1 / 10
第1話
しおりを挟む
男爵令嬢のシエラ・パークスには婚約相手が居た。名前はイアン・ダウズウェル。シエラと同じ、男爵家の長男だ。
二人が婚約したのは、シエラが十歳でイアンが十一歳の頃。今から約五年前のことである。領地が隣同士だったパークス家とダウズウェル家は、これから先はお互いに協力していこう、という話し合いが行われた。
その時に、協力関係を結ぶ証として二人の婚約が決まったのだ。
シエラとイアンの二人は、一ヶ月に一度お互いの領地を行き来して、会っていた。その頃からシエラは、結婚してからの生活を想定して精力的に活動するようになっていった。
パークス家やダウズウェル家の領地経営に意見を出して、雇っている使用人たちの仕事を指示したり、雇用条件を見直したり。婚約相手であるイアンの、日頃の態度や振る舞いなどを注意して、次期当主にふさわしい人物になれるように教育した。
最初の頃は、イアンも素直に婚約相手の言うことを聞いていた。だが、歳を重ねていくうちに鬱陶しく思うようになった。
なんで俺が、年下の女にあんな事を言われなくちゃならないのか。
そんな不満を募らせていったイアンは、徐々にシエラのことを避けるようになる。シエラが話しかけても、無視するようになった。顔を合わせる頻度も、徐々に減っていく。シエラも仕事が忙しくなって、イアンのことを気にかける余裕が無かった。
二人の仲が元通りになる前に、イアンが学園に入学する年齢となった。彼は先に、王都にある貴族学園に入学するために、旅立つ。
シエラは、その一年後に入学する予定だった。
領地に残されたシエラは仕事の合間に、王都の学園に居るイアンに手紙を送った。けれども、彼から返事の手紙はなかった。何度も手紙を送ってみたが、一度も返ってくることはなかった。
自分の手紙は読まれたのか、ちゃんと手元に届いているのか。それすら分からないような状況で、シエラはパークス家の領地で一年を過ごした。
ようやくシエラも、学園に入学する年齢になった。イアンの入学から遅れて一年、彼女も貴族学園に入学するため、今まで暮らしてきた領地から旅立った。
久しぶりに婚約者と会える。そんな期待に胸を膨らませていたシエラ。だが、その光景を見て彼女は唖然とする。
ひとつ上の学年で先に入学していたイアンが、シエラとは別の女性とイチャイチャしていたから。入学初日のことだった。
シエラはショックを受けた。一年間頑張って、やっと婚約者と会えると期待して。ようやく会えたと思ったら、裏切られていたなんて。
二人が婚約したのは、シエラが十歳でイアンが十一歳の頃。今から約五年前のことである。領地が隣同士だったパークス家とダウズウェル家は、これから先はお互いに協力していこう、という話し合いが行われた。
その時に、協力関係を結ぶ証として二人の婚約が決まったのだ。
シエラとイアンの二人は、一ヶ月に一度お互いの領地を行き来して、会っていた。その頃からシエラは、結婚してからの生活を想定して精力的に活動するようになっていった。
パークス家やダウズウェル家の領地経営に意見を出して、雇っている使用人たちの仕事を指示したり、雇用条件を見直したり。婚約相手であるイアンの、日頃の態度や振る舞いなどを注意して、次期当主にふさわしい人物になれるように教育した。
最初の頃は、イアンも素直に婚約相手の言うことを聞いていた。だが、歳を重ねていくうちに鬱陶しく思うようになった。
なんで俺が、年下の女にあんな事を言われなくちゃならないのか。
そんな不満を募らせていったイアンは、徐々にシエラのことを避けるようになる。シエラが話しかけても、無視するようになった。顔を合わせる頻度も、徐々に減っていく。シエラも仕事が忙しくなって、イアンのことを気にかける余裕が無かった。
二人の仲が元通りになる前に、イアンが学園に入学する年齢となった。彼は先に、王都にある貴族学園に入学するために、旅立つ。
シエラは、その一年後に入学する予定だった。
領地に残されたシエラは仕事の合間に、王都の学園に居るイアンに手紙を送った。けれども、彼から返事の手紙はなかった。何度も手紙を送ってみたが、一度も返ってくることはなかった。
自分の手紙は読まれたのか、ちゃんと手元に届いているのか。それすら分からないような状況で、シエラはパークス家の領地で一年を過ごした。
ようやくシエラも、学園に入学する年齢になった。イアンの入学から遅れて一年、彼女も貴族学園に入学するため、今まで暮らしてきた領地から旅立った。
久しぶりに婚約者と会える。そんな期待に胸を膨らませていたシエラ。だが、その光景を見て彼女は唖然とする。
ひとつ上の学年で先に入学していたイアンが、シエラとは別の女性とイチャイチャしていたから。入学初日のことだった。
シエラはショックを受けた。一年間頑張って、やっと婚約者と会えると期待して。ようやく会えたと思ったら、裏切られていたなんて。
89
お気に入りに追加
1,323
あなたにおすすめの小説

「婚約破棄してやった!」と元婚約者が友人に自慢していましたが、最愛の人と結婚するので、今さら婚約破棄を解消してほしいなんてもう遅い
時雨
恋愛
とある伯爵家の長女、シーア・ルフェーブルは、元婚約者のリュカが「シーア嬢を婚約破棄にしてやった!」と友人に自慢げに話しているのを聞いてしまう。しかし、実際のところ、我儘だし気に入らないことがあればすぐに手が出る婚約者にシーアが愛想を尽かして、婚約破棄をするよう仕向けたのだった。
その後リュカは自分の我儘さと傲慢さに首を締められ、婚約破棄を解消して欲しいと迫ってきたが、シーアは本当に自分を愛してくれる人を見つけ、結婚していた。
だから今更もう一度婚約して欲しいなんて、もう遅いのですっ!

事故で記憶喪失になったら、婚約者に「僕が好きだったのは、こんな陰気な女じゃない」と言われました。その後、記憶が戻った私は……【完結】
小平ニコ
恋愛
エリザベラはある日、事故で記憶を失った。
婚約者であるバーナルドは、最初は優しく接してくれていたが、いつまでたっても記憶が戻らないエリザベラに対し、次第に苛立ちを募らせ、つらく当たるようになる。
そのため、エリザベラはふさぎ込み、一時は死にたいとすら思うが、担当医のダンストン先生に励まされ、『記憶を取り戻すためのセラピー』を受けることで、少しずつ昔のことを思いだしていく。
そしてとうとう、エリザベラの記憶は、完全に元に戻った。
すっかり疎遠になっていたバーナルドは、『やっと元のエリザベラに戻った!』と、喜び勇んでエリザベラの元に駆けつけるが、エリザベラは記憶のない時に、バーナルドにつらく当たられたことを、忘れていなかった……
父が転勤中に突如現れた継母子に婚約者も家も王家!?も乗っ取られそうになったので、屋敷ごとさよならすることにしました。どうぞご勝手に。
青の雀
恋愛
何でも欲しがり屋の自称病弱な義妹は、公爵家当主の座も王子様の婚約者も狙う。と似たような話になる予定。ちょっと、違うけど、発想は同じ。
公爵令嬢のジュリアスティは、幼い時から精霊の申し子で、聖女様ではないか?と噂があった令嬢。
父が長期出張中に、なぜか新しい後妻と連れ子の娘が転がり込んできたのだ。
そして、継母と義姉妹はやりたい放題をして、王子様からも婚約破棄されてしまいます。
3人がお出かけした隙に、屋根裏部屋に閉じ込められたジュリアスティは、精霊の手を借り、使用人と屋敷ごと家出を試みます。
長期出張中の父の赴任先に、無事着くと聖女覚醒して、他国の王子様と幸せになるという話ができれば、イイなぁと思って書き始めます。
巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~
アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

婚約破棄騒動の裏で僕らはのんびりと愛を育む。ありがたいことに出世しました。
うめまつ
恋愛
婚約破棄をした一粒種の皇太子と男爵令嬢がご成婚。皇太子ご夫妻となられた。陛下の采配に下々は大人しく従うだけ。特に側近の一人とは言え、雑用係の僕なんかね。でもまさか皇太子ご夫妻を真似て婚約破棄が流行るなんて。………僕らは巻き込まれたくないなぁ。え?君も婚約破棄してみたい?ちょっと待ってよ!
※会話のみです。コメディ感やテンポの良さなど何もありません。でもこういう地味なイチャイチャを見たくなりました。

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

「お前を愛することはない」と言った夫がざまぁされて、イケメンの弟君に変わっていました!?
kieiku
恋愛
「お前を愛することはない。私が愛するのはただひとり、あの女神のようなルシャータだけだ。たとえお前がどんな汚らわしい手段を取ろうと、この私の心も体も、」
「そこまでです、兄上」
「なっ!?」
初夜の場だったはずですが、なんだか演劇のようなことが始まってしまいました。私、いつ演劇場に来たのでしょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる