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3周目(異世界ファンタジー:騎士)

第19話 魔力の新たな使い道

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「ん?」

 魔力の消耗について色々と試行錯誤している最中に偶然、新たな方法を見つけた。体内の魔力を全身に行き渡らせた。その時、俺の体は羽が生えたように軽くなった。何だこれは。戸惑いながら、自分の体を触ったりして、チェックしてみる。

 見た目の変化はない。体調も悪くない。むしろ、絶好調だった。

「わっ!? っと!」

 体内の魔力を全身に行き渡らせた状態にして、体を動かしてみる。試しにジャンプしてみたら、身長よりも高い位置まで跳ぶことが出来た。

 軽く力を込めて跳んだだけなのに、自分の想像以上に視線が高くなった。驚いて、空中でバランスを崩す。だけど瞬時に体勢を立て直して、地面に足がついた。着地の瞬間は何事もなく、足に痛みも一切なかった。

 これって、筋力がアップしているのか?

 他にも試してみる。体内の魔力を全身に行き渡らせたまま、軽く走ってみた。さてどうなるのか。

「はやっ!」

 自分でも驚くほどのスピードで走ることが出来た。まるで、風になったみたいに。足が、ビュンビュンと動く。瞬発力や俊敏性もアップしていた。まだ成長していない体で、これほどの能力を発揮することが出来るなんて。明らかに、魔力による効果が出ていた。

「おっ、とと」

 次に、魔力を一点に集める。すると、急に体が重くなった感覚。時間が経過すると徐々に慣れてきて、普通に戻る。後から痛みが出たり、気分が悪くなったりはしないかな。大丈夫そうだ。

 魔力に、こんな使い方があるなんて知らなかった。

 魔力の消耗を軽減するため、魔力をギュッと一点に集めて魔法を発動してみたり、逆に薄く広げてみたり。

 そんな試行錯誤の中の一つに、体中に行き渡らせるという方法を試してみた結果、発見することが出来た今回の方法。本当に偶然だった。しかし、これはかなり有用な技だと確信した。

 その後、魔力の消耗についての調査は一旦中断して、魔力による身体能力の向上に焦点を当てて調べてみることに。そうすると、新たな発見が色々とあった。

 魔力による身体能力の向上は、魔力を体の外に放出をしない。体の中に留めながら循環させるだけで、効果を発揮する。だから、精神的な疲れは少ない。

 魔力を体に纏わせるようなイメージで、肉体を強化することができる。幼い子供の体でも、大人顔負けのパワーを発揮できるように。

 体の反射神経も上がって、素早く動けるようになり、外部からの衝撃にも強くなる防御にも使える。頑丈さがアップする。

 体の一部分だけに魔力を留める、というのは難しかった。一部分だけに集めたまま体を動かそうとすると、魔力が散ってしまう。だけど、成功すると効果はある。その部分だけ頑丈になったり。あまり使い道が無さそうだから、この練習は後回しかな。

 常に魔力を体に纏わせながら過ごすことで、なんとなく成長も早くなっている気がする。前世よりも、身長の伸びが良いし、筋肉の発達も早い。これは、気のせいかもしれないけれど。でも、身長が高くなった事は嬉しい。これから、どんどん俺の背よ伸びてくれ。

 しかも、外から見ても魔法を発動させているようには見えない。体の奥から溢れる魔力を、体の中で操作しているだけ。だから、他の人から何かしているようには見えないという優れもの。

 しばらくは、誰にも魔法の事について話すつもりはなかったので、これは便利だ。まだまだ、隠しておける。打ち明けるかどうかの判断が、より難しくなったけれど。

 唯一の欠点というか、大変なのが魔力のコントロールだ。上手く扱わないと、体の外に魔力が漏れていって、逆に疲れてしまう。これは、体から魔力が漏れないようにコントロールする練習が必要そうだった。

 前世にはなかった新しい魔法。俺はこれを、身体強化の魔法と名付けた。そして、意識しなくても使えるぐらいのレベルまで訓練した。

 前世の知識をフル活用して、生き残れるように日々努力をする。誰に言われるでもなく一生懸命頑張り、実力を磨いていく。あっという間に俺は、5歳になっていた。アインラッシュ家の戦闘訓練を受けることが出来る年齢になったのだ。
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