転生人生ごっちゃまぜ~数多の世界に転生を繰り返す、とある旅人のお話~

キョウキョウ

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13周目(現代風あべこべ:野球監督)

第266-2話 ガチ泣き

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 本人は否定する。間違いなく、泣かせてしまった。でも、彼女との勝負で手を抜くわけにもいかないし。しばらく、彼女を慰める時間が続いた。

「楓は初めてやったのに、本当に凄いよ! 楓の投げる球は、本当に速かったし」
「でも、打たれた……」
「あれは、本当に偶然だよ。それに、楓もバットに当てたし」
「全然、飛ばなかった。理人の方が凄かった……」
「楓も、ちゃんと打ち方を覚えたら、すぐに飛ばせるようになるよ。俺なんかより、もっと遠くへ」
「……そうかな?」
「絶対、そうだよ!」

 本気で褒めると、彼女は恥ずかしそうにしていた。機嫌も少しだけ直った。彼女の能力があれば、すぐに野球が上手くなると思う。

 その後、3人で役割を交代しながら勝負を続けた。真琴が打ったり投げたり、楓がキャッチャーでボールを受けたり。俺も、楓と真琴の投げるボールを受け取った。

 2人とも投げるボールの力が強くて、ミットで受けても手が痛くなるほどだった。

 真琴は豪快なスイングで、楓は綺麗な投球フォーム。そんなボールを受けるのは、とても楽しくて。休憩を挟みながら、俺達は夕方になるまで遊び続けた。

「そろそろ、帰ろうか」
「うん。楽しかった。でも、悔しい」
「楓は凄いよ。最初のボールは打てたけど、後はダメだったから」

 やっぱり最初の一打は偶然で、あの後はバットに当てるので精一杯だった。そう言っても、楓は納得していない表情。一度でも打たれたことが、よっぽど悔しいらしい。

「だけど、打たれた。それに、私はあんなに飛ばせなかった」
「泣いちゃうぐらいだもんね」

 真琴がポツリと、そんなことを呟く。それを聞いていた楓が、真琴の頭を軽く叩いた。

「イテッ」
「泣いてない」
「えー、泣いてたよ」
「泣いてない!」

 真琴に何度言われても、強く否定する楓。そんな彼女を見て、真琴はニヤニヤと笑っていた。ちょっとイジワル。

「ほら、喧嘩はダメだよ」

 2人の間に入って止める。真琴は、ごめんごめんと簡単に謝罪していた。楓の方はというと、そっぽを向いて拗ねている。

 今回の勝負は、本当に白熱した。今までにないぐらい真剣になり、ドキドキした。だからこそ、楓も感情が素直に出てしまったのだろう。

 そんな真剣になれる野球に、楓と真琴は出会った。

 その日から、放課後は3人で一緒に野球の練習をするようになった。キャッチボールして、バットを素振りしてから、打席勝負をする。

 どうやって投げたら打たれないのか。どうやってバットを振ったら打てるのか。

 野球に関する技術を勉強するため、色々な本を読んでみたり、テレビでプロ野球の試合を見てみたり。それを3人で共有して、練習に取り入れていく。全ては、3人の対決で勝つために。最初は、そうだった。

「私、ちょっと本気で野球をやってみる」
「楓がそう言うのなら、僕もやってみようかな」
「いいね。2人とも、頑張って。応援するよ」

 次第に、楓と真琴はプロ野球の選手を目指すようになっていた。プロ野球の世界に入ることを目指す。そう誓い合い、日々練習に励んでいた。俺は、そんな2人の練習をサポートすることに。

 彼女たちと一緒にプロの世界を目指したいとは思う。けれど、残念ながらこの世界には男性のプロ野球選手は1人も存在しない。その世界へ行くための道が存在しないのである。

 その道を新たに開拓することも考えてみた。だが今回の俺は、プロの選手を目指す楓と真琴、幼馴染で大事な存在である2人を支えることに全力を注ぐと決めた。
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