災厄の婚約者と言われ続けて~幸運の女神は自覚なく、婚約破棄される~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
14 / 26

旅は順調に進み

しおりを挟む
 ヴァルタルとの旅が始まったけれど、私のやる仕事はあまりなかった。ただ、彼と一緒に旅をするだけ。それだけなのに、とても感謝された。

「やはり君は幸運の女神だよ。今までとは比較にならないほど、秘宝に関する情報が効率的に集まっている。君のお陰だ」
「いえ、そんな……」

 一緒に旅を始めてから、秘宝に関する情報が次々と手に入っているらしい。以前と比べると、かなりの情報量らしい。本当かどうか分からないけれども、ヴァルタルは喜んでいたので私も嬉しい。

 秘宝に関する伝説や昔話、ゆかりのあるもの、目撃情報などなど。集まった情報を参考にして、次の目的地を決めていく。旅の終わりは、まだ分からない。

 旅を続ける間、私には特に仕事はない。けれど、私に同行してくれていた使用人やメイドたちがヴァルタルたちの仲間の世話をして活躍していた。

「ヴァルタル様、入手した情報をまとめておきました。確認をお願いします」
「うん。助かるよ、アネル」
「シーヴ様、治療用の薬品を購入しておきました」
「助かるわ、ジーモン」

 私の部下というより、ヴァルタルたちの部下という感じで上手く活用されていた。もちろん私も放置されているわけじゃなく、色々とお世話されて毎日ちゃんと面倒を見てもらっていた。

「ルエラお嬢様、何か不便はございませんか?」
「うん。今は大丈夫、ありがとう」
「何かあれば、すぐにお申し付けください」
「わかった」

 常日頃、色々と気にかけてもらっている。ロウワルノール家の令嬢として暮らしていた頃よりも、ずっと気楽で心地よい生活を送ることが出来ていた。

 各地を旅する間の護衛には、ヴァルタルと彼の仲間たちが活躍してくれた。危険にさらされる事なく、順調な旅を満喫する。

 旅の道中で、偶然にも遭遇してしまった盗賊団をやっつけていくヴァルタルたち。彼らは強く、おそらくグレムーン王国兵士の何倍もの強さがあるのだろう。

 襲ってきた盗賊を相手にして、圧倒していた。

「また、これで報奨金が手に入るな」
「えぇ、そうね。ありがたいことだわ」

 そう言って嬉しそうにするヴァルタルたち。報奨金を受け取り旅の資金は、かなり余裕があった。

「しかし、グレムーン王国の治安はあまり良くないみたいだな」
「秘宝の情報を手に入れたら、さっさと別の国に移動したほうがよさそうですね」
「……」

 ヴァルタルたちがグレムーン王国について話をしていた。もう私には関わり合いのない国になってしまったけれど、以前は密接な関係のあった国である。だから、国が荒れている現状について少しだけ恥ずかしく思ってしまった。

 もう婚約相手ではなくなってしまったけど、元婚約者としてクライブ王子を密かに応援する。私なんかに応援されていると知ったら、不服に思うだろうけれど。

 彼には頑張ってもらって、グレムーン王国を立て直して欲しいと思う。そう思えるだけの余裕が、私にはあった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

婚約破棄、果てにはパーティー追放まで!? 事故死を望まれた私は、第2王子に『聖女』の力を見出され性悪女にざまぁします

アトハ
恋愛
「マリアンヌ公爵令嬢! これ以上貴様の悪行を見過ごすことはできん! 我が剣と誇りにかけて、貴様を断罪する!」  王子から突如突き付けられたのは、身に覚えのない罪状、そして婚約破棄。  更にはモンスターの蔓延る危険な森の中で、私ことマリアンヌはパーティーメンバーを追放されることとなりました。  このまま私がモンスターに襲われて"事故死"すれば、想い人と一緒になれる……という、何とも身勝手かつ非常識な理由で。    パーティーメンバーを追放された私は、森の中で鍋をかき混ぜるマイペースな変人と出会います。  どうにも彼は、私と殿下の様子に詳しいようで。  というかまさか第二王子じゃないですか?  なんでこんなところで、パーティーも組まずにのんびり鍋を食べてるんですかね!?  そして私は、聖女の力なんて持っていないですから。人違いですから!  ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

そちらがその気なら、こちらもそれなりに。

直野 紀伊路
恋愛
公爵令嬢アレクシアの婚約者・第一王子のヘイリーは、ある日、「子爵令嬢との真実の愛を見つけた!」としてアレクシアに婚約破棄を突き付ける。 それだけならまだ良かったのだが、よりにもよって二人はアレクシアに冤罪をふっかけてきた。 真摯に謝罪するなら潔く身を引こうと思っていたアレクシアだったが、「自分達の愛の為に人を貶めることを厭わないような人達に、遠慮することはないよね♪」と二人を返り討ちにすることにした。 ※小説家になろう様で掲載していたお話のリメイクになります。 リメイクですが土台だけ残したフルリメイクなので、もはや別のお話になっております。 ※カクヨム様、エブリスタ様でも掲載中。 …ºo。✵…𖧷''☛Thank you ☚″𖧷…✵。oº… ☻2021.04.23 183,747pt/24h☻ ★HOTランキング2位 ★人気ランキング7位 たくさんの方にお読みいただけてほんと嬉しいです(*^^*) ありがとうございます!

公爵令嬢は婚約破棄に感謝した。

見丘ユタ
恋愛
卒業パーティーのさなか、公爵令嬢マリアは公爵令息フィリップに婚約破棄を言い渡された。

【完結】許婚の子爵令息から婚約破棄を宣言されましたが、それを知った公爵家の幼馴染から溺愛されるようになりました

八重
恋愛
「ソフィ・ルヴェリエ! 貴様とは婚約破棄する!」 子爵令息エミール・エストレが言うには、侯爵令嬢から好意を抱かれており、男としてそれに応えねばならないというのだ。 失意のどん底に突き落とされたソフィ。 しかし、婚約破棄をきっかけに幼馴染の公爵令息ジル・ルノアールから溺愛されることに! 一方、エミールの両親はソフィとの婚約破棄を知って大激怒。 エミールの両親の命令で『好意の証拠』を探すが、侯爵令嬢からの好意は彼の勘違いだった。 なんとかして侯爵令嬢を口説くが、婚約者のいる彼女がなびくはずもなく……。 焦ったエミールはソフィに復縁を求めるが、時すでに遅し──

【完結】いつも私をバカにしてくる彼女が恋をしたようです。〜お相手は私の旦那様のようですが間違いはございませんでしょうか?〜

珊瑚
恋愛
「ねぇセシル。私、好きな人が出来たの。」 「……え?」 幼い頃から何かにつけてセシリアを馬鹿にしていたモニカ。そんな彼女が一目惚れをしたようだ。 うっとりと相手について語るモニカ。 でもちょっと待って、それって私の旦那様じゃない……? ざまぁというか、微ざまぁくらいかもしれないです

馬鹿王子は落ちぶれました。 〜婚約破棄した公爵令嬢は有能すぎた〜

mimiaizu
恋愛
マグーマ・ティレックス――かつて第一王子にして王太子マグーマ・ツインローズと呼ばれた男は、己の人生に絶望した。王族に生まれ、いずれは国王になるはずだったのに、男爵にまで成り下がったのだ。彼は思う。 「俺はどこで間違えた?」 これは悪役令嬢やヒロインがメインの物語ではない。ざまぁされる男がメインの物語である。 ※『【短編】婚約破棄してきた王太子が行方不明!? ~いいえ。王太子が婚約破棄されました~』『王太子殿下は豹変しました!? 〜第二王子殿下の心は過労で病んでいます〜』の敵側の王子の物語です。これらを見てくだされば分かりやすいです。

婚約者はメイドにご執心、婚約破棄して私を家から追い出したいそうです。

coco
恋愛
「婚約破棄だ、この家を出て行け!」 私の婚約者は、メイドにご執心だ。 どうやらこの2人は、特別な関係にあるらしい。 2人が結ばれる為には、私が邪魔なのね…。 でもそうは言うけど、この家はすでに私の物よ? あなたは何も知らないみたいだから、教えてあげる事にします─。

婚約破棄を要求されましたが、俺に婚約者はいませんよ?

紅葉ももな(くれはももな)
恋愛
長い外国留学から帰ってきたラオウは、突然婚約破棄を要求されました。 はい?俺に婚約者はいませんけど?  そんな彼が幸せになるまでのお話。

処理中です...