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4周目(異世界ファンタジー:部族ハーレム)
第57話 元族長の余生
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族長の座を息子の1人に受け継がせて、俺はナジュラ族の戦士の一人という立場に戻った。まだ俺は若いし、ナジュラ族の族長として働けたと思う。だが新しい族長に早く立場を受け継がせることにより、経験を積んでもらおうと考えたから。
俺は元族長になったが、妻は沢山いる状況に変わりはない。彼女たちを食べさせていくためにも、働かないといけない。そこで俺は久しぶりに、狩りの仕事についた。
親友のシハブと成果を競い合ったり、ラナと2人きりでデートのようにして狩りを楽しんだりもした。ナジャーと一緒に子どもたちの服を作ったり、まだ幼い子たちの訓練内容を考えてみたり。これが、第二の人生というものかな。今まで俺は、人生を何度も繰り返しているけれども。
これまでに歩んできた族長としての人生に区切りをつけて、新たな環境と心持ちで新たな人生を歩み始めた。
族長となった息子のタリヒルに対して、親であり元族長という俺は余計な口出しはしなかった。困ったことがあれば彼の仲間たちも助けてくれるだろうし、大丈夫だと信じて。静かに彼らを見守った。
息子のタリヒルには、立派な族長になれるよう頑張ってもらう。何か問題が起きた場合にはサポートするし、必要なら協力するつもりだ。けれど、なるべく自分の力で解決するようにと伝えてある。なので基本的には、無干渉を貫いた。
時は流れて、息子や娘たちにも子供が出来ていった。つまり、俺の孫ということ。孫が生まれると、自分の子供が生まれた時に感じた喜びや、感謝という気持ちが胸に湧いた。とても可愛いので、あまり干渉しすぎないように注意して、全力で自制心を働かせる必要があるぐらいだった。
孫が成長していくとともに、俺の妻たちは年老いて、先立っていくことが増えた。何人もの妻たちを見送った。
多くの妻を持った分、今までの人生の中で幸せな記憶も多いけれども、こういった出来事が続いてしまって、精神的に辛かった。
「ごめんね、リヒト様……もう一緒に居られなくて」
寝具の上で横になって、暗い表情を浮かべるナジャーの手をギュッと握って、俺は彼女に伝えた。
「ナジャー、俺は君と出会えて本当に良かったよ。ナジャーと一緒になれて、最高の人生を送っている。ありがとう」
「わぁ……、嬉しい」
それから俺は、彼女の細くなった体をやさしく、しかし、しっかりと抱きしめた。ナジャーも、精一杯の力で応えてくれた。
こうして、初めての妻となってくれたナジャーは、先に逝ってしまった。
しかし、彼女たちの最期の姿は神々しかった。顔に苦しみはなく人生を全うした、というような清々しさに満ちていた。
今度こそ俺も、彼女たちと同じような表情を浮かべて死んでいけるのだろうか。
さらに、時間が流れる。
どうやら、魔力のコントロールを覚えると老化が遅くなるらしい。どういう仕組みなのか分からないけれど、80歳を超える年の割に、まだまだ俺の見た目は若々しいままだった。白髪混じりの中年男性、という感じで老人らしさが無い。
妻のラナも俺と同じように、若々しい見た目を維持していた。しかし、老化が遅くなるというだけのようだ。流れる時間に逆らうことは出来ないし、年齢には勝てないようだ。人間は、いつか死ぬ時が来る。
そして、彼女もとうとう、その時が来た。
「ありがと、ね」
横になっているラナは、俺に感謝の言葉を口にした。
「何がだい?」
「リヒトが戦い方を教えてくれたから。アタシ、とっても強くなれたと思う」
俺と彼女の出会い。力比べで乱入してきて出会って、それから俺が彼女に戦い方を教えることになった。そんな遠い過去を、2人で懐かしみながら話した。
「ナジュラ族の女たちの中では、お前が一番だろうな。男にも負けなかった」
「うん。リヒトのおかげだよ」
彼女は、本当に強かった。剣の腕はもちろんのこと、魔法の才能もあった。戦いの最中でも、状況を判断が出来る冷静さを持っていた。それは、天性のものだった。
俺は、彼女の才能を磨くために少し手助けしただけ。努力の成果もあるけれども、元々持っていた素質が大きかったと思う。
「それはよかった」
「また、生まれ変わって、リヒトと一緒になれたら良いのにな」
ラナがポツリと呟いた。俺はもう、生まれ変わりたいとは思わなかったが、彼女の言葉に頷いて同意した。
「俺も、そう思う。次の人生でも、ラナと一緒になりたい」
「じゃあ、約束しよう」
そう言って、彼女が小指を差し出した。俺は、その指に自分の小指を絡める。
「あぁ、約束する」
「ふふっ」
彼女の微笑みを見ていると、自然と俺の顔も綻んだ。
「じゃあ、お先に」
彼女は軽口をたたくような口調で言って、俺より先に逝ってしまった。妻となってくれた女性たち全員を見送り、俺は1人となった。
さらに時間は流れた。ひ孫の子供である、玄孫まで生まれてくるほどの長い時間を俺は生きてきた。
しかし、ようやく。
周りには血縁関係のある子供たちが居て、床に寝ている俺は囲まれていた。とてもにぎやかだった。
「後は任せた」
それだけ言うと、俺は静かに目を閉じた。
周りが騒がしくなったが、反応することはもう出来ない。何度目かになる死だったが、今まで経験してきた死の中では一番、穏やかな死だろうと思った。
穏やかな精神。今度こそ、転生人生は終われるのかな。
目標にしていた通り、長生きした。しかも、死ぬまでずっと幸せだと言えるような状態で人生を終えた。これまで、転生を繰り返してきたが、初めてちゃんと最期まで生きて、これ以上はないというぐらいに、しっかりと人生を終わらせた。
俺の、転生を繰り返す人生は、これで終わりだろう。
「この子が、リヒト。生まれてきてくれて、ありがとう」
「……」
そう思っていたのだが、また俺は赤ん坊の姿に戻っていた。再び見知らぬ女性の、腕の中に抱かれている。いつも通りの見慣れた景色。
今度は一体、どこだろうか。俺の人生に、終わりはあるのだろうか。
俺の疑問に、誰も答えてはくれなかった。
俺は元族長になったが、妻は沢山いる状況に変わりはない。彼女たちを食べさせていくためにも、働かないといけない。そこで俺は久しぶりに、狩りの仕事についた。
親友のシハブと成果を競い合ったり、ラナと2人きりでデートのようにして狩りを楽しんだりもした。ナジャーと一緒に子どもたちの服を作ったり、まだ幼い子たちの訓練内容を考えてみたり。これが、第二の人生というものかな。今まで俺は、人生を何度も繰り返しているけれども。
これまでに歩んできた族長としての人生に区切りをつけて、新たな環境と心持ちで新たな人生を歩み始めた。
族長となった息子のタリヒルに対して、親であり元族長という俺は余計な口出しはしなかった。困ったことがあれば彼の仲間たちも助けてくれるだろうし、大丈夫だと信じて。静かに彼らを見守った。
息子のタリヒルには、立派な族長になれるよう頑張ってもらう。何か問題が起きた場合にはサポートするし、必要なら協力するつもりだ。けれど、なるべく自分の力で解決するようにと伝えてある。なので基本的には、無干渉を貫いた。
時は流れて、息子や娘たちにも子供が出来ていった。つまり、俺の孫ということ。孫が生まれると、自分の子供が生まれた時に感じた喜びや、感謝という気持ちが胸に湧いた。とても可愛いので、あまり干渉しすぎないように注意して、全力で自制心を働かせる必要があるぐらいだった。
孫が成長していくとともに、俺の妻たちは年老いて、先立っていくことが増えた。何人もの妻たちを見送った。
多くの妻を持った分、今までの人生の中で幸せな記憶も多いけれども、こういった出来事が続いてしまって、精神的に辛かった。
「ごめんね、リヒト様……もう一緒に居られなくて」
寝具の上で横になって、暗い表情を浮かべるナジャーの手をギュッと握って、俺は彼女に伝えた。
「ナジャー、俺は君と出会えて本当に良かったよ。ナジャーと一緒になれて、最高の人生を送っている。ありがとう」
「わぁ……、嬉しい」
それから俺は、彼女の細くなった体をやさしく、しかし、しっかりと抱きしめた。ナジャーも、精一杯の力で応えてくれた。
こうして、初めての妻となってくれたナジャーは、先に逝ってしまった。
しかし、彼女たちの最期の姿は神々しかった。顔に苦しみはなく人生を全うした、というような清々しさに満ちていた。
今度こそ俺も、彼女たちと同じような表情を浮かべて死んでいけるのだろうか。
さらに、時間が流れる。
どうやら、魔力のコントロールを覚えると老化が遅くなるらしい。どういう仕組みなのか分からないけれど、80歳を超える年の割に、まだまだ俺の見た目は若々しいままだった。白髪混じりの中年男性、という感じで老人らしさが無い。
妻のラナも俺と同じように、若々しい見た目を維持していた。しかし、老化が遅くなるというだけのようだ。流れる時間に逆らうことは出来ないし、年齢には勝てないようだ。人間は、いつか死ぬ時が来る。
そして、彼女もとうとう、その時が来た。
「ありがと、ね」
横になっているラナは、俺に感謝の言葉を口にした。
「何がだい?」
「リヒトが戦い方を教えてくれたから。アタシ、とっても強くなれたと思う」
俺と彼女の出会い。力比べで乱入してきて出会って、それから俺が彼女に戦い方を教えることになった。そんな遠い過去を、2人で懐かしみながら話した。
「ナジュラ族の女たちの中では、お前が一番だろうな。男にも負けなかった」
「うん。リヒトのおかげだよ」
彼女は、本当に強かった。剣の腕はもちろんのこと、魔法の才能もあった。戦いの最中でも、状況を判断が出来る冷静さを持っていた。それは、天性のものだった。
俺は、彼女の才能を磨くために少し手助けしただけ。努力の成果もあるけれども、元々持っていた素質が大きかったと思う。
「それはよかった」
「また、生まれ変わって、リヒトと一緒になれたら良いのにな」
ラナがポツリと呟いた。俺はもう、生まれ変わりたいとは思わなかったが、彼女の言葉に頷いて同意した。
「俺も、そう思う。次の人生でも、ラナと一緒になりたい」
「じゃあ、約束しよう」
そう言って、彼女が小指を差し出した。俺は、その指に自分の小指を絡める。
「あぁ、約束する」
「ふふっ」
彼女の微笑みを見ていると、自然と俺の顔も綻んだ。
「じゃあ、お先に」
彼女は軽口をたたくような口調で言って、俺より先に逝ってしまった。妻となってくれた女性たち全員を見送り、俺は1人となった。
さらに時間は流れた。ひ孫の子供である、玄孫まで生まれてくるほどの長い時間を俺は生きてきた。
しかし、ようやく。
周りには血縁関係のある子供たちが居て、床に寝ている俺は囲まれていた。とてもにぎやかだった。
「後は任せた」
それだけ言うと、俺は静かに目を閉じた。
周りが騒がしくなったが、反応することはもう出来ない。何度目かになる死だったが、今まで経験してきた死の中では一番、穏やかな死だろうと思った。
穏やかな精神。今度こそ、転生人生は終われるのかな。
目標にしていた通り、長生きした。しかも、死ぬまでずっと幸せだと言えるような状態で人生を終えた。これまで、転生を繰り返してきたが、初めてちゃんと最期まで生きて、これ以上はないというぐらいに、しっかりと人生を終わらせた。
俺の、転生を繰り返す人生は、これで終わりだろう。
「この子が、リヒト。生まれてきてくれて、ありがとう」
「……」
そう思っていたのだが、また俺は赤ん坊の姿に戻っていた。再び見知らぬ女性の、腕の中に抱かれている。いつも通りの見慣れた景色。
今度は一体、どこだろうか。俺の人生に、終わりはあるのだろうか。
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