上 下
24 / 46

第24話 俺と一緒に来てほしい

しおりを挟む
「どうして、私を?」
「カトリーヌと出会ってから、俺達の旅は順調なんだ。報奨金が手に入って、目的も果たせそうだ」

 一緒に来てほしいと言う理由を尋ねると、ラインヴァルトはそう答えた。真っ直ぐ私の目を見て。嘘は言っていないようだ。しかし。

「……それは、ただの偶然じゃないのでしょうか?」
「確かに偶然なのかもしれない。だけど俺は、カトリーヌが幸運の女神の加護を得た人物だと思っている。君が居てくれたおかげで、運に恵まれていると感じるんだ」
「そんな、幸運の女神の加護なんて……」

 ラフォン家からここまで連れてきてくれたゲオルグ達も、そう言ってくれた。私の幸運に助けられた者達だと名乗って。しかし、そんな事あり得るのだろうか。

 今まで、不幸の原因だと言われてきたような私が。

 私に幸運の女神の加護があるのだとしたら、なぜレナルド王子やラフォン家などに幸運が訪れなかったのか。そのせいで、ずっと彼らから不運を振りまく存在、なんて言われ続けてきたのに。

 そんな事を私が考えている間に、ラインヴァルトは続けて説明してくれた。

「俺達は今、とある予言に従って各地を巡っているんだ。世界を旅して、この王国のどこかに居る幸運の女神の加護を受けた人物を見つけ出して、自分たちの国に連れて帰るために」
「そう、だったのですか……」

 突然の話に戸惑う。予言とか、幸運の女神の加護とか。分からないことが多い。

「予言された、幸運の女神の加護を受けた人物というのは、君の事だと思う」
「なぜですか?」
「予言で伝えられた言葉。それから、俺の直感だ」
「直感……?」

 予言や直感なんかで判断するなんて。少しだけ、ラインヴァルトが疑わしくなってきた。もしかして、私は騙されているかもしれない。本当に彼のことを信じていいのだろうかしら。いや、信じたい。

「だから、どうか俺と一緒に来てほしい!」

 とても力強い言葉で求められた。そして、ラインヴァルトはスッと、私の目の前に手を差し伸べてくる。褐色の肌に筋肉のついた腕。男の力強さを感じる。金色の目でじっと見つめられた。すごく真剣な目だった。

 どうするべきか。決められない私は、使用人たちに視線を向ける。本当は、彼らに教会まで連れて行ってもらう予定だった。そこで私は保護してもらう計画があった。そちらを優先するべきなのかしら。

「お嬢様のなさりたいように。我々は、貴女についていきます」
「そう」

 執事のゲオルグが発した言葉に、メイドのマイユ達が頷く。ラインヴァルトと一緒に行ったとしても、彼らは私と共に来てくれるらしい。それは、かなり心強かった。

 どうするのか、判断は任された。ここでラインヴァルト達と別れるか、一緒に行くのか。



 私は少し考えてから、自分の気持ちに従ってラインヴァルトの手を取った。彼と、もうしばらく一緒に居たいと思ったから。

「よろしくおねがいします、ラインヴァルト様」
「うん。よろしく、カトリーヌ」

 もしも、今までのような運の悪い出来事が起きても、ラインヴァルトは私のことを責めないだろうと感じた。そういう信頼感があった。

 だから私は、ラインヴァルトと一緒に行くことを決めた。

 ラインヴァルトと握手する。私の握った手が、ギュッと握り返された。力強くて、頼りがいのある手。彼は、嬉しそうな笑顔を浮かべて歓迎してくれた。彼の顔を見るだけで、ホッと落ち着くような安心感に包まれる。

 これから私は、彼と一緒に行く。この判断は間違っていないと、そう思えた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

公爵令嬢が婚約破棄され、弟の天才魔導師が激怒した。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています

聖なる森と月の乙女

小春日和
恋愛
ティアリーゼは皇太子であるアルフレッドの幼馴染で婚約者候補の1人。趣味である薬草を愛でつつ、アルフレッドを幸せにしてくれる、アルフレッドの唯一の人を探して、令嬢方の人間観察に励むことを趣味としている。 これは皇太子殿下の幸せ至上主義である公爵令嬢と、そんな公爵令嬢の手綱を握る皇太子殿下の恋物語。

侯爵令嬢はデビュタントで婚約破棄され報復を決意する。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 第13回恋愛小説大賞に参加しています。応援投票・応援お気に入り登録お願いします。  王太子と婚約させられていた侯爵家令嬢アルフィンは、事もあろうに社交界デビューのデビュタントで、真実の愛を見つけたという王太子から婚約破棄を言い渡された。  本来自分が主役であるはずの、一生に一度の晴れの舞台で、大恥をかかされてしまった。  自分の誇りのためにも、家の名誉のためにも、報復を誓うのであった。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

【完結】金貨三枚から始まる運命の出会い~家族に虐げられてきた家出令嬢が田舎町で出会ったのは、SSランクイケメン冒険者でした~

夏芽空
恋愛
両親と妹に虐げられ続けてきたミレア・エルドール。 エルドール子爵家から出ていこうと思ったことは一度や二度ではないが、それでも彼女は家に居続けた。 それは、七年付き合っている大好きな婚約者と離れたくなかったからだ。 だがある日、婚約者に婚約破棄を言い渡されてしまう。 「君との婚約を解消させて欲しい。心から愛せる人を、僕は見つけたんだ」 婚約者の心から愛する人とは、ミレアの妹だった。 迷惑料として、金貨三枚。それだけ渡されて、ミレアは一方的に別れを告げられてしまう。 婚約破棄されたことで、家にいる理由を無くしたミレア。 家族と縁を切り、遠く離れた田舎街で生きて行くことを決めた。 その地でミレアは、冒険者のラルフと出会う。 彼との出会いが、ミレアの運命を大きく変えていくのだった。

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

処理中です...