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戦争の気配※王子視点

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「国境付近にメーウブ帝国の兵士が集結しているのは、間違いないようです」
「奴ら、本気で戦争を仕掛けてくる気なのか……ッ」

 顔を真っ青にした部下の報告を聞き、クライブ王子は席から立ち上がって嘆いた。彼が一番、聞きたくなかった情報。だけど現実である。

 戦争になる。なんとか対処しなければならない。

「新たに任命した将軍は、何をしている? なんと言っているんだ?」
「それが、えっと……。まだ兵士たちを出軍させる準備が出来ていないと」
「なに? 出軍の準備ができていない、だと……!?」

 ヘルムート将軍が病死したことにより、新たに将軍を任命した。指揮能力が低く、大切な兵士を任せるのは不安に思っていた。けれども、他に任せられるような人材が居ない。候補の中では一番マシだろう、という選び方で決めた将軍だった。

 だが早速、新たな将軍に任せたことを後悔するクライブ王子。初動から、いきなり失敗するなんて。

「何をのんきにやってるんだ! 準備を急がせろ! 国の危機なんだぞ!」
「は、はい! 急がせます!」
「あ、おい。待て!」

 慌てて、逃げるように部屋から出ていく部下の兵士。まだまだ報告するべきことが残っているはず。地方の貴族たちなど、どういう状況なのか聞きたかった。その前に居なくなってしまった。椅子に腰を下ろして、頭を抱えるクライブ王子。

「あぁ、クソッ! 無能な部下め。アイツはクビだ……ッ」

 イラつきで、歯をギシギシと鳴らすクライブ王子。自分の周りには能力が劣った者たちしか居ない。怒りを超えて悲しみが湧いてくるほど、状況は酷い。

 やはり、どんどん状況が悪化している。まさか、メーウブ帝国が攻めてくるなんて予想していなかった。まだまだ余裕があると思っていた。なぜ、奴らは戦争を仕掛けてきたのか。

 おそらく、王国内で反乱が頻発していることを察知されたからだろう。ヘルムート将軍の病死も極秘にするため、情報を漏らさないように指示を出していた。だけど、それも知られているのだろう。無能な部下ばかりだから、何処からでも情報が漏れてしまう。そう考えるクライブ王子。

「無能な部下に任せていては駄目、ということか」

 今までは、部下たちに指示を出してなんとか状況を動かそうとしていた。だけど、それが駄目なんだと気が付いた。前線に立って、戦いの指揮をする。クライブ王子は椅子から立ち上がって、戦いに出ることを決めた。

 今の、この悲惨な状況を一変させるために自らが動く。それで、ちゃんと解決するはずだから。
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