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10周目(異世界ファンタジー:女神転生)
第205話 発見できない武器
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「まだ、見つからないのか?」
「はい。申し訳ありません」
テーブルを間に挟んで、会話をするレオナルトとパスクオラル。魔王を倒すために必要だという武器が発見できないという。申し訳なさそうな顔で報告する2人。
「こっちは、もう捜索したのかしら?」
「はい、既に。ここも昨日、確認しました。残念ながら、何も発見できていません」
「そう……」
テーブルの上に広げた全域が塗りつぶされているマップを指差して確認しながら、一つ一つを確かめていくナディーヌとシルヴィア。実際にその場所に行って、調査が完了した場所を塗りつぶしている。既に地図は真っ黒になっていて、全域を見回ったはず。見落としもない。それなのに、目的の武器は見つからなかったという。
「彼ら、なかなか大変そうだな」
「グルゥゥゥゥ」
彼らの話し合いを、少し離れた場所から椅子に座って眺めていた。すぐそばには、地面に横になって身体を休めているリヴがいる。俺が頭を撫でてやると、喜ぶような声で鳴いていた。
関係者ではない俺たちは、彼らの会議には参加せずに見守っている。拠点の滞在を許可したり、食事を用意してあげたり、武器の捜索を手伝ったり。色々と手助けしてあげたけれど、結局俺たちは部外者である。仲間になるつもりはない。なので、彼らの会議にも参加しない。見ているだけ。
シルヴィアとパスクオラルの2人が調査をするために森の中へ入るたびに、リヴも同行して彼らに襲いかかってくるモンターを追い払って護衛していた。道案内なども務めていたようだ。
森に慣れたリヴが同行してくれたおかげで、調査がものすごく捗ったと2人からは感謝された。勝手知ったる場所ということもあり、リヴはかなり頼りにされていた。
それでもまだ、魔王を倒すために必要な武器というのは見つかっていないらしい。
なにか助言できれば良いのだけれど、この森で数年過ごしてきた俺も今までにそれらしい物を見た記憶が無かった。それなりに凄い武器ならば、魔力で感知したりすることもある。けれど、それも感じなかった。
魔王を倒すために必要な武器というのは、本当に存在するのだろうか。もう既に、誰かが持ち去った後なのでは。もしくは、予言が間違っているのではないか。色々と疑念が湧いてくる。
俺の考えと同じように、疑いを持っていたらしいレオナルトが3人に問いかける。
「予言は、本当なのか?」
「ヴィシューパ国が大枚をはたいて用意した何十人かの予言者たちが、オプスクの森で間違いがないと証言していたはず。だけど……」
この森に武器を探しに来るキッカケとなった予言に間違いはないはず。そう答えるナディーヌの表情は暗かった。彼女もまた、何日も創作を続けているのに手がかりすら見つからない現状に、疑問を抱いているようだ。
この世界には、魔力が存在している。その力を上手く扱えば未来の事象を観測することも可能ではあるらしい。そういう技術は、たしかに存在している。だけど、その未来は確定したものではない。未来の観測が当たる確率は、それほど高くない。
そもそも、予言は本当なのか。
もしかしたら、嘘の情報かもしれない。王家から疎まれている存在らしい彼女たちは、無駄足を踏ませられたのか。この森に生息する魔物の強さは王国内でも有名で、それなりに知れ渡っている。そんな場所に送り込まれたということは、任務の失敗に見せかけて始末しようという魂胆だったのかも。
捜索に来た当初、全滅の危機に襲われていた。俺が助けに入らなければ、あの時点で終わっていた可能性もあるだろう。
人類の危機だというのに、王国内には自分たちの地位や権力を守ることしか考えていない貴族連中も多いという。大変な世界だな。
「うーん」
もちろん、単純に予言が間違っている、という可能性も大いにある。その場合は、手詰まりだ。武器を捜索するべき場所が間違っている。それなら、どこを探せばいいのか。もう、わからない。4人は渋い表情を浮かべて唸っている。
「どうしましょうか?」
シルヴィアは不安そうな表情を浮かべて、ナディーヌに尋ねた。これから我々は、どう動くべきなのか問いかける。
パーティーのリーダーである彼女が、どうするのか判断を求められた。まだ捜索を続けるか、それとも諦めるのか。判断するためには疑念が多すぎて、情報が少なすぎる。
目を閉じ、顎に手を当てながら考えるナディーヌ。彼女は、どうするのだろうか。これだけ探して見つからないのなら、諦めたほうがよさそうではある。部外者である俺は口を挟まずに、彼女たちが判断する様子を傍から見ていた。さて、どっちかな。それとも、全く違う方法を思いつくのか。これまでとは別の新たな選択肢があれば、聞いてみたいな。
当事者ではない俺は、そんなことを暢気に考えていた。
「ナディ、武器の捜索については諦めよう。もう、それほど時間の余裕も無いだろ。存在するのかどうかも分からない武器を探すよりも今は、戦いの準備で出来ることに集中するのが大事だと思う」
「……そうね」
決断を下せず、深く悩んでいるナディーヌにレオナルトが手助けするように自分の意見を伝えた。閉じていた目を開いて、彼女は同意した。そして、判断を下す。
「武器の捜索は中止。私たちは魔王の復活を阻止するためにも、今から急いで王都に帰還し、全力で備えるわよ」
「おう!」「それで、いきましょう!」「わかりました」
武器の捜索は、きっぱりと諦めることにしたようだ。やはり、そうなったか。
ナディーヌはチームのリーダーらしく思い切って、今後の方針をバシッと決める。彼女には決断力があった。方針が定まったことによって、みんなが一致団結する。
彼女たちの判断が成功に向かう道であるようにと、口には出さずに俺は祈った。
「はい。申し訳ありません」
テーブルを間に挟んで、会話をするレオナルトとパスクオラル。魔王を倒すために必要だという武器が発見できないという。申し訳なさそうな顔で報告する2人。
「こっちは、もう捜索したのかしら?」
「はい、既に。ここも昨日、確認しました。残念ながら、何も発見できていません」
「そう……」
テーブルの上に広げた全域が塗りつぶされているマップを指差して確認しながら、一つ一つを確かめていくナディーヌとシルヴィア。実際にその場所に行って、調査が完了した場所を塗りつぶしている。既に地図は真っ黒になっていて、全域を見回ったはず。見落としもない。それなのに、目的の武器は見つからなかったという。
「彼ら、なかなか大変そうだな」
「グルゥゥゥゥ」
彼らの話し合いを、少し離れた場所から椅子に座って眺めていた。すぐそばには、地面に横になって身体を休めているリヴがいる。俺が頭を撫でてやると、喜ぶような声で鳴いていた。
関係者ではない俺たちは、彼らの会議には参加せずに見守っている。拠点の滞在を許可したり、食事を用意してあげたり、武器の捜索を手伝ったり。色々と手助けしてあげたけれど、結局俺たちは部外者である。仲間になるつもりはない。なので、彼らの会議にも参加しない。見ているだけ。
シルヴィアとパスクオラルの2人が調査をするために森の中へ入るたびに、リヴも同行して彼らに襲いかかってくるモンターを追い払って護衛していた。道案内なども務めていたようだ。
森に慣れたリヴが同行してくれたおかげで、調査がものすごく捗ったと2人からは感謝された。勝手知ったる場所ということもあり、リヴはかなり頼りにされていた。
それでもまだ、魔王を倒すために必要な武器というのは見つかっていないらしい。
なにか助言できれば良いのだけれど、この森で数年過ごしてきた俺も今までにそれらしい物を見た記憶が無かった。それなりに凄い武器ならば、魔力で感知したりすることもある。けれど、それも感じなかった。
魔王を倒すために必要な武器というのは、本当に存在するのだろうか。もう既に、誰かが持ち去った後なのでは。もしくは、予言が間違っているのではないか。色々と疑念が湧いてくる。
俺の考えと同じように、疑いを持っていたらしいレオナルトが3人に問いかける。
「予言は、本当なのか?」
「ヴィシューパ国が大枚をはたいて用意した何十人かの予言者たちが、オプスクの森で間違いがないと証言していたはず。だけど……」
この森に武器を探しに来るキッカケとなった予言に間違いはないはず。そう答えるナディーヌの表情は暗かった。彼女もまた、何日も創作を続けているのに手がかりすら見つからない現状に、疑問を抱いているようだ。
この世界には、魔力が存在している。その力を上手く扱えば未来の事象を観測することも可能ではあるらしい。そういう技術は、たしかに存在している。だけど、その未来は確定したものではない。未来の観測が当たる確率は、それほど高くない。
そもそも、予言は本当なのか。
もしかしたら、嘘の情報かもしれない。王家から疎まれている存在らしい彼女たちは、無駄足を踏ませられたのか。この森に生息する魔物の強さは王国内でも有名で、それなりに知れ渡っている。そんな場所に送り込まれたということは、任務の失敗に見せかけて始末しようという魂胆だったのかも。
捜索に来た当初、全滅の危機に襲われていた。俺が助けに入らなければ、あの時点で終わっていた可能性もあるだろう。
人類の危機だというのに、王国内には自分たちの地位や権力を守ることしか考えていない貴族連中も多いという。大変な世界だな。
「うーん」
もちろん、単純に予言が間違っている、という可能性も大いにある。その場合は、手詰まりだ。武器を捜索するべき場所が間違っている。それなら、どこを探せばいいのか。もう、わからない。4人は渋い表情を浮かべて唸っている。
「どうしましょうか?」
シルヴィアは不安そうな表情を浮かべて、ナディーヌに尋ねた。これから我々は、どう動くべきなのか問いかける。
パーティーのリーダーである彼女が、どうするのか判断を求められた。まだ捜索を続けるか、それとも諦めるのか。判断するためには疑念が多すぎて、情報が少なすぎる。
目を閉じ、顎に手を当てながら考えるナディーヌ。彼女は、どうするのだろうか。これだけ探して見つからないのなら、諦めたほうがよさそうではある。部外者である俺は口を挟まずに、彼女たちが判断する様子を傍から見ていた。さて、どっちかな。それとも、全く違う方法を思いつくのか。これまでとは別の新たな選択肢があれば、聞いてみたいな。
当事者ではない俺は、そんなことを暢気に考えていた。
「ナディ、武器の捜索については諦めよう。もう、それほど時間の余裕も無いだろ。存在するのかどうかも分からない武器を探すよりも今は、戦いの準備で出来ることに集中するのが大事だと思う」
「……そうね」
決断を下せず、深く悩んでいるナディーヌにレオナルトが手助けするように自分の意見を伝えた。閉じていた目を開いて、彼女は同意した。そして、判断を下す。
「武器の捜索は中止。私たちは魔王の復活を阻止するためにも、今から急いで王都に帰還し、全力で備えるわよ」
「おう!」「それで、いきましょう!」「わかりました」
武器の捜索は、きっぱりと諦めることにしたようだ。やはり、そうなったか。
ナディーヌはチームのリーダーらしく思い切って、今後の方針をバシッと決める。彼女には決断力があった。方針が定まったことによって、みんなが一致団結する。
彼女たちの判断が成功に向かう道であるようにと、口には出さずに俺は祈った。
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