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第5話
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一ヶ月後。シエラは色々な手続きを済ませると、ようやく落ち着くことが出来た。婚約破棄の処理も無事に終わって、彼女は自由になった。
学園の中庭で起きた婚約破棄事件は、少しだけ話題になった。イアンが色々と悪さをしていたようで、公爵令嬢にまで手を出していたことが発覚した。
男爵家の子息が、公爵家の令嬢と関係を持つこと。重大な問題だと捉えた公爵家が学園に命じて、真相究明と再発防止のために調査を行わせた。
シエラも呼び出しを受けて、聞き取りが行われた。聞かれたことを正直に話すと、彼女は巻き込まれた被害者だと認められて、早々に解放された。
事件を起こしたイアンは退学処分となり、実家に戻された。
早めに関係を精算していおいて本当によかったと、シエラは思ったのだった。
その日の授業が終わり寮に帰って、実家から送られてきた手紙を確認するシエラ。領地の経営に関する大事な手紙だ。しっかりと内容を読んで、返事を書く。
「お嬢様、どうぞ」
「ありがとう。もうこんな時間なのね」
メイドのライラが紅茶を入れてくれたので、シエラは一旦休憩することに。作業をしている間、かなり集中していたようで外は暗くなっているた
そんな夜も遅い時間に、扉がノックされる。コンコン、と扉を叩く音が部屋の中に響き渡った。
シエラは、怪訝な表情を浮かべる
こんな時間に来客。会う約束をした人物は居ない。嫌な予感がした。ライラが立つ位置を確認してから、シエラは扉の向こう側に居る人物に尋ねた。
「どなた?」
返事がない。シエラはも黙ったまま、扉を警戒し続ける。ノックの音は聞き間違いじゃなく、扉の前に誰か居る気配を感じたから。
すると、ガチャと扉が開いた。入ってきたのは、退学処分になったはずのイアン。実家に帰ったはずだけど、なぜここに。そもそもの話、男の彼はここに入ってきたら駄目な場所なのに。
シエラは混乱しながら、部屋に入ってきたイアンに話しかけた。
「まぁ。ここは、女子寮ですよ。男子禁制の場所なのに入ってくるなんて! 早く、立ち去りなさい」
彼は、どうやって入ってきたのか。許可なんて取ってないだろうから、無断で侵入してきた。しかも、学園を退学している男が。
「待ってくれ。話を聞いてほしい。俺は、彼女たちと浮気していたんじゃないんだ。仲良くしようとしていただけ。将来のためには、仲良くしている貴族は増えたほうが良いだろう。家同士の関係を築く。学園は、そのためにあるんだろ!」
確かに、貴族が交流する場として学園は活用されている側面もあるだろう。だが、それは同性同士の話。異性と友達以上の関係になっていたら、それは浮気だわ。
シエラは、イアンの馬鹿な言い訳を切り捨てた。
「そんな事を言うために、わざわざ女子寮に侵入してきたのですか?」
「浮気のことは謝る。だから、領地への支援を再開してくれ。頼む!」
言葉では謝っているイアン。だけど彼が、内心はイライラしている怒りの感情が、シエラには丸わかりだった。彼は、ただ謝っているフリをしているだけ。
「どうしても駄目か?」
「もう既に、謝っても取り返しのつかない状況ですよ」
後悔しても、もう遅いのに。一ヶ月前に言った通り、派遣していた人員は全て引き揚げ済み。謝ったから戻す、なんてありえない。
シエラが拒否すると、イアンは表情を一変させた。
やはり、謝っていたのは嘘だった。支援を再開して欲しかっただけ。それを彼女に断られたから、嘘を隠すのを止めた。
「そうか。残念だけど、君がそう言うのなら。私も、少し強引な手段を取らなければならない」
シエラは正式な手順を踏んで、常識の範囲内で処理しただけ。なのに、イアンには理不尽に感じられた。
だから、強引な手段を取っても許されるだろうという理解不能な理論を展開する。
イアンが合図すると、薄汚れた格好をした中年男性5人が部屋の中に入ってきた。彼らの卑しい笑い声と、下品な視線を向けられたシエラ。彼女の腕に鳥肌が立った。
学園の中庭で起きた婚約破棄事件は、少しだけ話題になった。イアンが色々と悪さをしていたようで、公爵令嬢にまで手を出していたことが発覚した。
男爵家の子息が、公爵家の令嬢と関係を持つこと。重大な問題だと捉えた公爵家が学園に命じて、真相究明と再発防止のために調査を行わせた。
シエラも呼び出しを受けて、聞き取りが行われた。聞かれたことを正直に話すと、彼女は巻き込まれた被害者だと認められて、早々に解放された。
事件を起こしたイアンは退学処分となり、実家に戻された。
早めに関係を精算していおいて本当によかったと、シエラは思ったのだった。
その日の授業が終わり寮に帰って、実家から送られてきた手紙を確認するシエラ。領地の経営に関する大事な手紙だ。しっかりと内容を読んで、返事を書く。
「お嬢様、どうぞ」
「ありがとう。もうこんな時間なのね」
メイドのライラが紅茶を入れてくれたので、シエラは一旦休憩することに。作業をしている間、かなり集中していたようで外は暗くなっているた
そんな夜も遅い時間に、扉がノックされる。コンコン、と扉を叩く音が部屋の中に響き渡った。
シエラは、怪訝な表情を浮かべる
こんな時間に来客。会う約束をした人物は居ない。嫌な予感がした。ライラが立つ位置を確認してから、シエラは扉の向こう側に居る人物に尋ねた。
「どなた?」
返事がない。シエラはも黙ったまま、扉を警戒し続ける。ノックの音は聞き間違いじゃなく、扉の前に誰か居る気配を感じたから。
すると、ガチャと扉が開いた。入ってきたのは、退学処分になったはずのイアン。実家に帰ったはずだけど、なぜここに。そもそもの話、男の彼はここに入ってきたら駄目な場所なのに。
シエラは混乱しながら、部屋に入ってきたイアンに話しかけた。
「まぁ。ここは、女子寮ですよ。男子禁制の場所なのに入ってくるなんて! 早く、立ち去りなさい」
彼は、どうやって入ってきたのか。許可なんて取ってないだろうから、無断で侵入してきた。しかも、学園を退学している男が。
「待ってくれ。話を聞いてほしい。俺は、彼女たちと浮気していたんじゃないんだ。仲良くしようとしていただけ。将来のためには、仲良くしている貴族は増えたほうが良いだろう。家同士の関係を築く。学園は、そのためにあるんだろ!」
確かに、貴族が交流する場として学園は活用されている側面もあるだろう。だが、それは同性同士の話。異性と友達以上の関係になっていたら、それは浮気だわ。
シエラは、イアンの馬鹿な言い訳を切り捨てた。
「そんな事を言うために、わざわざ女子寮に侵入してきたのですか?」
「浮気のことは謝る。だから、領地への支援を再開してくれ。頼む!」
言葉では謝っているイアン。だけど彼が、内心はイライラしている怒りの感情が、シエラには丸わかりだった。彼は、ただ謝っているフリをしているだけ。
「どうしても駄目か?」
「もう既に、謝っても取り返しのつかない状況ですよ」
後悔しても、もう遅いのに。一ヶ月前に言った通り、派遣していた人員は全て引き揚げ済み。謝ったから戻す、なんてありえない。
シエラが拒否すると、イアンは表情を一変させた。
やはり、謝っていたのは嘘だった。支援を再開して欲しかっただけ。それを彼女に断られたから、嘘を隠すのを止めた。
「そうか。残念だけど、君がそう言うのなら。私も、少し強引な手段を取らなければならない」
シエラは正式な手順を踏んで、常識の範囲内で処理しただけ。なのに、イアンには理不尽に感じられた。
だから、強引な手段を取っても許されるだろうという理解不能な理論を展開する。
イアンが合図すると、薄汚れた格好をした中年男性5人が部屋の中に入ってきた。彼らの卑しい笑い声と、下品な視線を向けられたシエラ。彼女の腕に鳥肌が立った。
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