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4周目(異世界ファンタジー:部族ハーレム)

第53話 15歳のジンクス

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 族長としてナジュラ族をまとめて、戦士たちの訓練を見て彼らを鍛えていく。特にシハブとラナの2人を手塩にかけて育てて、皆の暮らしを見守っていく。

 ナジュラ族の立派で頼りになる族長として、彼らの暮らしをより良くしていくように努力していた。

 そうこうしている間に年齢を重ねた俺は、とうとう15歳になった。前世の記憶では、15歳という年齢の時に何かが起こっていた。今まで繰り返してきた転生では、どれも同じ年齢の時に人生が終わっていた。

 これは今回も、15歳になった今、何か事件が起きるんじゃないかと心配だった。

 兄に殺されたのも15歳だったし、戦場で失敗して最期に命を振り絞って大魔法を発動させたのも同じ、15歳の時だった。それで次は、どうなるのか。大きな試練が待ち構えているかも。

 改めて、転生について考えてみる。なぜ俺は転生を繰り返しているのか。リヒトという同じ名前が3度も続いたのは、誰かに仕組まれているとしか思えない。

 その誰かは何が目的なのだろうか。俺に、転生を繰り返させる理由とは何だろう。それが分かれば、大きな試練が何なのか見えてくるかもしれない。

 誰かに仕組まれている転生なんだとしたら、15歳の時に死に至るという可能性はあるような気がする。そうする理由までは、よく分からないけれども。

 今回の人生でも、同じように15歳の時に何かが起こるとしたら偶然ではない、と思う。今のところ死に至るような危険は無いようだが。普段の生活から特に用心していた。死は、急にやって来るから。本当に。

 とはいえ、周りを警戒してばかりでは疲れてしまう。普段通りに族長として働き、ナジュラ族の戦士たちやシハブとラナの2人を鍛えていって、自分のトレーニングを積み重ねていく、という日常を過ごしていた。



 春になると、冬眠していた獣が草原に出てくるようになるので、ナジュラ族の皆で狩りに出る。冬の季節を過ごすうちに消費した食料を、商人から買い求める。素材の需要も高まるので、売買が盛んになる。取引が一気に増えて金勘定するのが、意外と大変だった。

 今年は、寒さの厳しい冬に犠牲者を出すことなく、無事乗り越えることが出来た。宴を開く。ナジュラ族の皆で自由に飲み食いして、冬が終わったことを祝う。厳しい時期を超えて、楽しい時期が始まった。

 ここ数年で、ナジュラ族の規模もかなり大きくなってきたけれども、冬の犠牲者が無かったのは奇跡に近い結果だった。めでたい。



 夏になると、住居を移動する。

 草原で生きている我らナジュラ族は、一箇所に定住することなく、居住する場所を一年の間に何度か変える。特に、夏の間の移動が多い。

 住居はそのために、簡単に組み立てと解体が出来るような作りになっている。獣が多く生息していて狩りがしやすかったり、より生活がしやすい場所を求めて、色々な場所へ移動していく。

 他の部族たちも居住する場所を求めて移動しているので、場所の取り合いが起きることもあった。

 基本的に、場所取りは早い者勝ちである。それは部族の規模に関わらず、小勢力の部族が先に場所を取ったら、その部族の場所となる。

 どうしてもという時には、部族同士で交渉して、場所から退いてもらえるように、対価を支払って場所を譲ってもらうこともある。場所を奪い取ろうと、縄張り争いで戦ったりはしない。ただ、同じ規模の部族だと交渉が決裂して戦いが起きる可能性はあるが。基本的に、先に場所を確保していた者たちが有利である。

 住居に適した場所を見つけて住居を組み立てる。移動を終えると、新しい土地での生活が始まる。その土地で獲物を狩り食料を蓄えて、トレーニングする日々を送る。住居や狩りの場所が違えば新鮮味もあって、新たな刺激を受けるのが良い。



 秋になると、冬に備えた本格的な準備を始める。移動住居を冬用に作り変えたり、暖房用の薪を確保して、燃料を補充するのを忘れないようにする。冬を迎えるのに、服装や普段使いの日常品など一つ一つを、不備がないかどうか入念にチェックする。冬に入ってから慌てることがないよう、しっかりと準備を進めていった。

 冬場を過ごしても大丈夫そうな場所を見つけ出して、住居を移動させる。それが、今年最後の移動かな。

 冬の間は商人が拠点に来てくれなくなるので、今のうちに必要なものを買い込んでおかないといけない。今年も、忘れないように買い溜める。冬の季節を迎えるための準備は万端。

 冬になると、獣の多くが冬眠に入るので、狩りはおやすみ。拠点の中で生活して、拠点の外にはあまり行かない。おとなしく、寒さが過ぎ去るのを待つ。他の部族も、同じように過ごしているだろう。草原で一番平和な時期が、冬の期間である。

 ナジュラ族の戦士たちは毎日のように、寒さを吹き飛ばすほどの特訓をしている。冬の間に鍛えて、春を迎えるまで準備する。この冬が過ぎれば、また春になって獣を狩りに行くことが出来るのだから。



「朝だ。意外と、何も起きなかった」

 そんな感じで一年を終えて、俺は無事に何事もなく16歳になる日の朝を迎えた。今までのように15歳の時に死んで人生が終わった、というのは偶然だったのかな。まだ、判断するのには早いだろうか。今回は、特例なのかも。いやでも、分からないかな。

 次の人生でも、今回と同じように15歳を超えることが出来たのなら、偶然だったと言えるのかもしれない。次も同じように、転生出来るとは限らないが。

 いつまで、この繰り返される転生というのが続くのか分からないし。何が条件で、繰り返す転生が終わるのかも分からないまま。死んだだけじゃ、終わらないらしい。

 しかし、15歳以降も生きていけるという喜びは凄いな。その結果に、俺はかなり安心していた。死に対する恐怖よりも、15歳で終わってしまうかもしれないというのが不安だった。でも、その不安は杞憂だった。

 今回こそは、長生きを目指す人生を送ることが出来るのかな。
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