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第04話 報告
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レナルド王子から婚約関係を破棄された私は、馬車に乗って自宅へ帰る。
先程のことを、ラフォン家の当主であるお父様に報告しなければならない。何と言われるだろうか。報告した時のことを考えると、とても憂鬱だった。ラフォン家にも大きな影響を与える出来事だから。
この先、私はどうなるのだろうか。新しい婚約相手を探さないといけない。ただ、王家との婚約を破棄されてしまった私に相手が見つかるだろうか。かなり難しい、と思う。レナルド王子の元婚約者という経歴が、大きな障害になりそう。
レナルド王子から、王国から出ていくようにと言われていた。だから、他国の貴族との婚約を考えないといけないかもしれない。少なくとも、普通の貴族令嬢のような条件で結婚できるなんて考えないほうがよさそう。
その辺りを考えるのは、ラフォン家の当主であるお父様でしょう。また私は、家に迷惑をかけることになる。王家との婚約を破談にしてしまった時点で、大きな迷惑でしょうけれど。
馬車の窓から外を眺めつつ、そんな事を考える。すると、どんどん憂うつな気分になっていく。もっと上手く、やれなかったのか。
「はぁ……」
しばらく走っていた馬車が止まった。屋敷に到着したのね。御者が黙々と、馬車の扉を開けてくれたので降りる。そのままお父様のもとへ報告に向かう。
足取りは、かなり重い。
「なんということだ! お前は、殿下に何も抗議せず言われた通り、婚約を破棄する書類にサインしてしまったのか!?」
「はい、そうです」
お父様に報告すると、なぜか怒り出した。書類にサインするなんて信じられない、という感じで。事前に話し合いが行われていたんじゃないのかしら。
もしかして、レナルド王子の嘘だったのか。一瞬、そんな事を考えたが、違った。お父様は、別のことを期待していたようだ。
「なぜ婚約破棄を素直に受け入れた? 粘って反対しなかったのだ? ラフォン家のために、婚約を破棄されないように努力しなかったのか?」
「もう既に、話し合いが行われたと聞いています」
「確かに、殿下と話し合いを行った。その時に、婚約を破棄することも決まってしまった。だがお前は、殿下の婚約者として意見を言える立場にあっただろう? なぜ、そうしなかった? お前の力で、どうにかして婚約破棄は阻止するべきだった!」
私だって、レナルド王子に意見を言えるような立場じゃないだろう。無茶をすれば最悪の場合、ラフォン家の取り潰しだってあり得る。
私を責めるのなら、お父様にだって責任があるはず。話し合いの場を、婚約破棄を避ける方向に誘導できなかったのか。
そんな事を考えるけど、やっぱり言えない。ラフォン家では、当主であるお父様が一番に偉いのだから。私は、謝るしかない。
「……申し訳ありませんでした」
先程のことを、ラフォン家の当主であるお父様に報告しなければならない。何と言われるだろうか。報告した時のことを考えると、とても憂鬱だった。ラフォン家にも大きな影響を与える出来事だから。
この先、私はどうなるのだろうか。新しい婚約相手を探さないといけない。ただ、王家との婚約を破棄されてしまった私に相手が見つかるだろうか。かなり難しい、と思う。レナルド王子の元婚約者という経歴が、大きな障害になりそう。
レナルド王子から、王国から出ていくようにと言われていた。だから、他国の貴族との婚約を考えないといけないかもしれない。少なくとも、普通の貴族令嬢のような条件で結婚できるなんて考えないほうがよさそう。
その辺りを考えるのは、ラフォン家の当主であるお父様でしょう。また私は、家に迷惑をかけることになる。王家との婚約を破談にしてしまった時点で、大きな迷惑でしょうけれど。
馬車の窓から外を眺めつつ、そんな事を考える。すると、どんどん憂うつな気分になっていく。もっと上手く、やれなかったのか。
「はぁ……」
しばらく走っていた馬車が止まった。屋敷に到着したのね。御者が黙々と、馬車の扉を開けてくれたので降りる。そのままお父様のもとへ報告に向かう。
足取りは、かなり重い。
「なんということだ! お前は、殿下に何も抗議せず言われた通り、婚約を破棄する書類にサインしてしまったのか!?」
「はい、そうです」
お父様に報告すると、なぜか怒り出した。書類にサインするなんて信じられない、という感じで。事前に話し合いが行われていたんじゃないのかしら。
もしかして、レナルド王子の嘘だったのか。一瞬、そんな事を考えたが、違った。お父様は、別のことを期待していたようだ。
「なぜ婚約破棄を素直に受け入れた? 粘って反対しなかったのだ? ラフォン家のために、婚約を破棄されないように努力しなかったのか?」
「もう既に、話し合いが行われたと聞いています」
「確かに、殿下と話し合いを行った。その時に、婚約を破棄することも決まってしまった。だがお前は、殿下の婚約者として意見を言える立場にあっただろう? なぜ、そうしなかった? お前の力で、どうにかして婚約破棄は阻止するべきだった!」
私だって、レナルド王子に意見を言えるような立場じゃないだろう。無茶をすれば最悪の場合、ラフォン家の取り潰しだってあり得る。
私を責めるのなら、お父様にだって責任があるはず。話し合いの場を、婚約破棄を避ける方向に誘導できなかったのか。
そんな事を考えるけど、やっぱり言えない。ラフォン家では、当主であるお父様が一番に偉いのだから。私は、謝るしかない。
「……申し訳ありませんでした」
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