上 下
15 / 36

第15話 真の実力

しおりを挟む
 魔法の授業が終わると、周囲で見ていた生徒たちが一斉に近寄ってきた。

「凄かった!」
「エレノア様って、あんなにすごい実力者だったのね!」
「なぜ今まで、その力を隠していたの!?」

 朝、遠巻きから見ていた彼女たちの様子とは大違いだった。みんな興奮した様子で、次々と私に話しかけてくる。それだけ、私の本当の実力というのが大きなインパクトを与えたみたい。

 私は冷静に対処した。

「みなさま、落ち着いて。一つずつお話するわ」

 それから私は、実力を隠していた理由について簡単に説明した。この能力は実家で磨いたものだから、あまりひけらかしたくないと思っていたこと。皆さんの進行度に合わせて、なるべく授業の邪魔にならないよう実力を抑えていたのだと。

「このタイミングで実力を明かしたのは、アルフレッド王子から婚約を破棄されて、心境の変化があったから、かしら?」
「そうね、それもあるわ」

 嫌味などではなく、純粋な興味から聞かれているみたいだった。だから私も正直に答えた。婚約を破棄されたのだから、考えも大きく変わるでしょう。

「アルフレッド王子は、自分よりも高い能力に嫉妬しそうだし。実力を隠しておいて正解かも」
「それ、あるかもしれないわね」
「でも、平民のヴァネッサを実力だけで選んだみたいだけど」
「あれは、顔で選んでるんじゃないの?」
「それと、平民の女の子だから。自分よりも下に見てるんでしょうね」

 次々と意見を述べる友人たち。私も同感だったが、あまり深入りするのは避ける。

「ともかく、授業も終わったことだし、教室へ戻りましょう」
「ええ、そうね」

 ちょっと危ない方向へと話が進みそうだったので、その話題を打ち切った。みんな会話を止めて、教室へ戻るために歩き出した。



「エレノア、ちょっといいかい?」
「はい、先生。なんでしょうか?」

 友人たちと一緒に教室へ戻ろうとしたとき、先生に呼び止められた。なにか話があるらしい。

「あの人に鍛えられていると聞いていたから疑っていたんだが、やはり本当の実力を隠していたんだな」
「申し訳ありません、先生」

 実力を隠していたことを先生に指摘されてしまった。どうやら先生は、私の師匠のことを知っているらしい。それで、私が周りに合わせた実力しか出していないことを疑っていたみたいだ。

「いや、いいんだ。お前にも事情があるだろうから」

 先生は、私の事情も理解してくれるらしい。

「だが次の試験では、ちゃんと実力を発揮して、本当の力を証明してみせてくれ」
「わかりました。そのつもりです」

 ということで、試験では全力を尽くすように指示された。もともとそうするつもりだったので、先生の指示に従うのは問題ない。

 これで、私の真の実力が皆に知られることになった。もう隠す必要はないだろう。むしろ、これからは堂々と実力を発揮していきたい。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

愛のない貴方からの婚約破棄は受け入れますが、その不貞の代償は大きいですよ?

日々埋没。
恋愛
 公爵令嬢アズールサは隣国の男爵令嬢による嘘のイジメ被害告発のせいで、婚約者の王太子から婚約破棄を告げられる。 「どうぞご自由に。私なら傲慢な殿下にも王太子妃の地位にも未練はございませんので」  しかし愛のない政略結婚でこれまで冷遇されてきたアズールサは二つ返事で了承し、晴れて邪魔な婚約者を男爵令嬢に押し付けることに成功する。 「――ああそうそう、殿下が入れ込んでいるそちらの彼女って実は〇〇ですよ? まあ独り言ですが」  嘘つき男爵令嬢に騙された王太子は取り返しのつかない最期を迎えることになり……。    ※この作品は過去に公開したことのある作品に修正を加えたものです。  またこの作品とは別に、他サイトでも本作を元にしたリメイク作を別のペンネー厶で公開していますがそのことをあらかじめご了承ください。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。

gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。

【完結】元婚約者の次の婚約者は私の妹だそうです。ところでご存知ないでしょうが、妹は貴方の妹でもありますよ。

葉桜鹿乃
恋愛
あらぬ罪を着せられ婚約破棄を言い渡されたジュリア・スカーレット伯爵令嬢は、ある秘密を抱えていた。 それは、元婚約者モーガンが次の婚約者に望んだジュリアの妹マリアが、モーガンの実の妹でもある、という秘密だ。 本当ならば墓まで持っていくつもりだったが、ジュリアを婚約者にとモーガンの親友である第一王子フィリップが望んでくれた事で、ジュリアは真実を突きつける事を決める。 ※エピローグにてひとまず完結ですが、疑問点があがっていた所や、具体的な姉妹に対する差など、サクサク読んでもらうのに削った所を(現在他作を書いているので不定期で)番外編で更新しますので、暫く連載中のままとさせていただきます。よろしくお願いします。 番外編に手が回らないため、一旦完結と致します。 (2021/02/07 02:00) 小説家になろう・カクヨムでも別名義にて連載を始めました。 恋愛及び全体1位ありがとうございます! ※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。

白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。 ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。 ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。 それは大人になった今でも変わらなかった。 そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。 そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。 彼の子を宿してーー

婚約破棄されて追放された私、今は隣国で充実な生活送っていますわよ? それがなにか?

鶯埜 餡
恋愛
 バドス王国の侯爵令嬢アメリアは無実の罪で王太子との婚約破棄、そして国外追放された。  今ですか?  めちゃくちゃ充実してますけど、なにか?

処理中です...