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9周目(現代ファンタジー:ダンジョン)
第175話 世界各地のダンジョンへ
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「ふぃー、疲れた。ようやく到着か」
「無事に戻ってこれた」
「さっさと休みたい」
「お疲れさま! みんな、無事で良かったね」
地上まで何事もなく無事に戻ってきた俺達は、ダンジョン最下層へ到達した結果の報告書をまとめると政府に提出した。ダンジョン内部の調査結果について、最下層に辿り着くまでに進んできたルートの記録、途中で遭遇したモンスターとの戦闘報告、既に使用済みで効果を失った宝玉を政府機関に提出した。記録したデータや回収した品々は大切に保管されるか、研究所に送られることになる。
今回のダンジョン攻略は無事に終わった、と思っていたら俺たちの提出した情報の確認が何度か繰り返し行われた。まぁ、仕方ないか。ダンジョン最下層に辿り着けるような迷宮探索士パーティーは俺達ぐらいしか居ないから。日本だけでなく世界にもダンジョン最下層にまで辿り着ける実力の持ち主は居ない。だから、騒ぎになった。
報告した情報についても、色々と再確認される。わざわざ説明会を開き、お偉方に向けてダンジョン攻略について解説を行ったりした。
色々と再確認された時、宝玉を使ってどんな願いを叶えたのか質問された。当然の疑問だろう。
気になるのは、よく分かる。そして俺は、過去の記憶を引き出したことについてを説明した。しかし、具体的にどんな記憶なのか、それについては話せないと告げる。プライバシーに関わる質問だからと言って回答を拒否した。すると向こうも、意外と簡単に引き下がってくれた。
今回のダンジョン攻略の結果報告について強制ではなく、義務でもなかったから。質問されたことも、無理に答える必要はないらしい。
宝玉の願いについて説明するとなると、俺やネコが転生者であるということやら、転生についてを教える必要があった。周辺が騒がしくなっている現状で、これ以上の面倒は避けておきたい。見知らぬ他人に過去を知られたくもないので、追求されずに助かった。
数百年ぶりにダンジョン最下層へ到達した、歴史に名を残す迷宮探索士たち。そう言って、マスコミが大々的に騒いでいた。各方面から俺たちに、沢山のインタビュー申し込みが殺到する。
面倒だったけど、いくつかインタビューを受けていく。パーティーリーダーとしてみんなを代表し、主に俺がマスコミ対応を行った。
ダンジョン最下層の到達と、効果を失った宝玉の残骸を地上へ持って帰ってきた。その偉業を達成した者たちとして、最初はちやほやされていた。だけど徐々に対応は雑に、インタビュアーからの失礼な質問も増えて、面倒な受け答えが多くなった。
それでも、過去の経験から穏便に済ませようと冷静に受け答えする。
「数百年もの間、誰もが辿り着けなかったはずの最下層に、あなた達のパーティーはどうやって辿り着いたのでしょうか?」
「本当に、たどり着いたのですか? もしかして、何かの勘違いでは?」
「その証拠を、ぜひ見せてくださいよ」
「こんな、変哲のない土壁のエリアが、本当に最下層なんですか?」
「宝玉を使って過去の記憶を取り戻したそうですが、もったいなくないですか?」
「本当に、そんなくだらないことに宝玉を使ってしまったのですか?」
「実際のところ、宝玉を手にして一体どんな願い事を叶えたのですか?」
「地位や名誉、金などを望んだんじゃありませんか? その事実を隠してるんじゃ」
「どうやって、ソレだけの実力を手に入れたのでしょうか?」
「過去に学校で問題を起こしたそうですが、詳しく教えてもらえますか!?」
こんなふうな質問を、幾度となく繰り返された。俺が答えるまでずっと。そして、インタビューたちが望む言葉を引き出すまで何度でも。
特に、俺が宝玉に願ったことに関して何度もしつこく聞いてきた。もちろん、彼らなんかに転生について話すつもりはない。だから、質問には答えなかった。すると、インタビューで質問に答えなかった報復なのか、情報操作した報道をしてくるようになった。
『今話題になっております、青柳氏。期待の新人として、業界では非常に有名な迷宮探索士だそうです。彼と他3名のパーティーメンバーが、××市にあるダンジョンの最下層に到達したという報告がありました。元迷宮探索士でもある溝上さん、率直にお聞きします。彼らは本当に最下層まで到達したのでしょうか?』
『非常に疑わしい、と思います。まだ新人で、経験も浅いはずの彼ら。そんな者たちが何百年もの間、誰も到達できなかったようなダンジョンの最下層まで辿り着いた、というのは信じられないですよね』
『ということは、彼らは嘘を?』
『それは分かりません。ただ、正直に申し上げると、まだまだ新人の彼らでは実力が足りないはずです。そして、青柳氏が何度か受けたインタビューで発言を濁すような場面が何度もありました。彼らの語る情報に、疑問が残りますね』
『ですが、政府機関の調査員が情報の精査を行った。この事実は、どう考えます?』
『彼らが最下層に到達したかどうか、それを確認するのは非常に難しいことですよ。だって、そこに辿り着ける人が居ませんから。何百年もの間、誰も辿り着けなかったんですからね。誰も確認できないなら、一体どうやって確認を取るのですか?』
『なるほど、ありがとうございました。それでは次に××の問題について、……』
「はぁ……」
朝。事務所に来てテレビを付けてみると、こんな風にニュースで批判されていた。思わず、ため息が出る。朝から面倒なものを見てしまい憂鬱だった。
だからマスコミは嫌なんだ。前世でも、料理人として活躍すると面倒なマスコミに絡まれた思い出が蘇ってきた。その経験があったので、なんとか対処しようとしたのだが、思うようにコントロールできなかった。
どれだけ経験を積んでも、マスコミ対応は苦手だった。こういうのは相手しないで、関わり合いにならないようにするのが一番の対処法だと思う。
だから思い切って、日本から拠点を移すことにした。
「海外のダンジョンに?」
「そう。丁度いいから、ほとぼりが冷めるまで海外に移って活動しよう。ついでに、海外挙式でもしようじゃないか」
「えぇ!? 海外で挙式!? それ、すごく良いね! 私は賛成だよ! よかったね、ネコちゃん」
「うん」
「えー、面倒だが」
拠点を海外に移そうと提案してみた。目をキラキラさせて乗り気な大内さんに対して、面倒くさそうな田中くん。否定的な意見を口にした次の瞬間、彼は大内に睨まれていた。睨まれた田中くんは、マズイというような表情を浮かべている。
「ま、まぁ。海外に行くのも悪く、ないかもな」
「そうでしょう! そうしましょう。それに、私たちも、ね」
慌てて意見を覆らせる田中くん。
実は、田中くんと大内さんの2人がもうすぐ結婚する予定を決めたみたい。結婚式をどうしようか悩んでいると聞いていたので、丁度いいかと提案してみた。そして、俺たちもまだ式は挙げていないので、同時並行でやってしまうことにした。
田中くんと大内さん、俺とネコが海外で結婚式を挙げる。とても大きなイベントになりそうだった。招待するゲストも、大人数になりそうだ。
「親族とかに海外まで来てもらうのは金銭的な負担になるだろうから、俺が全員招待するよ」
「それは流石に悪い。俺たちの結婚式だからな。俺も、そこそこ貯金はあるから金は出せるぞ」
「私も貯金はある。お金は出せるよ。任せて」
「迷宮探索士って、想像していたよりもずっと儲かる仕事なんだよね。というか皆が仲間だったから、平凡な私でも稼げてるんだけど。ということで私も貯金はあるからお金は出すよ」
迷宮探索士の仕事をこなして、そこそこ金持ちになっていた俺たち4人。
結局、全員でお金を出し合うことに。俺たちが金を出して、各家の親族や関係者を海外まで連れていき、ハワイで結婚式を挙げるというような計画を立てた。そのまま俺たちは海外に移って、活動拠点を築こうという話が一気に進んでいく。
すでに、海外の人達との人脈づくりと交渉も始めていた。
ちょうど、国外からの依頼も多く舞い込んできていた。俺たちの実績が、海外まで伝わっているらしい。依頼された現地に飛んで依頼をこなす。これからは世界にあるダンジョンをメインに攻略していく。そういう方針で、ウチのパーティーは動くことになった。
料理の修行をするために世界中を巡った時の事を思い出す。あの時も、同じように現代社会の世界を周った。前の世界は、ダンジョンやモンスターなんて存在しない、別世界だったが。
別の世界に転生、を繰り返している。いろいろな時代の世界。同じようだと思った世界でも、ちょっとした常識や文化の差異がある。
魔法が存在したり、しなかったり。
モンスターが生息していたり、空想の存在だったり。
勇者が存在したり、物語でしか見なかったり。
ふとした瞬間に、前世の思い出が蘇ったりする。そうなると、世界について色々と考え込んでしまう。悩みの原因は、繰り返す転生。宝玉で解決したかったんだけど、見知らぬ記憶を見せつけられて、さらに謎が深まってしまった。
やはり転生の謎は俺にとって、いつまでも気になり続ける大きな問題だった。
「無事に戻ってこれた」
「さっさと休みたい」
「お疲れさま! みんな、無事で良かったね」
地上まで何事もなく無事に戻ってきた俺達は、ダンジョン最下層へ到達した結果の報告書をまとめると政府に提出した。ダンジョン内部の調査結果について、最下層に辿り着くまでに進んできたルートの記録、途中で遭遇したモンスターとの戦闘報告、既に使用済みで効果を失った宝玉を政府機関に提出した。記録したデータや回収した品々は大切に保管されるか、研究所に送られることになる。
今回のダンジョン攻略は無事に終わった、と思っていたら俺たちの提出した情報の確認が何度か繰り返し行われた。まぁ、仕方ないか。ダンジョン最下層に辿り着けるような迷宮探索士パーティーは俺達ぐらいしか居ないから。日本だけでなく世界にもダンジョン最下層にまで辿り着ける実力の持ち主は居ない。だから、騒ぎになった。
報告した情報についても、色々と再確認される。わざわざ説明会を開き、お偉方に向けてダンジョン攻略について解説を行ったりした。
色々と再確認された時、宝玉を使ってどんな願いを叶えたのか質問された。当然の疑問だろう。
気になるのは、よく分かる。そして俺は、過去の記憶を引き出したことについてを説明した。しかし、具体的にどんな記憶なのか、それについては話せないと告げる。プライバシーに関わる質問だからと言って回答を拒否した。すると向こうも、意外と簡単に引き下がってくれた。
今回のダンジョン攻略の結果報告について強制ではなく、義務でもなかったから。質問されたことも、無理に答える必要はないらしい。
宝玉の願いについて説明するとなると、俺やネコが転生者であるということやら、転生についてを教える必要があった。周辺が騒がしくなっている現状で、これ以上の面倒は避けておきたい。見知らぬ他人に過去を知られたくもないので、追求されずに助かった。
数百年ぶりにダンジョン最下層へ到達した、歴史に名を残す迷宮探索士たち。そう言って、マスコミが大々的に騒いでいた。各方面から俺たちに、沢山のインタビュー申し込みが殺到する。
面倒だったけど、いくつかインタビューを受けていく。パーティーリーダーとしてみんなを代表し、主に俺がマスコミ対応を行った。
ダンジョン最下層の到達と、効果を失った宝玉の残骸を地上へ持って帰ってきた。その偉業を達成した者たちとして、最初はちやほやされていた。だけど徐々に対応は雑に、インタビュアーからの失礼な質問も増えて、面倒な受け答えが多くなった。
それでも、過去の経験から穏便に済ませようと冷静に受け答えする。
「数百年もの間、誰もが辿り着けなかったはずの最下層に、あなた達のパーティーはどうやって辿り着いたのでしょうか?」
「本当に、たどり着いたのですか? もしかして、何かの勘違いでは?」
「その証拠を、ぜひ見せてくださいよ」
「こんな、変哲のない土壁のエリアが、本当に最下層なんですか?」
「宝玉を使って過去の記憶を取り戻したそうですが、もったいなくないですか?」
「本当に、そんなくだらないことに宝玉を使ってしまったのですか?」
「実際のところ、宝玉を手にして一体どんな願い事を叶えたのですか?」
「地位や名誉、金などを望んだんじゃありませんか? その事実を隠してるんじゃ」
「どうやって、ソレだけの実力を手に入れたのでしょうか?」
「過去に学校で問題を起こしたそうですが、詳しく教えてもらえますか!?」
こんなふうな質問を、幾度となく繰り返された。俺が答えるまでずっと。そして、インタビューたちが望む言葉を引き出すまで何度でも。
特に、俺が宝玉に願ったことに関して何度もしつこく聞いてきた。もちろん、彼らなんかに転生について話すつもりはない。だから、質問には答えなかった。すると、インタビューで質問に答えなかった報復なのか、情報操作した報道をしてくるようになった。
『今話題になっております、青柳氏。期待の新人として、業界では非常に有名な迷宮探索士だそうです。彼と他3名のパーティーメンバーが、××市にあるダンジョンの最下層に到達したという報告がありました。元迷宮探索士でもある溝上さん、率直にお聞きします。彼らは本当に最下層まで到達したのでしょうか?』
『非常に疑わしい、と思います。まだ新人で、経験も浅いはずの彼ら。そんな者たちが何百年もの間、誰も到達できなかったようなダンジョンの最下層まで辿り着いた、というのは信じられないですよね』
『ということは、彼らは嘘を?』
『それは分かりません。ただ、正直に申し上げると、まだまだ新人の彼らでは実力が足りないはずです。そして、青柳氏が何度か受けたインタビューで発言を濁すような場面が何度もありました。彼らの語る情報に、疑問が残りますね』
『ですが、政府機関の調査員が情報の精査を行った。この事実は、どう考えます?』
『彼らが最下層に到達したかどうか、それを確認するのは非常に難しいことですよ。だって、そこに辿り着ける人が居ませんから。何百年もの間、誰も辿り着けなかったんですからね。誰も確認できないなら、一体どうやって確認を取るのですか?』
『なるほど、ありがとうございました。それでは次に××の問題について、……』
「はぁ……」
朝。事務所に来てテレビを付けてみると、こんな風にニュースで批判されていた。思わず、ため息が出る。朝から面倒なものを見てしまい憂鬱だった。
だからマスコミは嫌なんだ。前世でも、料理人として活躍すると面倒なマスコミに絡まれた思い出が蘇ってきた。その経験があったので、なんとか対処しようとしたのだが、思うようにコントロールできなかった。
どれだけ経験を積んでも、マスコミ対応は苦手だった。こういうのは相手しないで、関わり合いにならないようにするのが一番の対処法だと思う。
だから思い切って、日本から拠点を移すことにした。
「海外のダンジョンに?」
「そう。丁度いいから、ほとぼりが冷めるまで海外に移って活動しよう。ついでに、海外挙式でもしようじゃないか」
「えぇ!? 海外で挙式!? それ、すごく良いね! 私は賛成だよ! よかったね、ネコちゃん」
「うん」
「えー、面倒だが」
拠点を海外に移そうと提案してみた。目をキラキラさせて乗り気な大内さんに対して、面倒くさそうな田中くん。否定的な意見を口にした次の瞬間、彼は大内に睨まれていた。睨まれた田中くんは、マズイというような表情を浮かべている。
「ま、まぁ。海外に行くのも悪く、ないかもな」
「そうでしょう! そうしましょう。それに、私たちも、ね」
慌てて意見を覆らせる田中くん。
実は、田中くんと大内さんの2人がもうすぐ結婚する予定を決めたみたい。結婚式をどうしようか悩んでいると聞いていたので、丁度いいかと提案してみた。そして、俺たちもまだ式は挙げていないので、同時並行でやってしまうことにした。
田中くんと大内さん、俺とネコが海外で結婚式を挙げる。とても大きなイベントになりそうだった。招待するゲストも、大人数になりそうだ。
「親族とかに海外まで来てもらうのは金銭的な負担になるだろうから、俺が全員招待するよ」
「それは流石に悪い。俺たちの結婚式だからな。俺も、そこそこ貯金はあるから金は出せるぞ」
「私も貯金はある。お金は出せるよ。任せて」
「迷宮探索士って、想像していたよりもずっと儲かる仕事なんだよね。というか皆が仲間だったから、平凡な私でも稼げてるんだけど。ということで私も貯金はあるからお金は出すよ」
迷宮探索士の仕事をこなして、そこそこ金持ちになっていた俺たち4人。
結局、全員でお金を出し合うことに。俺たちが金を出して、各家の親族や関係者を海外まで連れていき、ハワイで結婚式を挙げるというような計画を立てた。そのまま俺たちは海外に移って、活動拠点を築こうという話が一気に進んでいく。
すでに、海外の人達との人脈づくりと交渉も始めていた。
ちょうど、国外からの依頼も多く舞い込んできていた。俺たちの実績が、海外まで伝わっているらしい。依頼された現地に飛んで依頼をこなす。これからは世界にあるダンジョンをメインに攻略していく。そういう方針で、ウチのパーティーは動くことになった。
料理の修行をするために世界中を巡った時の事を思い出す。あの時も、同じように現代社会の世界を周った。前の世界は、ダンジョンやモンスターなんて存在しない、別世界だったが。
別の世界に転生、を繰り返している。いろいろな時代の世界。同じようだと思った世界でも、ちょっとした常識や文化の差異がある。
魔法が存在したり、しなかったり。
モンスターが生息していたり、空想の存在だったり。
勇者が存在したり、物語でしか見なかったり。
ふとした瞬間に、前世の思い出が蘇ったりする。そうなると、世界について色々と考え込んでしまう。悩みの原因は、繰り返す転生。宝玉で解決したかったんだけど、見知らぬ記憶を見せつけられて、さらに謎が深まってしまった。
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