そんなことを言うなんて愚かです。思わなかったなんて、後になって言っても無駄ですよ」
兄は黙り込み、兵士たちに促されるまま椅子に座る。一気に老け込み、弱々しい姿に変わってしまった。
本当に、なぜあんなことをしてしまったのか。そんなに後悔するのなら、止まるべきだった。
「そんな……、ヴァネッサが……」
まだ兄は、呆然と呟いた。
「どうして彼女が……」
もはや反論する力もないようだった。ただ虚ろな目で床を見つめ、時折小さく首を振るだけ。
報告を終えて、俺は部屋に入ってきたときと同じように重い足取りで部屋を出た。
その後、もう悪さが出来ないよう兄は辺境の地に送られ幽閉されることになった。
本当は、こんな役目は嫌だった。だが、最後まで自分がきっちり終わらせないと。そして、最後まで見届けなければならないと思っていた。
扉の前で深呼吸をして、覚悟を決めて扉を開けた。疲れ切った兄の姿が目に入る。監視の目が光る中、息苦しい空気が部屋中に満ちていた。
俺が部屋に入ると、兄は不機嫌そうな表情を浮かべる。その目には、怒りと諦め、そして僅かな期待が混在していた。
「さっさと、ここから出してくれ」
「それは出来ません」
俺の冷たい返事に、兄の表情が一瞬歪んだ。
「フン……」
兄は鼻を鳴らした。挨拶もなく、座ったまま部屋から出せと言う。扉の前に立ったまま、俺は冷静に対処を続ける。感情的にならないよう、気を付けて話さないといけない。心の中で何度も自分に言い聞かせる。
「兄上、あなたに伝えなければならないことがあります」
俺は切り出した。面倒だし言いたくないな。でも、言わないと。
「兄上の王位継承権が剥奪されることが決まりました」
「そんなこと、許されない! たしかに俺は事件を起こした。だが、あんなちょっとした間違いで王位継承権を剥奪されるなんて!」
兄は激昂した。その声は怒りに震え、顔は紅潮していた。
「広場の事件のこと、だけではありませんよ。これまでの行為が積み重なって、そうなってしまったのです」
俺は諭すように言った。兄は黙り込んだ。意外なほどあっさりと抵抗をやめたが、それは納得したわけではないことは明らかだった。兄の目に憎悪の炎が浮かぶ。
おそらく、この部屋を出た後に、この屈辱を何倍にもして返そうと考えているのだろう。つまり、兄は懲りていない。何も学んでいないのだ。部屋を出たら、また同じように繰り返しそうだ。
「それからもう一つ、伝えておくことがあります」
俺は続けた。
「なんだ?」
傲慢な態度で、兄は俺の声に耳を傾けた。その目には、まだ希望の光が残っていた。
「ヴァネッサが処刑されました」
「え?」
初めて、兄の顔に驚きの色が浮かんだ。何を言ったのか理解できていない様子だった。
「いま、なんて言った……?」
「ヴァネッサは処刑されました。もう、この世にはいません」
もう一度、同じ言葉を伝える。すると、今度ははっきりと聞こえたようで、兄の顔が真っ白になった。時が止まったかのような沈黙が流れる。
「……うわぁぁぁっ!」
突然、兄が椅子から飛び上がり、俺に掴みかかろうとした。
「おい!」
「暴れるなッ!」
兵士たちが即座に動き、兄を制止した。しかし、兄は激しく暴れ続けた。その姿は、まるで野獣のようだった。そして、どんどん力が失われていく。やがて、静かになった。
「そんな……、どうして彼女が……」
かなりショックを受けているようだった。ヴァネッサのことをそこまで思っていたのか。だとすれば、なぜあんな危険な行動を取らせてしまったのだろう。
「やりすぎたんです」
俺は冷静に言った。
「公爵家の令嬢に危害を加えるよう命じるなんて、どう考えてもダメでした」
「そんなことになるなんて、思わなかったんだ」
兄が呟く。力が完全に抜けて、兵士たちの腕の中でうなだれた。
「そうするように命じたのは、兄上ではありませんか? ならば、そんなことを言うなんて愚かです。思わなかったなんて、後になって言っても無駄ですよ」
兄は黙り込み、兵士たちに促されるまま椅子に座る。一気に老け込み、弱々しい姿に変わってしまった。
本当に、なぜあんなことをしてしまったのか。そんなに後悔するのなら、止まるべきだった。
「そんな……、ヴァネッサが……」
まだ兄は、呆然と呟いた。
「どうして彼女が……」
もはや反論する力もないようだった。ただ虚ろな目で床を見つめ、時折小さく首を振るだけ。
報告を終えて、俺は部屋に入ってきたときと同じように重い足取りで部屋を出た。
その後、もう悪さが出来ないよう兄は辺境の地に送られ幽閉されることになった。
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