上 下
25 / 46

第25話 終わらない騒動 ※レナルド王子

しおりを挟む
「今朝、カールハインツ将軍が病死されたという報告が届きました」
「なんだと!?」

 突然の報告にレナルド王子は驚き、スーッと血の気が引いた。将軍が死んでしまうなんて、予想していなかった。反乱軍との戦いは、どうなってしまうのか。

「将軍が病死するなんて、ありえない。本当なのか?」
「本当です。将軍は病死されました」
「その報告に、間違いは、ないのか……?」
「はい。間違いありません」

 報告に間違いないのか、レナルド王子は何度も何度も確かめる。だけど、本当だと無慈悲に将軍の病死を伝える部下。

 冷静に報告を続ける部下に対して王子は苛立ったけれども、なんとか怒りの感情を抑え込んだ。そして、質問を続ける。

「それほどまでに、カールハインツ将軍の健康状態は悪かったのか?」
「戦場に出て戦うように命令されて、無理をして反乱軍と戦っていましたから」
「……」

 まるで、自分が悪いと言われているように感じるレナルド王子。だけど、命令したのは俺じゃない。部下の話を聞きながら、王子は思った。

「反乱軍との戦闘中は、指揮する兵士たちの前で気丈に振る舞い、なんでもない風を装っていたようです。その無理がたたって、一気に体調を崩してしまった。そして、そのまま……」
「クソッ!」

 カールハインツ将軍の問題については、全て部下に任せたはず。戦場へ出るように命令したのは、部下だ。つまり、こんな事態になってしまったのも全て部下の責任。報告を聞きながら、そう結論付けるレナルド王子。だから、何も気にしなかった。

 問題は、反乱軍の鎮圧をどうするのか。カールハインツ将軍の代わりを誰に任せるのか、頭を悩ませて考えるレナルド王子。

 もう一度、部下に任せるか。いいや、それで失敗して将軍が亡くなってしまった。役に立たない部下を頼ったら、もっと酷い状況になりそうだ。

 大失敗した部下に与える罰も考えないといけない。だが、ラクログダム王国が混乱している今は、処刑することは出来ない。全ての問題が一段落して落ち着いてから、部下に刑罰を与える。それまでは少しでも多く働かせて、役に立ってもらう。部下の問題は、後回しにする。

 王子は、カールハインツ将軍に対しても文句があった。死んでしまうまで無理するなんて。死人に対して言うのは酷だと理解しているが、一体誰が後始末をすることになるのか分かっているのだろうかと、文句を言ってやりたいと思ったレナルド王子。

 ラクログダム王国には現在、カールハインツ将軍の他に兵士たちを指揮することが出来る実力者は居なかった。王国の人材事情は、非常に厳しい。

 それでも、誰かを将軍に任命しないといけない。

「それから」
「……まだ、何かあるというのか?」

 部下の報告は、まだ続くらしい。考え込んでいたレナルド王子は、うんざりとした表情を隠しもせずに、次の報告を聞いた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

王太子に婚約破棄言い渡された公爵令嬢は、その場で処刑されそうです。

克全
恋愛
8話1万0357文字で完結済みです。 「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に投稿しています。 コーンウォリス公爵家に令嬢ルイ―ザは、王国の実権を握ろうとするロビンソン辺境伯家当主フランシスに操られる、王太子ルークのよって絶体絶命の危機に陥っていました。宰相を務める父上はもちろん、有能で忠誠心の豊かな有力貴族達が全員紛争国との調停に送られていました。万座の席で露骨な言い掛かりで付けられ、婚約を破棄されたばかりか人質にまでされそうになったルイ―ザ嬢は、命懸けで名誉を守る決意をしたのです。

聖なる森と月の乙女

小春日和
恋愛
ティアリーゼは皇太子であるアルフレッドの幼馴染で婚約者候補の1人。趣味である薬草を愛でつつ、アルフレッドを幸せにしてくれる、アルフレッドの唯一の人を探して、令嬢方の人間観察に励むことを趣味としている。 これは皇太子殿下の幸せ至上主義である公爵令嬢と、そんな公爵令嬢の手綱を握る皇太子殿下の恋物語。

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

【完結】金貨三枚から始まる運命の出会い~家族に虐げられてきた家出令嬢が田舎町で出会ったのは、SSランクイケメン冒険者でした~

夏芽空
恋愛
両親と妹に虐げられ続けてきたミレア・エルドール。 エルドール子爵家から出ていこうと思ったことは一度や二度ではないが、それでも彼女は家に居続けた。 それは、七年付き合っている大好きな婚約者と離れたくなかったからだ。 だがある日、婚約者に婚約破棄を言い渡されてしまう。 「君との婚約を解消させて欲しい。心から愛せる人を、僕は見つけたんだ」 婚約者の心から愛する人とは、ミレアの妹だった。 迷惑料として、金貨三枚。それだけ渡されて、ミレアは一方的に別れを告げられてしまう。 婚約破棄されたことで、家にいる理由を無くしたミレア。 家族と縁を切り、遠く離れた田舎街で生きて行くことを決めた。 その地でミレアは、冒険者のラルフと出会う。 彼との出会いが、ミレアの運命を大きく変えていくのだった。

逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます

黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。 ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。 目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが…… つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも? 短いお話を三話に分割してお届けします。 この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。

破滅した令嬢は時間が戻ったので、破滅しないよう動きます

天宮有
恋愛
 公爵令嬢の私リーゼは、破滅寸前だった。  伯爵令嬢のベネサの思い通り動いてしまい、婚約者のダーロス王子に婚約破棄を言い渡される。  その後――私は目を覚ますと1年前に戻っていて、今までの行動を後悔する。  ダーロス王子は今の時点でベネサのことを愛し、私を切り捨てようと考えていたようだ。  もうベネサの思い通りにはならないと、私は決意する。  破滅しないよう動くために、本来の未来とは違う生活を送ろうとしていた。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

処理中です...