302 / 310
13周目(現代風あべこべ:野球監督)
第266-2話 ガチ泣き
しおりを挟む
本人は否定する。間違いなく、泣かせてしまった。でも、彼女との勝負で手を抜くわけにもいかないし。しばらく、彼女を慰める時間が続いた。
「楓は初めてやったのに、本当に凄いよ! 楓の投げる球は、本当に速かったし」
「でも、打たれた……」
「あれは、本当に偶然だよ。それに、楓もバットに当てたし」
「全然、飛ばなかった。理人の方が凄かった……」
「楓も、ちゃんと打ち方を覚えたら、すぐに飛ばせるようになるよ。俺なんかより、もっと遠くへ」
「……そうかな?」
「絶対、そうだよ!」
本気で褒めると、彼女は恥ずかしそうにしていた。機嫌も少しだけ直った。彼女の能力があれば、すぐに野球が上手くなると思う。
その後、3人で役割を交代しながら勝負を続けた。真琴が打ったり投げたり、楓がキャッチャーでボールを受けたり。俺も、楓と真琴の投げるボールを受け取った。
2人とも投げるボールの力が強くて、ミットで受けても手が痛くなるほどだった。
真琴は豪快なスイングで、楓は綺麗な投球フォーム。そんなボールを受けるのは、とても楽しくて。休憩を挟みながら、俺達は夕方になるまで遊び続けた。
「そろそろ、帰ろうか」
「うん。楽しかった。でも、悔しい」
「楓は凄いよ。最初のボールは打てたけど、後はダメだったから」
やっぱり最初の一打は偶然で、あの後はバットに当てるので精一杯だった。そう言っても、楓は納得していない表情。一度でも打たれたことが、よっぽど悔しいらしい。
「だけど、打たれた。それに、私はあんなに飛ばせなかった」
「泣いちゃうぐらいだもんね」
真琴がポツリと、そんなことを呟く。それを聞いていた楓が、真琴の頭を軽く叩いた。
「イテッ」
「泣いてない」
「えー、泣いてたよ」
「泣いてない!」
真琴に何度言われても、強く否定する楓。そんな彼女を見て、真琴はニヤニヤと笑っていた。ちょっとイジワル。
「ほら、喧嘩はダメだよ」
2人の間に入って止める。真琴は、ごめんごめんと簡単に謝罪していた。楓の方はというと、そっぽを向いて拗ねている。
今回の勝負は、本当に白熱した。今までにないぐらい真剣になり、ドキドキした。だからこそ、楓も感情が素直に出てしまったのだろう。
そんな真剣になれる野球に、楓と真琴は出会った。
その日から、放課後は3人で一緒に野球の練習をするようになった。キャッチボールして、バットを素振りしてから、打席勝負をする。
どうやって投げたら打たれないのか。どうやってバットを振ったら打てるのか。
野球に関する技術を勉強するため、色々な本を読んでみたり、テレビでプロ野球の試合を見てみたり。それを3人で共有して、練習に取り入れていく。全ては、3人の対決で勝つために。最初は、そうだった。
「私、ちょっと本気で野球をやってみる」
「楓がそう言うのなら、僕もやってみようかな」
「いいね。2人とも、頑張って。応援するよ」
次第に、楓と真琴はプロ野球の選手を目指すようになっていた。プロ野球の世界に入ることを目指す。そう誓い合い、日々練習に励んでいた。俺は、そんな2人の練習をサポートすることに。
彼女たちと一緒にプロの世界を目指したいとは思う。けれど、残念ながらこの世界には男性のプロ野球選手は1人も存在しない。その世界へ行くための道が存在しないのである。
その道を新たに開拓することも考えてみた。だが今回の俺は、プロの選手を目指す楓と真琴、幼馴染で大事な存在である2人を支えることに全力を注ぐと決めた。
「楓は初めてやったのに、本当に凄いよ! 楓の投げる球は、本当に速かったし」
「でも、打たれた……」
「あれは、本当に偶然だよ。それに、楓もバットに当てたし」
「全然、飛ばなかった。理人の方が凄かった……」
「楓も、ちゃんと打ち方を覚えたら、すぐに飛ばせるようになるよ。俺なんかより、もっと遠くへ」
「……そうかな?」
「絶対、そうだよ!」
本気で褒めると、彼女は恥ずかしそうにしていた。機嫌も少しだけ直った。彼女の能力があれば、すぐに野球が上手くなると思う。
その後、3人で役割を交代しながら勝負を続けた。真琴が打ったり投げたり、楓がキャッチャーでボールを受けたり。俺も、楓と真琴の投げるボールを受け取った。
2人とも投げるボールの力が強くて、ミットで受けても手が痛くなるほどだった。
真琴は豪快なスイングで、楓は綺麗な投球フォーム。そんなボールを受けるのは、とても楽しくて。休憩を挟みながら、俺達は夕方になるまで遊び続けた。
「そろそろ、帰ろうか」
「うん。楽しかった。でも、悔しい」
「楓は凄いよ。最初のボールは打てたけど、後はダメだったから」
やっぱり最初の一打は偶然で、あの後はバットに当てるので精一杯だった。そう言っても、楓は納得していない表情。一度でも打たれたことが、よっぽど悔しいらしい。
「だけど、打たれた。それに、私はあんなに飛ばせなかった」
「泣いちゃうぐらいだもんね」
真琴がポツリと、そんなことを呟く。それを聞いていた楓が、真琴の頭を軽く叩いた。
「イテッ」
「泣いてない」
「えー、泣いてたよ」
「泣いてない!」
真琴に何度言われても、強く否定する楓。そんな彼女を見て、真琴はニヤニヤと笑っていた。ちょっとイジワル。
「ほら、喧嘩はダメだよ」
2人の間に入って止める。真琴は、ごめんごめんと簡単に謝罪していた。楓の方はというと、そっぽを向いて拗ねている。
今回の勝負は、本当に白熱した。今までにないぐらい真剣になり、ドキドキした。だからこそ、楓も感情が素直に出てしまったのだろう。
そんな真剣になれる野球に、楓と真琴は出会った。
その日から、放課後は3人で一緒に野球の練習をするようになった。キャッチボールして、バットを素振りしてから、打席勝負をする。
どうやって投げたら打たれないのか。どうやってバットを振ったら打てるのか。
野球に関する技術を勉強するため、色々な本を読んでみたり、テレビでプロ野球の試合を見てみたり。それを3人で共有して、練習に取り入れていく。全ては、3人の対決で勝つために。最初は、そうだった。
「私、ちょっと本気で野球をやってみる」
「楓がそう言うのなら、僕もやってみようかな」
「いいね。2人とも、頑張って。応援するよ」
次第に、楓と真琴はプロ野球の選手を目指すようになっていた。プロ野球の世界に入ることを目指す。そう誓い合い、日々練習に励んでいた。俺は、そんな2人の練習をサポートすることに。
彼女たちと一緒にプロの世界を目指したいとは思う。けれど、残念ながらこの世界には男性のプロ野球選手は1人も存在しない。その世界へ行くための道が存在しないのである。
その道を新たに開拓することも考えてみた。だが今回の俺は、プロの選手を目指す楓と真琴、幼馴染で大事な存在である2人を支えることに全力を注ぐと決めた。
0
お気に入りに追加
225
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる