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真実※王子視点
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「全軍、とつげきぃぃぃ!」
「や、奴らを止めろ! 早く!」
「駄目です! 止まりません!」
「何をしている! 敵がすぐ近くにッ!」
メーウブ帝国の兵士たちが、一斉に突撃してきた。その鬼気迫った勢いに飲まれるグレムーン王国の兵士たち。馬上で慌てて、敵を止めろと指示を出すクライブ王子。けれども、メーウブ帝国の兵士たちの勢いは止められない。
メーウブ帝国の兵士とグレムーン王国の兵士は、比べ物にならないぐらい戦闘力に差があった。
「そのまま、ヤレ! ヤレ! ヤレェェェ!」
「うぉぉぉぉぉ!」
「あ、ぐうぅぅ」
「クライブ様ッ!」
敵の勢いを止められず、大将であったクライブ王子が攻撃された。敵の放った矢が肩に刺さって落馬する。
自分たちの大将が攻撃される様子を目撃したグレムーン王国の兵士たちが動揺し、攻撃の手が止まる。すかさず突撃するメーウブ帝国の兵士たち。グレムーン王国軍は一気に瓦解した。
「大将を発見した! 拘束する」
「抵抗した者は斬る!」
「うっぐっ……」
クライブ王子は、敵の兵士にあっさり捕まってしまった。グレムーン王国の大将が生け捕りにされて、戦いは終わる。
戦いの準備をする時間が無くて、装備も悪く士気も低い。メーウブ帝国との戦いに負けるのは必然だった。
「大将を生け捕ったぞ! 戦いは終わりだ! お前ら武器を捨てろ!」
「まだ戦う意志の有る奴は、前に出ろ! 斬ってやるぞ!」
「お前! まだ戦うか?」
「あ、いや。お、俺は戦わない……」
「俺も、い、いやだ……」
「フンッ! グレムーン王国の軟弱者共め……」
戦場に終戦を伝える声が響き渡る。グレムーン王国の兵士たちは、手に持っていた武器をすぐさま放棄した。
「ふむ。貴様がグレムーン王国の王子か」
「……」
クライブ王子は拘束され、敵の本拠地まで連行された。戦いに負けた責任と将来の不安によるストレスで身体はボロボロ。顔色は、とても悪い。
そんな彼と話しているのは、メーウブ帝国の王だった。
「まさか、自ら幸運の女神を手放すとはな。バカな奴だ」
「……幸運の女神とは、何の事だ?」
「お前の婚約者だった女性のことだ」
何のことを言っているのか、クライブ王子には理解できなかった。
「せっかく彼女の特別で偉大な能力を我が物にしようと、何十年も準備をしてきたというのに。お前が手放してしまったことだけは、想定外だ」
メーウブ帝国の王は語った。
「彼女のお陰で、お前には呪いが効きにくかった。彼女の幸運が、お前を守っていたからな」
「ど、どういうことだ?」
「我が国には、未来を予知する占い力が存在する。それだけでなく、呪術師を使った特定の人物を呪って不幸にさせる特殊な力も存在する」
「な、なに……?」
確かに、ルエラに婚約破棄をして国から出ていくように言ってから不運が加速したようにクライブ王子は感じていた。その原因は、メーウブ帝国の王が呪術師を使って呪っていたから。
メーウブ帝国は、占いによって政治や戦争を行っているとは聞いたことがあった。けれど、呪いという力が存在することは知らなかったクライブ王子。
呪いという不確かな力が存在していると、すんなり信じたクライブ王子。今までの自分の状況を振り返って、信じるしかなかった。
まさか、不運だと思っていたのは婚約者だった女性が原因ではなく、他国の呪術師から呪われていることが原因だとは思わなかった。
「それで、幸運の女神は今どこに居る?」
「し、知らない……。もう、他の国に出ていったはずだ」
「はぁ……。元とはいえ、自分の婚約者だった相手なのに行方も知らないのか」
「……」
メーウブ帝国の王の質問には答えられなかった。国から出ていけ、と言ったきり。その後の彼女の動向は、何も気にしていなかった。だから知らない。彼女が今、どうしているのか。
「どうやら俺は、彼女の幸運によって逃げられてしまったようだ。残念だな」
ポツリと呟くようにメーウブ帝国の王は言った。
そんな彼の言葉を耳にして、クライブ王子はジワジワと後悔する気持ちが広がっていった。ルエラに婚約破棄を告げるべきじゃ無かったと。
今さら思っても、もう遅いのだが。
「や、奴らを止めろ! 早く!」
「駄目です! 止まりません!」
「何をしている! 敵がすぐ近くにッ!」
メーウブ帝国の兵士たちが、一斉に突撃してきた。その鬼気迫った勢いに飲まれるグレムーン王国の兵士たち。馬上で慌てて、敵を止めろと指示を出すクライブ王子。けれども、メーウブ帝国の兵士たちの勢いは止められない。
メーウブ帝国の兵士とグレムーン王国の兵士は、比べ物にならないぐらい戦闘力に差があった。
「そのまま、ヤレ! ヤレ! ヤレェェェ!」
「うぉぉぉぉぉ!」
「あ、ぐうぅぅ」
「クライブ様ッ!」
敵の勢いを止められず、大将であったクライブ王子が攻撃された。敵の放った矢が肩に刺さって落馬する。
自分たちの大将が攻撃される様子を目撃したグレムーン王国の兵士たちが動揺し、攻撃の手が止まる。すかさず突撃するメーウブ帝国の兵士たち。グレムーン王国軍は一気に瓦解した。
「大将を発見した! 拘束する」
「抵抗した者は斬る!」
「うっぐっ……」
クライブ王子は、敵の兵士にあっさり捕まってしまった。グレムーン王国の大将が生け捕りにされて、戦いは終わる。
戦いの準備をする時間が無くて、装備も悪く士気も低い。メーウブ帝国との戦いに負けるのは必然だった。
「大将を生け捕ったぞ! 戦いは終わりだ! お前ら武器を捨てろ!」
「まだ戦う意志の有る奴は、前に出ろ! 斬ってやるぞ!」
「お前! まだ戦うか?」
「あ、いや。お、俺は戦わない……」
「俺も、い、いやだ……」
「フンッ! グレムーン王国の軟弱者共め……」
戦場に終戦を伝える声が響き渡る。グレムーン王国の兵士たちは、手に持っていた武器をすぐさま放棄した。
「ふむ。貴様がグレムーン王国の王子か」
「……」
クライブ王子は拘束され、敵の本拠地まで連行された。戦いに負けた責任と将来の不安によるストレスで身体はボロボロ。顔色は、とても悪い。
そんな彼と話しているのは、メーウブ帝国の王だった。
「まさか、自ら幸運の女神を手放すとはな。バカな奴だ」
「……幸運の女神とは、何の事だ?」
「お前の婚約者だった女性のことだ」
何のことを言っているのか、クライブ王子には理解できなかった。
「せっかく彼女の特別で偉大な能力を我が物にしようと、何十年も準備をしてきたというのに。お前が手放してしまったことだけは、想定外だ」
メーウブ帝国の王は語った。
「彼女のお陰で、お前には呪いが効きにくかった。彼女の幸運が、お前を守っていたからな」
「ど、どういうことだ?」
「我が国には、未来を予知する占い力が存在する。それだけでなく、呪術師を使った特定の人物を呪って不幸にさせる特殊な力も存在する」
「な、なに……?」
確かに、ルエラに婚約破棄をして国から出ていくように言ってから不運が加速したようにクライブ王子は感じていた。その原因は、メーウブ帝国の王が呪術師を使って呪っていたから。
メーウブ帝国は、占いによって政治や戦争を行っているとは聞いたことがあった。けれど、呪いという力が存在することは知らなかったクライブ王子。
呪いという不確かな力が存在していると、すんなり信じたクライブ王子。今までの自分の状況を振り返って、信じるしかなかった。
まさか、不運だと思っていたのは婚約者だった女性が原因ではなく、他国の呪術師から呪われていることが原因だとは思わなかった。
「それで、幸運の女神は今どこに居る?」
「し、知らない……。もう、他の国に出ていったはずだ」
「はぁ……。元とはいえ、自分の婚約者だった相手なのに行方も知らないのか」
「……」
メーウブ帝国の王の質問には答えられなかった。国から出ていけ、と言ったきり。その後の彼女の動向は、何も気にしていなかった。だから知らない。彼女が今、どうしているのか。
「どうやら俺は、彼女の幸運によって逃げられてしまったようだ。残念だな」
ポツリと呟くようにメーウブ帝国の王は言った。
そんな彼の言葉を耳にして、クライブ王子はジワジワと後悔する気持ちが広がっていった。ルエラに婚約破棄を告げるべきじゃ無かったと。
今さら思っても、もう遅いのだが。
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