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第13話 勝負の始まり
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ヴァネッサと向かい合う。目の前に立っている彼女の表情は、自信に満ちている。私を見くびっているのか、それとも何か策があるのだろうか。私は彼女の表情を読み取ろうとしたが、はっきりとはわからなかった。
「各々、準備が整ったら始めなさい」
実践形式の魔法の授業。先生の合図で、もう始めていいという。
「最初は準備運動で、少しずつ」
「必要ないわ。最初から全力で来なさい。初手は譲るから」
私の提案は聞かず、いきなり全力で来いと言われる。今回から私は、本当の実力を明かすことに決めていた。とはいえ、いきなり全力でいくわけにはいかない。相手の力量を見極めながら、段階的に力を上げていくことが大切だ。準備運動は必要ないと言うけれど、念の為に加減はする。
「そう。じゃあ、いくわね」
私はヴァネッサの防御魔法の展開を注意深く観察した。彼女の魔法陣は複雑で精巧だ。ここにいる他の子達よりも優れている。つまり、そこそこ優秀だと思う。でも、アルフレッド王子が絶賛するほどの実力には見えない。
もちろん、まだ授業は始まったばかり。向こうも全力を隠しているのかもしれないけれど。
私は一つ息を吸い込むと、ゆっくりと息を吐きながら魔法を放った。基本的な炎の魔法だ。私の手から生まれた炎は、赤く輝きながら、ヴァネッサに向かって一直線に飛んでいく。
ヴァネッサの防御魔法の壁に当たった瞬間、炎は弾け飛び、無数の火の粉となって辺りに散らばった。火の粉はすぐに消えていった。
「なかなか、やるじゃない。でも、それだけね」
魔法を防御したヴァネッサが言う。やっぱり彼女は、余裕の表情を浮かべていた。
だけど、私の目は違うものを捉えていた。防御魔法の壁があたった瞬間、ほんの一瞬だけ壁が揺らいでいたのだ。気を抜くのが早すぎる。防いだ後も油断せずに、もうちょっと集中しないと。彼女の課題が見えた。これは伝えるべきかしら。
「次は、こっちの番よ」
彼女の目が競争心で輝いている。
「はい、どうぞ」
私も防御魔法を展開する。青白い光の壁が、私の周りを囲むように現れた。その直後、ヴァネッサが魔法を放ってきた。気が早すぎる。それとも狙ったのかしら。
私が放った魔法と同じ炎。だけど、炎の大きさは倍近く違う。まるで私を圧倒するかのような勢いだ。
私は微動だにせず、しっかりと受け止めた。ヴァネッサの炎魔法は、私の防御壁にぶつかって砕け散った。衝撃は、見た目に反して大きくない。これなら大丈夫ね。
「……」
私が難なく魔法を防いだことに、ヴァネッサは悔しそうな表情を浮かべる。完全に私を見くびっていたようだ。やっぱり、狙っていたのね。
まだ授業が始まったばかり。これからが本番だ。私は徐々に本当の実力を明かそうと考えている。隠してきた力を、少しずつ解放していくつもりだから。ヴァネッサには最後まで付き合ってもらいましょう。
彼女の実力も、この腕試しで明らかになるはずだ。私は心の中で微笑んだ。さあ、本当の勝負が始まる。
「各々、準備が整ったら始めなさい」
実践形式の魔法の授業。先生の合図で、もう始めていいという。
「最初は準備運動で、少しずつ」
「必要ないわ。最初から全力で来なさい。初手は譲るから」
私の提案は聞かず、いきなり全力で来いと言われる。今回から私は、本当の実力を明かすことに決めていた。とはいえ、いきなり全力でいくわけにはいかない。相手の力量を見極めながら、段階的に力を上げていくことが大切だ。準備運動は必要ないと言うけれど、念の為に加減はする。
「そう。じゃあ、いくわね」
私はヴァネッサの防御魔法の展開を注意深く観察した。彼女の魔法陣は複雑で精巧だ。ここにいる他の子達よりも優れている。つまり、そこそこ優秀だと思う。でも、アルフレッド王子が絶賛するほどの実力には見えない。
もちろん、まだ授業は始まったばかり。向こうも全力を隠しているのかもしれないけれど。
私は一つ息を吸い込むと、ゆっくりと息を吐きながら魔法を放った。基本的な炎の魔法だ。私の手から生まれた炎は、赤く輝きながら、ヴァネッサに向かって一直線に飛んでいく。
ヴァネッサの防御魔法の壁に当たった瞬間、炎は弾け飛び、無数の火の粉となって辺りに散らばった。火の粉はすぐに消えていった。
「なかなか、やるじゃない。でも、それだけね」
魔法を防御したヴァネッサが言う。やっぱり彼女は、余裕の表情を浮かべていた。
だけど、私の目は違うものを捉えていた。防御魔法の壁があたった瞬間、ほんの一瞬だけ壁が揺らいでいたのだ。気を抜くのが早すぎる。防いだ後も油断せずに、もうちょっと集中しないと。彼女の課題が見えた。これは伝えるべきかしら。
「次は、こっちの番よ」
彼女の目が競争心で輝いている。
「はい、どうぞ」
私も防御魔法を展開する。青白い光の壁が、私の周りを囲むように現れた。その直後、ヴァネッサが魔法を放ってきた。気が早すぎる。それとも狙ったのかしら。
私が放った魔法と同じ炎。だけど、炎の大きさは倍近く違う。まるで私を圧倒するかのような勢いだ。
私は微動だにせず、しっかりと受け止めた。ヴァネッサの炎魔法は、私の防御壁にぶつかって砕け散った。衝撃は、見た目に反して大きくない。これなら大丈夫ね。
「……」
私が難なく魔法を防いだことに、ヴァネッサは悔しそうな表情を浮かべる。完全に私を見くびっていたようだ。やっぱり、狙っていたのね。
まだ授業が始まったばかり。これからが本番だ。私は徐々に本当の実力を明かそうと考えている。隠してきた力を、少しずつ解放していくつもりだから。ヴァネッサには最後まで付き合ってもらいましょう。
彼女の実力も、この腕試しで明らかになるはずだ。私は心の中で微笑んだ。さあ、本当の勝負が始まる。
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