転生人生ごっちゃまぜ~数多の世界に転生を繰り返す、とある旅人のお話~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
147 / 310
8周目★(現代風:料理人)

第141話 優勝チームは

しおりを挟む
 世界料理大会の審査が終わって、翌日。会場では表彰式が行わていた。俺たちは、表彰台の一番高い位置に立っていた。

 つまり日本代表チームは、今大会で1位を獲得した。

「おめでとう!」
「ありがとうございます」

 日本チームを代表してリーダーが、大会委員長から1位を祝福してくれるメダルを受け取る。彼は、1位という結果を聞いてからずっと熱い涙を流して喜んでいた。

 他のメンバーも自分たちのチームが1位という結果を聞いて、みんなで握手を交わしたり、手をたたいて喜んだりした。

 世界料理大会で日本が1位になったのは初めてで、過去の成績でも最高は5位だ。俺たちのチームが日本初の快挙を達成した。それどころから、アジア諸国を含めても初の1位である。

 他のチームは強豪ばかりで、本当に優勝するのが難しいレベルだった。今回は特にアルドがリーダーを務めるフランスチームが強敵だった。彼らの結果は2位で、少しの差で勝つことが出来た。小さなミスが一つでもあれば、結果は逆になっていたかもしれない。それぐらいの僅差だったと思う。

「レイラ、おめでとう! 悔しいが、君たちの勝ちだな。しかし、次は負けないぞ」
「ありがとう、アルド。また、戦いましょう」



 優勝が決まって表彰式でメダルを受け取ると、各国のメディアが一気に殺到した。祝福されつつ、インタビューを受ける日本代表のチーム。各メディアへの対応をしているうちに、帰国の便を逃してしまうほどだった。

 引き止めてまで必死になってインタビューを続けたフランスの新聞社に、代わりの航空券を用意してもらった。お詫びの気持ちも込められていたのだろう、来たときに乗った飛行機の席よりも上等なクラスの座席を全員分用意してくれていた。

 大会で優勝も出来たので、帰りに乗った飛行機はものすごく快適だった。



 日本に帰ってくると、空港には沢山の新聞社の記者たちや、各テレビのスタッフがカメラを構えて、俺たちの到着を待ち構えていた。

「世界大会は、いかがでしたか?」
「優勝した今、どういった気持ちですか?」
「勝因は、何だと思いますかッ?」
「1位となった気持ち、誰に伝えたいですかぁ?」

 帰ってきたばかりの俺たちは、バシバシとカメラのフラッシュを浴びさせられた。もみくちゃにしながら無理矢理マイクを向けてくる、インタビュアーたち。彼らは、大会で勝利した気持ちをしつこく聞いてくる。

 俺はサッと集団の中から離脱して、大会に参加した料理人のメンバーではなくて、サポート役のみんなの中に混じって難を逃れた。大変そうにしながら笑顔を浮かべてインタビューを受けるチームリーダー。

 空港でのインタビューは1時間も続いて、ようやく解放された。世界大会で疲れて移動でも疲弊したというのに、大変そうだった。



「おめでとう、レイラ! 娘として誇らしいよ」
「本当に凄い。おめでとうレイラちゃん!」

 家に帰ると、結果を知っていた両親が祝ってくれた。2人とも、喜んでくれているようだ。既に、大会で優勝したという情報を聞いていたらしい。

「おかえりなさい、レイラ」
「うん。ただいま」

 彼女のカレンは、おかえりと言ってくれた。ようやく、世界料理大会で1位という達成感を味わえた。



 その後、俺は家でゆっくりと休んでいた。

 テレビで放映されているニュースを見ると、チームリーダーと、メンバーを集めた安川さんにも注目が集まっているようだった。他のメンバーや、俺にインタビューの依頼は少なかった。

 特に俺は、まだ22歳の若造だったから。世界一の料理人としての説得力が少ないようだ。なんだか、最弱の勇者と呼ばれていた頃を思い出した。

 とある記事によると、経歴が怪しく、まだ料理人としての経験が足りていない俺が世界料理大会にメンバーに選ばれたのはオカシイ。誰かのコネで、大会に参加させてもらったに違いない、とゲスな勘ぐりで俺を批判してくるメディアもあった。

 その記事を見た瞬間から俺は、そのメディアからのインタビューは、今後一切拒否して受けないようにすることに決めたりしていた。メディア対応は、すごく難しい。

 インタビュー以外で他にも変な依頼があった。水着姿の俺を写真に撮りたいとか、芸能界デビューの話とか、低俗なバラエティ番組への出演依頼とか。他にも色々と。それら全てを俺は断った。世界料理大会とか、料理と関係がないから興味もない。



 日本に帰ってきてから1週間後。世界料理大会に参加したメンバーと、サポートをしてくれていた人たちが集まって、祝賀会が行われた。その際にも、メディア対応についての話になった。

「すまない。みんなの功績を私一人が奪ってしまったような形になった。世界1位はみんなが協力して得た結果だというのに。特に、今回の大会で最大の功労者だった、レイラには本当にすまないと思っている。君の手柄を奪ってしまった」
「いいんですよ、リーダー。私は世界で1位になれたっていう称号を得られたので、十分に満足しています」

 俺たちもそうです、と同意するチームメンバーたち。俺は特に無視をされたり、散々な評価をされることには慣れていたので、全然平気だった。手柄を譲ることにも慣れている。

 むしろ、注目を浴びて面倒事を引き受けてくれているリーダーに感謝している。

 あの時と同じく、世間から評価されると同時に面倒なことを引き受けてくれている彼には、とても助かっていた。そして、リーダーと同じように面倒事を対応してくれている安川さんにも。

「とにかく今は、世界で1位のチームになれたことを喜び合いましょうよ」

 祝賀会の目的は、大会で優勝出来たことを喜び祝う。そのために今日は集まったのだから。眉間にシワを寄せていたリーダーは、表情を笑顔に変えてグラスを持った。

「それもそうだな。それじゃあ、みんなでカンパーイ!」

 リーダーの号令で、みんなは持っていたグラスを空中に掲げた。その場に集まった全員が、喜びの笑顔を浮かべている幸せな雰囲気。

「「「「乾杯」」」」

 みんなで優勝を祝い、楽しい時間を過ごした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

処理中です...