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第9話

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 女子寮襲撃事件の後、色々な人達の裁判が行われた。

 まず、イアンの裁判が実施された。罪状は、学園の女子寮に不法侵入をしたこと。殺人未遂、犯罪者との癒着。後に判明したことだが、学園に悪人を招き入れて情報を収集させたりしていた。

 それで、女子寮の警備兵達の巡回経路や交代時間を事前に調査していた。シエラを襲撃した時、その情報が利用された。

 その他にも色々な学園の情報が、裏社会で広がっていた。イアンの行いによって。当然、イアンは死刑となった。

 そして、ダウズウェル男爵家の当主も罪が問われた。

 ダウズウェル男爵家当主は、イアンの犯罪と無関係であることを主張した。息子が勝手に暴走したことだと。

 けれども、イアンが悪人達を雇う時に支払った資金は、父親から受け取ったものを使っていた。事前に相談もしていたと、イアンは証言している。それで無関係という主張は、聞き入れられなかった。

 ダウズウェル男爵家当主には他にも、領地経営の放棄や商人から多額の借金、税の不当な徴収に脱税など、様々な問題が発覚した。

 ダウズウェル家は取り潰しとなり、一家も処刑されることが決定。裁判が行われてから数週間後に、刑が執行された。

 領主が居なくなったダウズウェル家の領地は、パークス家の領地と統合されることになった。少し前まで、パークス家がダウズウェル家の領地経営に協力していた実績があったので、任されることになったのだ。

 イアンの浮気騒動と、女子寮襲撃の事件はこれで終幕すると思われた。だが本当に大変だったのは、この後からだった。

 イアンの事件がキッカケになり、学園長が責任を追求された。学園や女子寮の危機管理が出来ていない。そんな場所に、令嬢を預けることは出来ない。多くの貴族が、そう考えて学園に通うのを止めさせた。こうして、貴族学園は閉校状態になった。

 これに学園長は反論した。問題はダウズウェル家であること。事件を起こした彼らが一番悪いこと。それから、警備兵達にも問題があった。情報を奪い取られて侵入を許した。今回の事件で責められるべきなのは、彼らであると。

 ダウズウェル家は処刑されて、居なくなった。残った警備兵達に全責任を被せようと、学園長は必死になる。責任を負いたくない警備兵達も必死に反論する。

 学園に令嬢を預けていた貴族達も責任追及の場に加わり、他の学園関係者などにも責任を負わせようと仕向けたり、裁判は泥沼化していく。キッカケとなったシエラと関係ない場所で、問題はどんどん大きくなっていった。

 シエラは関わり合いにならないように自領に引きこもって、領地経営の仕事に集中した。押し付けられた旧ダウズウェル家の領地を立て直すため、やることはたくさんあった。



「これは当分、新しい婚約相手を見つけるのは難しいわね」

 イアンとの関係を精算した、シエラは新しい婚約相手を探し始めていた。しかし、現在の王国の状況を考えると新しい婚約相手を見つけることが非常に困難であることを理解して、表情を曇らせるのだった。
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