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7周目(SF:パイロット)
第109話 整備士のお勉強
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シミュレーター訓練の次の段階として、初めて実際の機体に乗り宇宙に出る訓練を行った。格納庫に帰還した俺は、機体から降りると更衣室に向かう。
「ご苦労さま。訓練、どうだった?」
「なんとか」
ソフィアが訓練の様子を見に来ていたようだ。さっきのモニター室に居たのかな。そんな彼女は、パイロットスーツを脱いでいる俺に労いの言葉をかけてくれた。
「疲れたでしょう、今日はもう休んで」
「うん、でもチョット待って」
「用事があるのね。でも、疲労が溜まっているかもしれないから、気をつけるのよ」
「わかった」
母親のような口調で心配してくれる彼女に返事をする。実際に俺は、彼女によって生み出されたのだから。ソフィアのことを母親だと思っても、いいのかもしれない。
そして、実はそんなに疲れてはいない。休む前にしておきたいことがもあった。
着替えを終えて、休むように言ってくれたソフィアと別れてから、先ほどまで俺が乗っていた機体が置かれた格納庫に戻ってきた。そこでは整備士たちが、訓練で使用した機体の様子を確認していた。
「どうした? 何か、問題があったのか?」
機体を整備している人たちを指揮するマキナが、着替えた後に格納庫へ戻ってきた俺に気付いて、話しかけてくれた。彼も、心配してくれているのか。
「いえ。シミュレーター機でやった通りに操作が出来たので、特に問題はありませんでした。戻ってきたのは、自分の乗った機体の整備の様子を見ておきたくて」
「なるほど。自分の乗った機体を、訓練が終わった後までちゃんと気にかけるとは、いい心がけだな」
機体は万全だったと思う。戻ってきた理由について正直に話すと、マキナにすごく気に入られたようだった。そんな彼に、質問してみた。
「これから、どうやって機体を整備していくんですか?」
「まずは、全体のダメージをチェック。それから」
整備の方法について整備士のマキナに質問してみると、整備の手順について詳しく教えてくれた。
「機体のダメージチェックから始めるんですね」
「そうだ。機体を動かした時に、どれだけ損傷しのたか全体を確認。その後に各部の修理を行っていく」
パイロットが整備を知った風に口出しするな、と言って怒られるかもと思ったが、マキナは普通に教えてくれた。
機体の整備は、とても大変そうだった。俺が最初にスピードを出しすぎてしまい、機体にダメージを受けてしまったから。彼らの作業を増やしてしまった。
「手伝います」
「助かる」
手伝いを申し出ると、すぐに受け入れられた。知識のない素人が入って助けになるのか心配だったが、仕事量が多いので人手があるだけでもありがたいと喜ばれた。
どうやら整備チームは、かなりの人手不足のようだった。ここは研究所であって、機体の整備はメインではないから。もっと腕の良い整備士は、ここより必要とされる戦地に配属されているらしい。
だから俺のような素人の手助けであっても、歓迎された。
俺は整備の手伝いをしながら、機体を整備する方法について熱心に学んでいった。
「機体の修理に使うパーツが、不足気味のようですね」
「あぁ、そうだな。この研究所には人と同じく、パーツも数は無い」
ダメージチェックを終えて、次は機体の修理に入る。明らかに使えるパーツの数が少なかった。素人である俺の目で見ても分かるぐらい、機体を整備するための資材が圧倒的に足りていない。
「修理部品は、ここじゃなく前線で必要としている場に優先的に送られていくから。この研究所には、質が悪かったり欠陥のあるような、戦場では使えないパーツだけが送られてくる。有るだけマシだがな。俺たちはそれでなんとか、やりくりしていく」
人型二足歩行のロボットは、車のようにエンジンをかければすぐに走るようなものじゃない。いつも整備しておかないといけない。本当なら、100時間ぐらい機体を動かしたら一旦バラしてエンジンを取り出し、分解整備をしておきたかった。だが、修理で使えるようなパーツも少ないので、それは難しい。
パーツが無い。それでもなんとか都合を上手くつけるしかなかった。訓練とはいえ不都合や欠陥が無い状態で機体を動かせるように、いつも整備をしておきたかった。出来る限りの範囲で、とマキナは語る。
そんな状況だと知らずに、機体を雑に扱ってしまったことを後悔した。今後は気をつけないと。
その日から俺は、整備士たちのチームに混ざって研究所にある機体の整備を手伝うようになった。自分の乗った機体以外の整備も手伝う。
手伝いを繰り返していくうちに知識が身につき、俺もそれなりに機体を修理できるぐらいになった。色々と分からないことをマキナや他の整備士の誰かに質問すると、ちゃんと答えてくれる。それで色々と学ぶことが出来た。
「この、データが表示されていない部分は何です?」
ある日、機体を整備するためにシステムをチェックしていると見つけたデータ。
気になって中身を確認しようとしてみたけれど、そのデータにアクセスすることが出来ずに内容が見れなかった。システムに情報が表示されない謎のデータについて、マキナに質問してみた。
すると、彼から意外な答えが返ってきた。
「ああ、それか。わからん」
「え?」
まさか整備士のエキスパートであるマキナに、機体に関して分かっていない部分があるとは思わなかった。
実態を把握しているのに分からないと答える理由を、彼は詳しく説明してくれた。
実は俺たちが乗っている機体について、そもそも機械敵兵から奪い取ったものから作られているらしい。
敵の機械から鹵獲して、人類の武器として使っているという。各地の戦場で人間が使っている人型二足歩行兵器のほとんどが、敵から奪ったものを使っているそうだ。機械が作って戦場に送り込んできた機体。それを今は、俺たちが利用している。
そんな、実態の分からないものを使って大丈夫なのだろうか。不安になる。
「今のところ、敵の機体を使っていて問題は起きていない。敵のシステムは機体から全て引き出して、ハードウェアだけ人間たちが使っている」
それで、機体の中にアクセスできないデータが残されていた、ということなのか。それは、本当に大丈夫なのだろうか。
ある日突然、不具合が起きて大変なことになるかもしれない。ブービートラップとか、そういう類のものを仕込まれている可能性があるかも。
それが、この実態のわからないデータなのでは。
「ソフトウェアは、ちゃんと人間が作った物を使用している。だから、なんとか今はやれている、という感じだな」
機体の整備について学んだことにより知ることが出来た、あまり知りたくなかった事実だった。
「ご苦労さま。訓練、どうだった?」
「なんとか」
ソフィアが訓練の様子を見に来ていたようだ。さっきのモニター室に居たのかな。そんな彼女は、パイロットスーツを脱いでいる俺に労いの言葉をかけてくれた。
「疲れたでしょう、今日はもう休んで」
「うん、でもチョット待って」
「用事があるのね。でも、疲労が溜まっているかもしれないから、気をつけるのよ」
「わかった」
母親のような口調で心配してくれる彼女に返事をする。実際に俺は、彼女によって生み出されたのだから。ソフィアのことを母親だと思っても、いいのかもしれない。
そして、実はそんなに疲れてはいない。休む前にしておきたいことがもあった。
着替えを終えて、休むように言ってくれたソフィアと別れてから、先ほどまで俺が乗っていた機体が置かれた格納庫に戻ってきた。そこでは整備士たちが、訓練で使用した機体の様子を確認していた。
「どうした? 何か、問題があったのか?」
機体を整備している人たちを指揮するマキナが、着替えた後に格納庫へ戻ってきた俺に気付いて、話しかけてくれた。彼も、心配してくれているのか。
「いえ。シミュレーター機でやった通りに操作が出来たので、特に問題はありませんでした。戻ってきたのは、自分の乗った機体の整備の様子を見ておきたくて」
「なるほど。自分の乗った機体を、訓練が終わった後までちゃんと気にかけるとは、いい心がけだな」
機体は万全だったと思う。戻ってきた理由について正直に話すと、マキナにすごく気に入られたようだった。そんな彼に、質問してみた。
「これから、どうやって機体を整備していくんですか?」
「まずは、全体のダメージをチェック。それから」
整備の方法について整備士のマキナに質問してみると、整備の手順について詳しく教えてくれた。
「機体のダメージチェックから始めるんですね」
「そうだ。機体を動かした時に、どれだけ損傷しのたか全体を確認。その後に各部の修理を行っていく」
パイロットが整備を知った風に口出しするな、と言って怒られるかもと思ったが、マキナは普通に教えてくれた。
機体の整備は、とても大変そうだった。俺が最初にスピードを出しすぎてしまい、機体にダメージを受けてしまったから。彼らの作業を増やしてしまった。
「手伝います」
「助かる」
手伝いを申し出ると、すぐに受け入れられた。知識のない素人が入って助けになるのか心配だったが、仕事量が多いので人手があるだけでもありがたいと喜ばれた。
どうやら整備チームは、かなりの人手不足のようだった。ここは研究所であって、機体の整備はメインではないから。もっと腕の良い整備士は、ここより必要とされる戦地に配属されているらしい。
だから俺のような素人の手助けであっても、歓迎された。
俺は整備の手伝いをしながら、機体を整備する方法について熱心に学んでいった。
「機体の修理に使うパーツが、不足気味のようですね」
「あぁ、そうだな。この研究所には人と同じく、パーツも数は無い」
ダメージチェックを終えて、次は機体の修理に入る。明らかに使えるパーツの数が少なかった。素人である俺の目で見ても分かるぐらい、機体を整備するための資材が圧倒的に足りていない。
「修理部品は、ここじゃなく前線で必要としている場に優先的に送られていくから。この研究所には、質が悪かったり欠陥のあるような、戦場では使えないパーツだけが送られてくる。有るだけマシだがな。俺たちはそれでなんとか、やりくりしていく」
人型二足歩行のロボットは、車のようにエンジンをかければすぐに走るようなものじゃない。いつも整備しておかないといけない。本当なら、100時間ぐらい機体を動かしたら一旦バラしてエンジンを取り出し、分解整備をしておきたかった。だが、修理で使えるようなパーツも少ないので、それは難しい。
パーツが無い。それでもなんとか都合を上手くつけるしかなかった。訓練とはいえ不都合や欠陥が無い状態で機体を動かせるように、いつも整備をしておきたかった。出来る限りの範囲で、とマキナは語る。
そんな状況だと知らずに、機体を雑に扱ってしまったことを後悔した。今後は気をつけないと。
その日から俺は、整備士たちのチームに混ざって研究所にある機体の整備を手伝うようになった。自分の乗った機体以外の整備も手伝う。
手伝いを繰り返していくうちに知識が身につき、俺もそれなりに機体を修理できるぐらいになった。色々と分からないことをマキナや他の整備士の誰かに質問すると、ちゃんと答えてくれる。それで色々と学ぶことが出来た。
「この、データが表示されていない部分は何です?」
ある日、機体を整備するためにシステムをチェックしていると見つけたデータ。
気になって中身を確認しようとしてみたけれど、そのデータにアクセスすることが出来ずに内容が見れなかった。システムに情報が表示されない謎のデータについて、マキナに質問してみた。
すると、彼から意外な答えが返ってきた。
「ああ、それか。わからん」
「え?」
まさか整備士のエキスパートであるマキナに、機体に関して分かっていない部分があるとは思わなかった。
実態を把握しているのに分からないと答える理由を、彼は詳しく説明してくれた。
実は俺たちが乗っている機体について、そもそも機械敵兵から奪い取ったものから作られているらしい。
敵の機械から鹵獲して、人類の武器として使っているという。各地の戦場で人間が使っている人型二足歩行兵器のほとんどが、敵から奪ったものを使っているそうだ。機械が作って戦場に送り込んできた機体。それを今は、俺たちが利用している。
そんな、実態の分からないものを使って大丈夫なのだろうか。不安になる。
「今のところ、敵の機体を使っていて問題は起きていない。敵のシステムは機体から全て引き出して、ハードウェアだけ人間たちが使っている」
それで、機体の中にアクセスできないデータが残されていた、ということなのか。それは、本当に大丈夫なのだろうか。
ある日突然、不具合が起きて大変なことになるかもしれない。ブービートラップとか、そういう類のものを仕込まれている可能性があるかも。
それが、この実態のわからないデータなのでは。
「ソフトウェアは、ちゃんと人間が作った物を使用している。だから、なんとか今はやれている、という感じだな」
機体の整備について学んだことにより知ることが出来た、あまり知りたくなかった事実だった。
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