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9周目(現代ファンタジー:ダンジョン)
第150話 初めてダンジョンに潜ってみた
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ひんやりとした冷たい空気が頬に当たる。薄暗い洞窟の中を4人組のパーティーが黙々と進んでいた。手に持ったランタンに火を灯して、明かりを確保しながら前へ。
ダンジョンの上層は、石と土の壁がずっと続いているらしい。ここに生息しているモンスターは、それほど脅威ではない。初心者向けの場所だと言われている。だが、油断は禁物だ。
ダンジョンの奥に進んでいくと、地中とは思えない景色が広がっていたり、凶暴なモンスターが生息していて危険だったりするらしい。そういう場所に足を踏み入れるには、迷宮探索士の資格も持っていないとダメだった。
何故かダンジョンの中では電気製品を使用することが出来ない。その原因は未だに解明されていない。
ヘッドライトやハンディライトでは明かりをつけることが出来なかった。その他にも、パソコンやカメラといった電子機器も使用不可。銃器も、謎の不具合が発生して思うように使えなくなる。
だから俺たちはランタンの火を使って、洞窟内での明かりを確保している。武器も剣や弓など。銃火器を使うことは出来ない。
どうやら、ダンジョン内で収集した鉱石を加工して作られたという特別製ならば、ダンジョンの中でも問題なく使用することが出来るらしい。
だが、それを作るためには必要なダンジョン産の鉱石が多く、加工も難しいそうで非常に高価らしい。
プロの迷宮探索士でも、ダンジョン産の鉱石で製造された電子機器や銃火器を使用している人は、一部しか居ない。ましてや、迷宮探索士を目指している生徒では特別製で高価な装備を使うことなど不可能。ということで俺たちは、ランタンの火を頼りにして、ダンジョン内を進んでいく。
俺たちは今、とある場所を目指してダンジョンを潜っていた。その目的の場所に落ちているという、特殊な鉱石を地上に持ち帰ることが今回の課題である。
ダンジョンの浅い部分で手に入るアイテムなので、それほど需要はない。だけど、全く無いというわけでもない。持ち帰ることが出来れば、そこそこのお金になる。
「次は、どっちかな?」
「右の道だね」
複数の方向に別れた道がある。大内さんが振り返って俺に確認してきたので、紙製の地図を広げて、進むルートを確かめてから彼女たちに伝えた。
ルートを確認出来たので前に進もうとしたが、俺は足を止める。前へ進もうとする彼らを呼び止めた。
「3人とも、ちょっと待って」
道の先には、見えない空間が広がっている。暗闇から、モンスターが飛び出てくる危険がある。早速、前方に何かの気配を感じた。俺の指示に従い、3人が立ち止まる。
「ッ! モンスターが居る。数は、えーっと……」
田中くんも敵の存在に気付いたようだ。一瞬止まってから、声を上げる。だけど、彼の言葉は不鮮明だった。
複雑に入り組んだ、迷路のようになっている通路の1つからモンスターが接近してくるのが分かっていた。暗くて先が見えにくいが、気配を感じる。
「そこの通路、10メートル前方にゴブリンが1匹だけ。白砂さん!」
「わかった……ッ!」
田中くんが報告する前に魔力を感じて敵の接近を察知していた俺は、白砂に指示を出す。彼女は、すぐに反応して動いた。弾丸のような猛スピードで、敵に接近すると剣を一振り。そして。
「倒した」
あっという間に、接近してきたモンスターを倒してしまった。戦闘力がずば抜けて高いから、白砂猫は上層のモンスターとの戦いは一瞬で終わらせていた。
「田中くん、近くに他のモンスターは?」
「え、あ、あぁ。えっと、チョット待ってくれ。……うん。もう居ない、と思う」
白砂がモンスターを倒して、戦闘は終了する。だが、まだ慌てていた田中に報告を促す。だが、彼の返事は曖昧だった。仕方ない。まだ、慣れていないかな。だけど、素質は十分にあると思う。慣れていけば、大丈夫そうだ。
「ここで、ちょっと休憩しようか」
「待ってくれ。僕は、ちゃんとやれる!」
ダンジョンの途中で、一旦休憩するとみんなに告げる。その言葉を聞いて、慌てて田中くんが釈明しようとする。
「落ち着いて、田中くん。ここまでずっと、休憩しなかったからね。それに、ついでだから俺がルートを間違えていないか、再確認しておきたいんだよ」
「ッ! ……そ、そっか。わかった。……ごめん」
ここまで休まず進んできたのは本当だ。休憩のついでに、ルートの再確認を行うと説明すれば田中は納得して引き下がった。ダンジョン内の地形は時々、変化することがある。ルートの再確認は、ダンジョン攻略の上で非常に大事な作業の一つだった。
「2人も、休憩しよう」
田中くんの他に、2人にも休憩だと告げた。
「うん。それがいいね」
「……わかった」
彼女たちも了承して、一旦そこで休憩することに。腰を下ろして、一息つく。
ここまでかなり順調に進んできた。俺のアイテムボックスという能力のおかげで、他のパーティーに比べたら荷物が少なく済むので、身軽に動けるから。だから、慌てる必要もない。
ルートの再確認を行いながら、田中くんの様子が落ち着くのを待つ。今のところ、予定していた通りのルートでダンジョン内を進んでこれたと思う。このまま、危険もなく進めればいいけれど。
何かあったら、少し離れて後ろからついて来ている先生の助けが入るだろうから、死ぬことはないと思う。だが、助けが入った場合には今回のダンジョン実習に関する評価は下がるだろう。
支援職の俺が前に出て戦うのも最終手段だと考えている。怪我をしたくないので、なるべく前には出ないように。
ここからは、もう少し慎重に前へ進む。モンスターとの戦いを一つ一つ集中して、丁寧に処理して目的地に向かっていく。
その後、何度かモンスターとの戦いがあった。特に問題もなくダンジョンの攻略は順調だった。危険な目に遭うこともなく、課題のアイテムを入手することに成功。
すぐさま、地上に帰還することが出来た。
想像していた以上にダンジョン攻略は簡単で、軽く課題をクリアした。事前の準備が功を奏したのと、メンバーに恵まれていた。今回のダンジョン攻略は白砂猫さんが、すごく頼りになった。
「おつかれさま」
「みんな無事でよかったね! また、このメンバーで組みたいな」
「……うん」
「はぁ、よかった……。無事に帰ってこれた」
初のダンジョン攻略を無事に終えると、先生に結果を報告する。それで、その日は解散となった。
「……理人くん、ちょっといい?」
「ん? どうしたの?」
パーティー4人が別れた後、なぜか俺を追ってきた白砂猫さん。
まだ短い付き合いだけど、一緒にダンジョンに潜って白砂さんという人物について少しだけ理解した。彼女は基本的に無口で、あまり自分のことを話さない。
そんな彼女にしては珍しく、向こうから俺に声を掛けてきた。わざわざ追いかけてきて。それだけ、大事な用事があるということなのか。
「話したいことがある。誰にも聞かれたくない」
「ん?」
誰にも聞かれたくない話とは一体。疑問に思いながら、人影のない場所に移動してきた。
俺と白砂猫の2人きりになり、向かい合い立つ。彼女が俺に、何の用事があるというのか予想がつかなった。今日のダンジョン攻略も問題なかったし、他に話すようなことがあったかな。移動している間も考えてみたけれど、何も浮かんでこなかった。
「「……」」
そして今は黙ったまま、しばらく向かい合っている。白砂猫さんが俺の顔をジッと見て、何かを確かめるような視線。だけど、その意図はわからない。
「……」
「えーっと、どうしたの? 話って、何かな?」
彼女の口から飛び出した言葉は、予想外だった。
「……レイラ?」
「……!?」
問いかけられた言葉を聞いて、胸がドキッと跳ねた。白砂猫の視線は、間違いなく俺の顔に向けられていた。なぜ彼女が、その名前を知っているのか。
ダンジョンの上層は、石と土の壁がずっと続いているらしい。ここに生息しているモンスターは、それほど脅威ではない。初心者向けの場所だと言われている。だが、油断は禁物だ。
ダンジョンの奥に進んでいくと、地中とは思えない景色が広がっていたり、凶暴なモンスターが生息していて危険だったりするらしい。そういう場所に足を踏み入れるには、迷宮探索士の資格も持っていないとダメだった。
何故かダンジョンの中では電気製品を使用することが出来ない。その原因は未だに解明されていない。
ヘッドライトやハンディライトでは明かりをつけることが出来なかった。その他にも、パソコンやカメラといった電子機器も使用不可。銃器も、謎の不具合が発生して思うように使えなくなる。
だから俺たちはランタンの火を使って、洞窟内での明かりを確保している。武器も剣や弓など。銃火器を使うことは出来ない。
どうやら、ダンジョン内で収集した鉱石を加工して作られたという特別製ならば、ダンジョンの中でも問題なく使用することが出来るらしい。
だが、それを作るためには必要なダンジョン産の鉱石が多く、加工も難しいそうで非常に高価らしい。
プロの迷宮探索士でも、ダンジョン産の鉱石で製造された電子機器や銃火器を使用している人は、一部しか居ない。ましてや、迷宮探索士を目指している生徒では特別製で高価な装備を使うことなど不可能。ということで俺たちは、ランタンの火を頼りにして、ダンジョン内を進んでいく。
俺たちは今、とある場所を目指してダンジョンを潜っていた。その目的の場所に落ちているという、特殊な鉱石を地上に持ち帰ることが今回の課題である。
ダンジョンの浅い部分で手に入るアイテムなので、それほど需要はない。だけど、全く無いというわけでもない。持ち帰ることが出来れば、そこそこのお金になる。
「次は、どっちかな?」
「右の道だね」
複数の方向に別れた道がある。大内さんが振り返って俺に確認してきたので、紙製の地図を広げて、進むルートを確かめてから彼女たちに伝えた。
ルートを確認出来たので前に進もうとしたが、俺は足を止める。前へ進もうとする彼らを呼び止めた。
「3人とも、ちょっと待って」
道の先には、見えない空間が広がっている。暗闇から、モンスターが飛び出てくる危険がある。早速、前方に何かの気配を感じた。俺の指示に従い、3人が立ち止まる。
「ッ! モンスターが居る。数は、えーっと……」
田中くんも敵の存在に気付いたようだ。一瞬止まってから、声を上げる。だけど、彼の言葉は不鮮明だった。
複雑に入り組んだ、迷路のようになっている通路の1つからモンスターが接近してくるのが分かっていた。暗くて先が見えにくいが、気配を感じる。
「そこの通路、10メートル前方にゴブリンが1匹だけ。白砂さん!」
「わかった……ッ!」
田中くんが報告する前に魔力を感じて敵の接近を察知していた俺は、白砂に指示を出す。彼女は、すぐに反応して動いた。弾丸のような猛スピードで、敵に接近すると剣を一振り。そして。
「倒した」
あっという間に、接近してきたモンスターを倒してしまった。戦闘力がずば抜けて高いから、白砂猫は上層のモンスターとの戦いは一瞬で終わらせていた。
「田中くん、近くに他のモンスターは?」
「え、あ、あぁ。えっと、チョット待ってくれ。……うん。もう居ない、と思う」
白砂がモンスターを倒して、戦闘は終了する。だが、まだ慌てていた田中に報告を促す。だが、彼の返事は曖昧だった。仕方ない。まだ、慣れていないかな。だけど、素質は十分にあると思う。慣れていけば、大丈夫そうだ。
「ここで、ちょっと休憩しようか」
「待ってくれ。僕は、ちゃんとやれる!」
ダンジョンの途中で、一旦休憩するとみんなに告げる。その言葉を聞いて、慌てて田中くんが釈明しようとする。
「落ち着いて、田中くん。ここまでずっと、休憩しなかったからね。それに、ついでだから俺がルートを間違えていないか、再確認しておきたいんだよ」
「ッ! ……そ、そっか。わかった。……ごめん」
ここまで休まず進んできたのは本当だ。休憩のついでに、ルートの再確認を行うと説明すれば田中は納得して引き下がった。ダンジョン内の地形は時々、変化することがある。ルートの再確認は、ダンジョン攻略の上で非常に大事な作業の一つだった。
「2人も、休憩しよう」
田中くんの他に、2人にも休憩だと告げた。
「うん。それがいいね」
「……わかった」
彼女たちも了承して、一旦そこで休憩することに。腰を下ろして、一息つく。
ここまでかなり順調に進んできた。俺のアイテムボックスという能力のおかげで、他のパーティーに比べたら荷物が少なく済むので、身軽に動けるから。だから、慌てる必要もない。
ルートの再確認を行いながら、田中くんの様子が落ち着くのを待つ。今のところ、予定していた通りのルートでダンジョン内を進んでこれたと思う。このまま、危険もなく進めればいいけれど。
何かあったら、少し離れて後ろからついて来ている先生の助けが入るだろうから、死ぬことはないと思う。だが、助けが入った場合には今回のダンジョン実習に関する評価は下がるだろう。
支援職の俺が前に出て戦うのも最終手段だと考えている。怪我をしたくないので、なるべく前には出ないように。
ここからは、もう少し慎重に前へ進む。モンスターとの戦いを一つ一つ集中して、丁寧に処理して目的地に向かっていく。
その後、何度かモンスターとの戦いがあった。特に問題もなくダンジョンの攻略は順調だった。危険な目に遭うこともなく、課題のアイテムを入手することに成功。
すぐさま、地上に帰還することが出来た。
想像していた以上にダンジョン攻略は簡単で、軽く課題をクリアした。事前の準備が功を奏したのと、メンバーに恵まれていた。今回のダンジョン攻略は白砂猫さんが、すごく頼りになった。
「おつかれさま」
「みんな無事でよかったね! また、このメンバーで組みたいな」
「……うん」
「はぁ、よかった……。無事に帰ってこれた」
初のダンジョン攻略を無事に終えると、先生に結果を報告する。それで、その日は解散となった。
「……理人くん、ちょっといい?」
「ん? どうしたの?」
パーティー4人が別れた後、なぜか俺を追ってきた白砂猫さん。
まだ短い付き合いだけど、一緒にダンジョンに潜って白砂さんという人物について少しだけ理解した。彼女は基本的に無口で、あまり自分のことを話さない。
そんな彼女にしては珍しく、向こうから俺に声を掛けてきた。わざわざ追いかけてきて。それだけ、大事な用事があるということなのか。
「話したいことがある。誰にも聞かれたくない」
「ん?」
誰にも聞かれたくない話とは一体。疑問に思いながら、人影のない場所に移動してきた。
俺と白砂猫の2人きりになり、向かい合い立つ。彼女が俺に、何の用事があるというのか予想がつかなった。今日のダンジョン攻略も問題なかったし、他に話すようなことがあったかな。移動している間も考えてみたけれど、何も浮かんでこなかった。
「「……」」
そして今は黙ったまま、しばらく向かい合っている。白砂猫さんが俺の顔をジッと見て、何かを確かめるような視線。だけど、その意図はわからない。
「……」
「えーっと、どうしたの? 話って、何かな?」
彼女の口から飛び出した言葉は、予想外だった。
「……レイラ?」
「……!?」
問いかけられた言葉を聞いて、胸がドキッと跳ねた。白砂猫の視線は、間違いなく俺の顔に向けられていた。なぜ彼女が、その名前を知っているのか。
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