転生人生ごっちゃまぜ~数多の世界に転生を繰り返す、とある旅人のお話~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
173 / 310
9周目(現代ファンタジー:ダンジョン)

第166話 一週間の待機処分

しおりを挟む
 一週間、自宅での待機を命じられた。これはダンジョンに資格を持たずに侵入した件に関する処分ではなくて、後で正式な処分が課される予定だそうだ。

 俺たちがダンジョンの下層まで行ったと報告したところ、色々と話し合いが必要になったらしくて、その間は自宅で大人しく待機しておくようにという一時的な措置を取ることになった。どういう処分にするのか、これから話し合って決めるのだろう。

「しばらくは、家に居てくれるのね!」
「それなら安心だな」
「うん。家で、じっとしておくよ」

 自宅待機することになって、母親と父親は喜んだ。それほど心配をかけてしまったことを自覚して、しばらく俺は心配をかけないように大人しくしておくことにする。



 一週間の自宅待機中、ダンジョンでの行動やら戦闘記録をまとめて提出するようにという課題を与えられた。ちゃんと記録を取っていたので、それらのデータをまとめるだけの簡単な作業で、サッと終わらせた。

 約一日で、十数ページの攻略に関する報告書が完成した。それを謹慎明け、先生に提出する。これで課題は終わった。その他、特にすることもなかったので家事手伝いなどをして、自分の家で久しぶりに落ち着いた日々を過ごすことに。

 最近ずっと、ダンジョンを攻略したり、準備するのが楽しくて夢中になっていた。振り返ってみると、両親と過ごす一緒に時間が少なくなっていたかも。今回の機会を活かして、両親と積極的に会話をしてみたり。

 やはり、かなり心配をかけていたようで反省する。



 外に出ることはなるべく控えるように言われ、自宅謹慎の期間中は他の生徒たちと連絡を取ることも禁止されていた。そんな状況で時間を持て余していた俺は、将来について色々と考えるのに時間を費やした。

 おそらく、今回の件で俺は学校を退学処分になるだろうと予想している。ちょっと前に調べてみた情報によると、許可もなく勝手にダンジョンへ侵入することは法律に違反するような行為であるということ。それだけでなく、俺たちは迷宮探索士の資格を持たずに中層以降まで潜ってしまった。

 全て隠さず正直に話したので、ちゃんと把握されているたろう。いまさらになって言い逃れは出来ない。それが事実だったから。

 しかし、あの時ネコたちを見捨てることは出来なかった。彼女たちが危険に陥っているかもしれないのに、無視して助けに行かないという選択肢は頭の中に無かった。

 その選択に間違いはなかっただろう。今も後悔はない。俺は無事に生きて地上へと帰ってこれて、ネコや仲間たちも助けられた。ついでに生徒も助けることが出来て、今回の出来事で死人はゼロ。十分な成果だと思っている。

 学校を退学になってしまったなら、迷宮探索士の道は諦めることになるだろうな。迷宮探索士の試験を受けるためには、学校を卒業しなければならないから。もう一度試験を受けて、入学し直すという方法もあるのかもしれない。だが、そうすると時間がかかり過ぎてしまう。

 それなら今回は、すっぱり諦めてしまうのも良いだろう。絶対に迷宮探索士になりたいと思っているわけでもない。

 迷宮探索士の道を諦めるとして、他に何の仕事をしようか悩む。

 どうやって生活費を稼ごうかな、と俺は考える。婚約者もいるので、なるべく早く仕事を見つけて働けるようにしておきたい。生きていくのに苦労しないような生活の基盤を整えていきたい。

 前世の経験を活かして、料理人として生きていくのが一番簡単だろうとなと思う。腕を磨き直す必要はあるけれど、すぐに前の実力に戻せると思う。でも今回は、違う職種で働きたいとも考えていた。

 料理人としては、前世で十分に働いたから。これから先、数十年ぐらい続けて働くことになると考えたら、正直に言って同じような仕事は飽きてしまいそうだ。

 出来ることなら、前世とは違う職種の仕事に就きたいと考えている。でも、出来る仕事が無さそうなら料理人という選択もアリだろうな。経験済みであり、活躍できる自信のある能力がある。

 やりたいことが見つからなくても、やれることならある。おかげで不安にならず、余裕を持って将来のことを考えることが出来ていた。



 そういえば俺が迷宮探索士を目指すキッカケとなったのは、ダンジョンの最下層にあると言われている”願いを叶えてくれるアイテム”というものを入手するため。そのアイテムを使って、転生についての謎を究明しようと考えたから。

 まぁでも、迷宮探索士の資格を取得することが出来なければ諦めるぐらいの気持ちだった。そんなアイテムが存在するのかどうかも不確かだし、そのアイテムで転生の謎が解明することが出来るのかどうかも、非常に可能性が低そうな話だったから。

 今回の件で、ダンジョンに関する情報をそこそこ入手できた。その情報を使って、ダンジョンに一人で侵入して最下層を目指すという強硬策も考えてみた。その計画を実行して、誰にも見つからずに最下層へ行っても大丈夫そうだという自信もある。

 しかし、何が起こるかわからない。今回の件で両親に迷惑を掛けてしまったから、これ以上は迷惑なことをして困らせたくなかった。もう許可なく勝手にダンジョンへ入ることは、やめておこう。

 だから、迷宮探索士の道もスパッと諦めるか。それで両親を心配させていたから、安心してもらえる仕事のほうが良いだろう。

 まだ学生で若い俺には、人生の方向転換する時間的な余裕もある。これから先の、新たな人生を歩むのも悪くない。何度も転生を繰り返してきた俺にとっては、人生の切り替えなんて得意分野だった。

 そんな風に将来のことについて考えながら、一週間の自宅謹慎の日々を過ごした。そして待機期間が終わって俺は今日、久しぶりに学校へ足を運ぶ。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...