俺の不運はお前が原因、と言われ続けて~婚約破棄された私には、幸運の女神の加護がありました~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
14 / 46

第14話 約束

しおりを挟む
「……くっ! 分かった。他の奴らは見逃してやる」

 リーダーの男が悩んだ結果、提案を受け入れた。私以外の者たちは、見逃してくれるらしい。これでゲオルグたちを助けることが出来そうだと、私は安心する。

「テメェら! 絶対に手ぇ出すんじゃねぇぞ」
「だけどよ、兄貴。見逃して良いのかよ」
「馬鹿野郎が! ラフォン家の娘だぞ。そいつの身代金だけで俺たちは、一生遊んで暮らせるぜ」

 おそらくラフォン家に身代金を要求しても、支払われることはないだろうと思う。だけど、大丈夫だろう。ゲオルグたちを逃したら、私は死ぬ気だった。支払われないと分かった時には、もう私は居ない。

 助けようとしてくれた人たちを、最期に助けてることが出来た。それだけで、私は満足だった。

「お嬢様、我々は、戦います……!」
「盗賊なんかに負けませんッ!」

 まだ、私のことを助けようとしてくれるマイユやケーテ。彼女たちだって怖いはずなのに、武装している盗賊に挑もうとしている。

「カトリーヌ様だけでも、逃げてください」
「俺達が、なんとしてでも囮になります。そのうちに」

 ゲオルグとタデウスも、私を助けることを諦めていない。必死になって、私を逃がす方法を考えてくれている。だけど、私は首を横に振った。

「ダメ! 私の命より、貴方達に生き残ってもらうのが優先よ」
「ですが!」
「お願い、逃げて……」
「ッ!」

 抗議するゲオルグに、逃げてくれとお願いする。

 悔しそうに表情を歪める執事と御者の男たち。泣きそうな顔のメイドたち。彼らが無事に生き残ってくれることを願う。

「さっさと、こっちへ来い!」
「はい」

 自分の首に突きつけていた弓矢を下ろして、リーダーの男の指示に従う。盗賊たちの居る方へ歩いていく。身柄を拘束されるのだろう。盗賊の男たちに近寄り、奴らの手が私の身体に触れようとした瞬間だった。

「おい! そいつらも絶対に逃がすなよ! 約束なんて、無しだ!」
「そんなッ!」

 約束は、あっさりと破られてしまった。彼らを信じるべきではなかった。

「やはり! お嬢様を助けるぞ!」
「おう!」
「お嬢様、逃げましょう!」
「私も戦うわ!」
「危ない! 皆、逃げて!」

 盗賊たちがゲオルグとタデウスに矢を向ける。射て殺すつもりだ。殺させない。

「駄目ッ!」
「うおっ!? なんだ、こいつ」
「おい、離せ。痛い目に遭うぞ」
「うぐっ!」
「お嬢様!」

 近くに居た男に体当りをして、少しでも彼らが逃げられるように時間を稼ぐ。髪の毛を引っ張られて痛むが、離さない。頭を殴られたが、邪魔をする。

 その時だった。

「ぐあっ!?」
「な、何事だ?」

 盗賊の1人が、うめき声を上げて地面に倒れた。それに慌てる、リーダーの男。

「戦うつもりの無い奴は、地面に伏せろッ! 襲われていた者たちも!」

 姿を見せない何者か、若い男の声が森の中に響き渡る。私は、その声の指示に従い地面に伏せた。誰か分からないが、指示に従ったほうが良いだろうと判断して。

「クソッ! 敵だ!」
「誰だ! 出てこいッ!」
「矢は、向こうから飛んできたぞ!」
「そこに隠れているのか!?」

 盗賊の男たちは突然の出来事に戸惑いながら、あちこちに視線を向けて声の正体を探す。必死になって、攻撃してきた人物を探し出そうとする。

「隠れてないで、出てこいッ!」

 だけど、見つけられないようだ。森の奥、木々の間から聞こえてくる声。正体は、まだ分からない。

 そしてまた、聞こえてくる正体不明の若い男性の声。

「斉射ッ!」
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

婚約破棄でかまいません!だから私に自由を下さい!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
第一皇太子のセヴラン殿下の誕生パーティーの真っ最中に、突然ノエリア令嬢に対する嫌がらせの濡れ衣を着せられたシリル。 シリルの話をろくに聞かないまま、婚約者だった第二皇太子ガイラスは婚約破棄を言い渡す。 その横にはたったいまシリルを陥れようとしているノエリア令嬢が並んでいた。 そんな2人の姿が思わず溢れた涙でどんどんぼやけていく……。 ざまぁ展開のハピエンです。

異母妹に婚約者の王太子を奪われ追放されました。国の守護龍がついて来てくれました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 「モドイド公爵家令嬢シャロン、不敬罪に婚約を破棄し追放刑とする」王太子は冷酷非情に言い放った。モドイド公爵家長女のシャロンは、半妹ジェスナに陥れられた。いや、家族全員に裏切られた。シャロンは先妻ロージーの子供だったが、ロージーはモドイド公爵の愛人だったイザベルに毒殺されていた。本当ならシャロンも殺されている所だったが、王家を乗っ取る心算だったモドイド公爵の手駒、道具として生かされていた。王太子だった第一王子ウイケルの婚約者にジェスナが、第二王子のエドワドにはシャロンが婚約者に選ばれていた。ウイケル王太子が毒殺されなければ、モドイド公爵の思い通りになっていた。だがウイケル王太子が毒殺されてしまった。どうしても王妃に成りたかったジェスナは、身体を張ってエドワドを籠絡し、エドワドにシャロンとの婚約を破棄させ、自分を婚約者に選ばせた。

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの
恋愛
 婚約者の第五王子フランツ殿下には好きな令嬢が出来たみたい。その令嬢とは男爵家の養女で親戚筋にあたり現在私のうちに住んでいる。  婚約者の私が邪魔になり、身分剥奪そして追放される事になる。陛下や両親が留守の間に王都から追放され、辺境の町へと行く事になった。  100キロ以内近寄るな。100キロといえばクレマン? そこに第三王子フェリクス殿下が来て“グレマン”へ行くようにと言う。クレマンと“グレマン”だと方向は真逆です。  追放と言われましたので、屋敷に帰り準備をします。フランツ殿下が王族として下した命令は自分勝手なものですから、陛下達が帰って来たらどうなるでしょう?

逆行令嬢の反撃~これから妹達に陥れられると知っているので、安全な自分の部屋に籠りつつ逆行前のお返しを行います~

柚木ゆず
恋愛
 妹ソフィ―、継母アンナ、婚約者シリルの3人に陥れられ、極刑を宣告されてしまった子爵家令嬢・セリア。  そんな彼女は執行前夜泣き疲れて眠り、次の日起きると――そこは、牢屋ではなく自分の部屋。セリアは3人の罠にはまってしまうその日に、戻っていたのでした。  こんな人達の思い通りにはさせないし、許せない。  逆行して3人の本心と企みを知っているセリアは、反撃を決意。そうとは知らない妹たち3人は、セリアに翻弄されてゆくことになるのでした――。 ※体調不良の影響で現在感想欄は閉じさせていただいております。 ※こちらは3年前に投稿させていただいたお話の改稿版(文章をすべて書き直し、ストーリーの一部を変更したもの)となっております。  1月29日追加。後日ざまぁの部分にストーリーを追加させていただきます。

王太子に婚約破棄言い渡された公爵令嬢は、その場で処刑されそうです。

克全
恋愛
8話1万0357文字で完結済みです。 「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に投稿しています。 コーンウォリス公爵家に令嬢ルイ―ザは、王国の実権を握ろうとするロビンソン辺境伯家当主フランシスに操られる、王太子ルークのよって絶体絶命の危機に陥っていました。宰相を務める父上はもちろん、有能で忠誠心の豊かな有力貴族達が全員紛争国との調停に送られていました。万座の席で露骨な言い掛かりで付けられ、婚約を破棄されたばかりか人質にまでされそうになったルイ―ザ嬢は、命懸けで名誉を守る決意をしたのです。

婚約破棄宣言は別の場所で改めてお願いします

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【どうやら私は婚約者に相当嫌われているらしい】 「おい!もうお前のような女はうんざりだ!今日こそ婚約破棄させて貰うぞ!」 私は今日も婚約者の王子様から婚約破棄宣言をされる。受け入れてもいいですが…どうせなら、然るべき場所で宣言して頂けますか? ※ 他サイトでも掲載しています

処理中です...