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12周目(異世界ファンタジー:錬金術師)

第245-2話 研究室を訪ねてきた人

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「どうぞ、お茶です」
「あら、ありがとう」

 メガネの女性を研究室内に置いてあるテーブルに座らせると、飲み物の紅茶も出してもてなす。それで、ちょっと手持ち無沙汰になってしまった。

 研究室には俺と彼女の2人だけ。お客さんを待たせている状況だが、錬金の続きをしようかどうか迷う。あのまま錬金液を放置すると、品質が下がってしまうんだけどなぁ。でも、彼女を無視して錬金を続けるのもなぁ。

 どういう人物なのか、おばあちゃんとの関係も分からないので警戒は必要だろう。だから、視線は向けたままでいる。見た感じ、悪い人ではないと思うが念のために。

 もうちょっと待ったら、おばあちゃんが帰ってくるだろうから。俺は、静かにして待機しておこうかな。

「あら、おいしい」

 紅茶を一口飲んで、メガネの女性はそう感想を漏らした。自己紹介とかしたほうが良いのかな。口を開こうとした時、研究室の扉が開いた。

 おばあちゃんが帰ってきたようだ。

「戻ったぞ」
「おかえりなさい、おばあちゃん。お客さんが来てるよ」
「客? 誰じゃ?」

 研究室に戻ってきたおばあちゃんにすぐさま、お客さんが来ていることを伝える。誰か知らないらしい。事前に会う約束などは、していなかったようだ。

「お久しぶりです、マルグレット様」

 座っていた椅子から立ち上がって、ゆっくりとお辞儀をする客人。おばあちゃんに対して、とても敬意を感じる丁寧さだった。

「なんじゃ、お前か」
「知り合い?」

 客人の顔を見てすぐに納得したおばあちゃん。知り合いのようだけど、俺は誰だか知らない。

「私の名は、マデリーネと申します。今は、ノルニシスにある錬金学園の学長を務めております」

 俺の呟いた疑問に答えてくれたのは、メガネを掛けた女性。名前はマデリーネさんというらしい。錬金学園の学長だと聞いて、驚いた。

 見た目が立派だったから、何かしらすごい人なんだろうなと思っていた。けれど、そんなに偉い人だったとは。まだ若そうなのに、学園を取り仕切っているらしい。

 ノルニシスって、確か王都の名前だったはず。ユノヘルの村から遠く離れた場所にある栄えた街。王都にある錬金学園ということは、かなり大きな学園だと思うけど。俺の目の前にいる若い女性が、そこの学長ということ?

 そんな人が、どうしておばあちゃんに会いに来たのだろうか。マデリーネさんが、ユノヘルの村まで来た目的が気になった。おばあちゃんもそこが気になったようで、面倒くさそうな表情で尋ねていた。

「それで、わしに何の用だ?」
「マルグレット様には、ノルニシスで錬金術について教えて頂きたいと思いまして。先生として、来季から錬金学園に来ていただけませんか?」

 マデリーネさんは、単刀直入に会いに来た目的を伝える。おばあちゃんを錬金術の先生としてスカウトしに来たという。王都にある学園の先生に迎えようと考えているらしい。これは、凄いことなんじゃないだろうか。

 俺は2人の会話を邪魔しないように口を閉じて、静かに横で見ていた。
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