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思わぬ収穫
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「シーヴ、彼女を診てやってくれ」
「分かりました」
ヴァルタルに指示されて前に出てきたのは美しい女性だった。彼女なのだろうか。もしかして、妻なのかもしれない。2人の間には親しそうな雰囲気があった。
「シーヴです。よろしくおねがいします」
「あ、ルエラです」
彼女は無表情のまま丁寧に自己紹介してくれた後、私は身体をあちこち診られた。怪我をしてないか、何処か痛めていないか。どうやら彼女は医者らしい。
「問題はないようですね。馬車から落ちたのを見ていましたが、怪我一つないです。運が良い」
「えっと、ありがとうございます……?」
私と一緒に同行していた使用人やメイドたちの状態も診てもらった。幸運なことに、彼ら全員が怪我もせずに無事だったらしい。
ヴァルタルには、他にも6人ほど仲間が居た。おそらく彼らは冒険者なのだろう。土地を荒らすモンスターを退治したり、商人の護衛をしたりする。そんな職業があると聞いたことがある。
「コイツらは、おそらくトゥナノ盗賊団ですね。前の街で噂になっているのを聞きました」
「なら、死体を持って帰れば報酬金が出るかな」
「えぇ。顔も分かるんで、運んで帰りましょう」
「情報によると、近くにアジトがあるはずです」
「うん。そっちも捜索しておこうか。パーティーを2組に分けるか。彼女たちの護衛に1人置いて、俺たちはトゥナノ盗賊団のアジト探索に行こう」
「なら、私が彼女たちの護衛に付くわ」
「わかった。そっちは頼んだ、シーヴ」
ヴァルタルが中心になって、仲間たちに指示を出していく。そして、シーヴが1人護衛として残ってくれるらしい。医術だけでなく、戦うことも出来るのかと驚いた。
「ルエラお嬢様。我々は、盗賊に壊された馬車を片付けます」
「えぇ。お願いします」
盗賊に弓矢で無理やり止められた馬車は、木に衝突してバラバラになっていた。
私たちは、馬車の外に放り出されたから助かった。乗ったままだと、怪我するだけじゃ済まなかったかもしれない。運が良かったのだろうか。
婚約者だったクライブ王子に昔から、私が一緒にいると不運に見舞われると言われ続けてきた。運が良かった、と思えるような出来事は初めてだった。いろいろと状況が変わって、私の運の向きが変わったとうことだろうか。
いやいや、運なんて不確かな出来事を信じるのか。そんな考え事をしている間に、使用人たちが働いてくれた。
もう走らせることは出来そうにない壊れた馬車を確認したり、殺されてしまった馬を供養している。
盗賊のアジトを確認しに行ったヴァルタルたちは、すぐに戻ってきた。
「馬車を見つけたぞ。これで近くにある街まで行こう」
2台の馬車を操って、彼らは戻ってきた。盗賊のアジトにあったという馬車を持ってきたらしい。
「君たちも乗って」
「私たちも、一緒に行ってよろしいのですか?」
「もちろんだよ。助けに入ったんだから、最後まで面倒を見るつもりだ」
「ありがとうございます」
私は、ヴァルタルに頭を下げてお礼を言う。心の底から助かった、という気持ちで感謝を伝えた。
ということで彼らが見つけてきてくれた馬車に乗せてもらって、近くにあるという街に向かうことになった。
「分かりました」
ヴァルタルに指示されて前に出てきたのは美しい女性だった。彼女なのだろうか。もしかして、妻なのかもしれない。2人の間には親しそうな雰囲気があった。
「シーヴです。よろしくおねがいします」
「あ、ルエラです」
彼女は無表情のまま丁寧に自己紹介してくれた後、私は身体をあちこち診られた。怪我をしてないか、何処か痛めていないか。どうやら彼女は医者らしい。
「問題はないようですね。馬車から落ちたのを見ていましたが、怪我一つないです。運が良い」
「えっと、ありがとうございます……?」
私と一緒に同行していた使用人やメイドたちの状態も診てもらった。幸運なことに、彼ら全員が怪我もせずに無事だったらしい。
ヴァルタルには、他にも6人ほど仲間が居た。おそらく彼らは冒険者なのだろう。土地を荒らすモンスターを退治したり、商人の護衛をしたりする。そんな職業があると聞いたことがある。
「コイツらは、おそらくトゥナノ盗賊団ですね。前の街で噂になっているのを聞きました」
「なら、死体を持って帰れば報酬金が出るかな」
「えぇ。顔も分かるんで、運んで帰りましょう」
「情報によると、近くにアジトがあるはずです」
「うん。そっちも捜索しておこうか。パーティーを2組に分けるか。彼女たちの護衛に1人置いて、俺たちはトゥナノ盗賊団のアジト探索に行こう」
「なら、私が彼女たちの護衛に付くわ」
「わかった。そっちは頼んだ、シーヴ」
ヴァルタルが中心になって、仲間たちに指示を出していく。そして、シーヴが1人護衛として残ってくれるらしい。医術だけでなく、戦うことも出来るのかと驚いた。
「ルエラお嬢様。我々は、盗賊に壊された馬車を片付けます」
「えぇ。お願いします」
盗賊に弓矢で無理やり止められた馬車は、木に衝突してバラバラになっていた。
私たちは、馬車の外に放り出されたから助かった。乗ったままだと、怪我するだけじゃ済まなかったかもしれない。運が良かったのだろうか。
婚約者だったクライブ王子に昔から、私が一緒にいると不運に見舞われると言われ続けてきた。運が良かった、と思えるような出来事は初めてだった。いろいろと状況が変わって、私の運の向きが変わったとうことだろうか。
いやいや、運なんて不確かな出来事を信じるのか。そんな考え事をしている間に、使用人たちが働いてくれた。
もう走らせることは出来そうにない壊れた馬車を確認したり、殺されてしまった馬を供養している。
盗賊のアジトを確認しに行ったヴァルタルたちは、すぐに戻ってきた。
「馬車を見つけたぞ。これで近くにある街まで行こう」
2台の馬車を操って、彼らは戻ってきた。盗賊のアジトにあったという馬車を持ってきたらしい。
「君たちも乗って」
「私たちも、一緒に行ってよろしいのですか?」
「もちろんだよ。助けに入ったんだから、最後まで面倒を見るつもりだ」
「ありがとうございます」
私は、ヴァルタルに頭を下げてお礼を言う。心の底から助かった、という気持ちで感謝を伝えた。
ということで彼らが見つけてきてくれた馬車に乗せてもらって、近くにあるという街に向かうことになった。
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