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12周目(異世界ファンタジー:錬金術師)
第248-2話 ノルニシスまで一人旅
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「あの山を超えたら王都までは、もうすぐだぁよ」
旅の間に仲良くなった、乗合馬車を操作する御者が山を指差して説明してくれる。特徴的な話し方をする、俺よりも年上のおじさんだ。
彼から色々と教えてもらい、王国についての理解を深めた。そのおじさんは王都で生まれ育ったそうだ。そして、御者として色々な土地を行き来してきた。ユノヘルの村しか知らない俺と違って、豊富な知識を持っている。
他愛もない話をしているだけでも、旅の退屈しのぎになった。俺が聞いて、彼が話してくれる。それで盛り上がる。
そんな彼の話によると王都のノルニシスまでは、もうすぐ到着するらしい。聞いた話では、あと1週間ぐらいかかると思っていたけど。
「え? もうすぐ?」
「そうだぁよ。あと、1週間ぐらいだぁよ」
と思ったら、まだまだだった。記憶していた通り、到着するまで1週間ぐらいあるそうだ。1週間を、もうすぐとは言わないかな。彼と俺とは、時間感覚に大きな違いがあるようだ。
そういう感覚の違いも、彼と楽しく会話が出来る理由なのかも。
「そんなに急いでも、損するだけだぁよ」
「損するかな?」
「うんうん。せっかくだから、馬車の旅は楽しまないといけないよぉ」
「うーん。なるほど」
急いでいる、というつもりはなかったけど。彼から見ると、先を急いでいるように見えたのかな。そうかもしれない。最初は馬車にも乗らずに、自分の足で目的地まで行こうと考えていたから。
おじさんの言う事は、もっともかもしれない。余裕を持って行動するのも、旅では大事かもね。そして、楽しむことも。
「王都で騎士になるんだぁろ? もうちょっと、余裕を持たないとぉ」
「いや、違いますよ。何度も説明しましたが、俺は錬金術師を目指して」
「ノルニシスにある学校は、とーっても厳しいんだよぉ。僕も昔、騎士を目指して色々と勉強したけどダメだったんだぁ」
「あ、はい」
彼には何度か繰り返し説明をしたのに、何故か俺は騎士になるために王都へ行くと思われていた。そして始まる御者のおじさんの自分語り。最初に聞いた時は面白いと思った。けれど、何度か繰り返し聞かされると少し面倒になってくる。
他の乗客たちは無視して、自由に過ごしたり休んでいる。誰も彼の話など聞いていない。その様子がなんだか、おかしかった。
「こう見えて、剣の腕はそこそこあったんだぁよ。でも、筆記試験がダメだったぁ」
「へぇ、そうなんだ。もう、その話は何度も聞いたけどね」
それでもお構いなしに、自分の過去について楽しそうに語る御者のおじさん。
誰の反応も無いとかわいそうだから、俺が相槌を打つ。まぁ、他にやることもないぐらい暇だから仕方がないのかな。御者は、こうやって長い距離を馬車を操りながら人を運んでいるのか。だとすると、とても大変な仕事だろう。
「あ、おじさん。ちょっと急いだほうがいいかも。モンスターが近づいてきてる」
「そりゃ、本当かい? それなら、急ぐよぉ」
今のままのスピードで進むと、ちょうど森から通り道にまで出てくるモンスターと遭遇してしまいそうな位置だった。事前に察知した情報をおじさんに伝えると、俺の言葉を信じて馬車のスピードを上げる。
「これでぇ、どうだぁ?」
「うん。今回も大丈夫そう。モンスターは、あそこに居るな」
「居る? 僕には見えないなぁ。でも、リヒトが言うならぁ間違いない!」
これまでに、モンスターとは何度も遭遇しそうになっていた。厄介だから、何とか避けて通りたい。そう思った俺のアドバイスによって、今のところ難なく逃げ切ることが出来ていた。御者のおじさんは、俺のことを信頼してくれていた。報告と助言を聞いて、モンスターと遭遇せずに切り抜ける。
おじさんも手綱を巧みにさばき馬をコントロールして、上手くモンスターとの遭遇を避けながら、安全なルートを選んで前へ進むことが出来ていた。
「やっぱぁりリヒトは、腕の良い騎士になれるよぉ。僕が保証するぅよ!」
「いや、だから俺は錬金術師を目指しているんだって」
「応援しているぅよ。立派な騎士になれるよう、頑張ってねぇ」
「いや、俺の話ちゃんと聞いてる?」
「そろそろ、馬を休めてあげよぉう。馬車のスピードを落とすねぇ」
「あー、うん。それでいいよ」
やはり御者のおじさんは緊急時以外、あまり人の話を聞いていないようだった。
旅の間に仲良くなった、乗合馬車を操作する御者が山を指差して説明してくれる。特徴的な話し方をする、俺よりも年上のおじさんだ。
彼から色々と教えてもらい、王国についての理解を深めた。そのおじさんは王都で生まれ育ったそうだ。そして、御者として色々な土地を行き来してきた。ユノヘルの村しか知らない俺と違って、豊富な知識を持っている。
他愛もない話をしているだけでも、旅の退屈しのぎになった。俺が聞いて、彼が話してくれる。それで盛り上がる。
そんな彼の話によると王都のノルニシスまでは、もうすぐ到着するらしい。聞いた話では、あと1週間ぐらいかかると思っていたけど。
「え? もうすぐ?」
「そうだぁよ。あと、1週間ぐらいだぁよ」
と思ったら、まだまだだった。記憶していた通り、到着するまで1週間ぐらいあるそうだ。1週間を、もうすぐとは言わないかな。彼と俺とは、時間感覚に大きな違いがあるようだ。
そういう感覚の違いも、彼と楽しく会話が出来る理由なのかも。
「そんなに急いでも、損するだけだぁよ」
「損するかな?」
「うんうん。せっかくだから、馬車の旅は楽しまないといけないよぉ」
「うーん。なるほど」
急いでいる、というつもりはなかったけど。彼から見ると、先を急いでいるように見えたのかな。そうかもしれない。最初は馬車にも乗らずに、自分の足で目的地まで行こうと考えていたから。
おじさんの言う事は、もっともかもしれない。余裕を持って行動するのも、旅では大事かもね。そして、楽しむことも。
「王都で騎士になるんだぁろ? もうちょっと、余裕を持たないとぉ」
「いや、違いますよ。何度も説明しましたが、俺は錬金術師を目指して」
「ノルニシスにある学校は、とーっても厳しいんだよぉ。僕も昔、騎士を目指して色々と勉強したけどダメだったんだぁ」
「あ、はい」
彼には何度か繰り返し説明をしたのに、何故か俺は騎士になるために王都へ行くと思われていた。そして始まる御者のおじさんの自分語り。最初に聞いた時は面白いと思った。けれど、何度か繰り返し聞かされると少し面倒になってくる。
他の乗客たちは無視して、自由に過ごしたり休んでいる。誰も彼の話など聞いていない。その様子がなんだか、おかしかった。
「こう見えて、剣の腕はそこそこあったんだぁよ。でも、筆記試験がダメだったぁ」
「へぇ、そうなんだ。もう、その話は何度も聞いたけどね」
それでもお構いなしに、自分の過去について楽しそうに語る御者のおじさん。
誰の反応も無いとかわいそうだから、俺が相槌を打つ。まぁ、他にやることもないぐらい暇だから仕方がないのかな。御者は、こうやって長い距離を馬車を操りながら人を運んでいるのか。だとすると、とても大変な仕事だろう。
「あ、おじさん。ちょっと急いだほうがいいかも。モンスターが近づいてきてる」
「そりゃ、本当かい? それなら、急ぐよぉ」
今のままのスピードで進むと、ちょうど森から通り道にまで出てくるモンスターと遭遇してしまいそうな位置だった。事前に察知した情報をおじさんに伝えると、俺の言葉を信じて馬車のスピードを上げる。
「これでぇ、どうだぁ?」
「うん。今回も大丈夫そう。モンスターは、あそこに居るな」
「居る? 僕には見えないなぁ。でも、リヒトが言うならぁ間違いない!」
これまでに、モンスターとは何度も遭遇しそうになっていた。厄介だから、何とか避けて通りたい。そう思った俺のアドバイスによって、今のところ難なく逃げ切ることが出来ていた。御者のおじさんは、俺のことを信頼してくれていた。報告と助言を聞いて、モンスターと遭遇せずに切り抜ける。
おじさんも手綱を巧みにさばき馬をコントロールして、上手くモンスターとの遭遇を避けながら、安全なルートを選んで前へ進むことが出来ていた。
「やっぱぁりリヒトは、腕の良い騎士になれるよぉ。僕が保証するぅよ!」
「いや、だから俺は錬金術師を目指しているんだって」
「応援しているぅよ。立派な騎士になれるよう、頑張ってねぇ」
「いや、俺の話ちゃんと聞いてる?」
「そろそろ、馬を休めてあげよぉう。馬車のスピードを落とすねぇ」
「あー、うん。それでいいよ」
やはり御者のおじさんは緊急時以外、あまり人の話を聞いていないようだった。
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