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10周目(異世界ファンタジー:女神転生)

第195話 試行錯誤の日々

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「ふぁー。今日の天気は、晴れか。絶好の作業日和だな」

 朝、目が覚めるとまずはテントから出て、空を見上げて様子を確認する。

 雲ひとつない青空で、一日ずっと晴れていそうな天気だった。この辺りの土地は突然、状況が一変して大雨が降ることも多い。だけど今日は、そんなことになるような予感は無い。ただの勘だけど、なかなか当たる俺の天気予想だった。

「おはよう、リヴ」
「ワウッ!」

 テントから出ると待ち構えていたリヴに朝の挨拶をしながら、テントのすぐそばに置いてあるツボに貯めておいた冷えた水で俺は顔を洗う。昨日のうちに、近くの川で汲んでおいたものだ。

「よし、スッキリした」

 アイテムボックスから1枚の布を取り出して、顔を拭いたら快適な目覚めだった。今日も1日、とても良い日になりそうだと感じる。

「体調は、……うん。バッチリかな」

 目覚めたら次に、朝の習慣となっている体調の確認を行う。身体はダルくないか。熱は出ていないか。五感に異常はないか、しっかりと身体が発する声に耳を傾ける。ちょっとでも身体の調子が悪そうだと察知したら、1日じっくり休むこともあった。

 しかし今日は、万全の体調である。問題はない。

 人里離れた場所で生活しているので、体調が悪くなっても診てもらったり看病してくれるような人間は居ない。誰かに頼ることなく、自分で全てを解決していく必要があった。病で倒れたりして面倒なことになる前に、予防をしっかりとしておく。

「リヴも、調子が良さそうだね」
「ワウワウッ!」

 自分の身体だけでなく、リヴの調子についても一緒に確認しておく。

 目元や口、全身真っ白で立派な毛並みなどじっくりと確認していく。俺には獣医の知識はないけれど、なるべく異常を見逃さないよう注意して診ていた。昨日と比べて、特に変わった様子は見当たらない。とても元気そうだ。

 リヴが元気を失くしたり体調を悪くしているという様子を、今まで一度も見たことはなかった。女神から授かった神獣だから、特別な体質なのかもしれない。体調不良になることもなさそうかな。けれど念の為、俺と一緒にリヴの体調を管理する習慣はずっと続けている。

「飯を食おうか」
「グルルルッ!」

 周りに木々が生い茂っている森の中、地面の上に座り昨晩のうちに用意しておいた料理を取り出す。アイテムボックスに収納していたので出来たてホヤホヤのまま保存してあった朝食を、朝一番に楽しむ。

「ほら、リヴの分」
「ワウッ!」

 リヴの目の前には獣の生肉を置く。これも昨日、森の中に入ったときに狩って保管しておいた新鮮な獲物の肉である。

 俺とリヴは横に並んで一緒に朝飯を楽しんだ。特に会話もなく、黙々とした時間が流れて朝食の時間はすぐに終わる。腹を満たして、しばらく満足感に浸った。

 それが終わったら気持ちを切り替えて、作業開始。

「さて。今日もやるか」
「ウワウッ!」

 住処にするための家造りを始める。実を言うと、あまり順調ではない。俺は何度も様々な人生を繰り返してきたけれども、ちゃんとした一軒家を建てるのは初めてだ。ずっと以前に一度だけ、小屋ぐらいは建てたことがあった。けれども、大工のような職人としての経験や知識はない。

 何度も人生を繰り返しても、やはりまだまだ俺の知らないことは多い。普通の人と比べたら多くの経験を積んで、色々と知っているだろうけれども。

 見様見真似と、今までの経験で学んできた様々な知識を最大限に活用し、なんとか2階建ての家を建てようとチャレンジしていた。

 見てくれは、なかなか良さそうである。外観は、ちゃんと人が住む家には見える。しかし、数日過ごしてみて色々と問題が発生した。

 天井から雨漏りはするし、あちこちから隙間風が吹いている。歩くたびギシギシと壁や床が鳴っていた。柱と梁がちゃんとしていなかったから、すぐに倒壊する危険もありそうだった。この中で過ごすだけで、ずっと危機感を抱くようなものが完成してしまった。失敗である。

 最初に建ててみた家は、失敗だったと認めざるを得ない完成度。けれども、色々と学べることも多かった。いきなり2階建ての一軒家なんて無茶をしたけれど、多少は建築について理解することが出来たし、改善点をいくつも見つけることが出来た。

 初めての建築で失敗してしまった、その経験は無駄ではない。次に活かせるから。

 3ヶ月ほど掛けて創り上げた最初の家は跡形もなくキレイに解体した。そしてまたすぐに、その木材を使って新しい家を建てるのに挑戦。今度こそ成功を目指して。

 失敗を活かして、今度は2階建ての大きくて理想とする家ではなく、まずは小屋を建てることから始めることにした。小さな目標を立てて、それを成功させよう。前に建築した時のことを思い出しながら。小さくても人が住める場所を作って、その後にちゃんとした一軒家を建てることに挑戦する。そんな予定に変更する。

「リヴ、ここを手伝ってくれ」
「ワウ」

 器用に口で木材をくわえたリブにも助けてもらいながら、1人と1頭で協力をして小屋を建てていく。建物を支えるための柱を立て、横たわって支える柱で補強する。屋根をかけて外壁が完成したら、床を張る。

 もうすぐ完成する予定の、ちょっと豪華な小屋。

「さて。今日は、このへんで建築作業は終わりかな」
「ワウ」

 まだ完成ではない。時間はたっぷりとあるので、作業を一気に進めることは可能だけれど、ペースを保ちながら余裕を持って小屋を建てていく。慌てない慌てない。

 この家造りは趣味のようなもので仕事でもなんでもないから、特に急ぐ必要もないのである。



「午後からは森の中に入って、戦闘訓練でもしようか」
「ワウッ!」

 午前中ずっと家を建てる作業を進めたので、午後から森の中で身体を動かしたいと思った。リヴと一緒に森へ入ろう。提案すると、リヴは嬉しそうに返事をした。

 住むための家を作るだけの日々ではなく、森の中に入ってトレーニングやら周辺の探索、畑を耕して作物を育てて食料を増やしたり、森に生息している獣を狩って肉を採ったり。毎日やることは色々とあった。

 世間との関係を遮断して、煩わされることもなく。自分の思うまま、暮らせている毎日だった。
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