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救援

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「戦うつもりの無い奴は地面に伏せろ! 襲われていた者たちも!」
「クソッ! 誰だ! 出てこいッ!」

 姿を見せない何者か、若い男の声が森の中に響き渡る。私は、その声の指示に従い地面に伏せた。誰か分からないが、指示に従ったほうが良いだろうと瞬時に感じて。

 盗賊の男たちは必死に、声の正体を探ろうとあちこちに視線を向けて探し出そうとする。森の中、木々の間から聞こえてくる声。正体は、まだ分からない。

 そしてまた、聞こえてくる正体不明の若い男性の声。

「斉射!」
「ぐあっ!?」
「ぎゃっ!?」
「うげっ!?」
「ひっ!?」

 頭上を、ヒュンヒュンと音を鳴らして弓矢が飛んでいく。そして、私たちを襲った盗賊たちの悲鳴とうめき声。バタバタと地面に倒れていく男たち。私は恐怖で身体を縮こませて地面の上で丸くなった。私の口からも、小さな悲鳴が漏れる。

「うぅぅぅ」
「いたい、いたいぃぃ」
「い、一体、だれだぁ……」

 どれくらい時間が経ったのだろうか。ほんの数秒なのか、それとも数分は経ったのだろうか。私の時間感覚は、恐怖によって狂ってしまっていた。

「大丈夫か?」

 身動き取れずに頭を抱えて丸まったままの状態で居ると、先ほど地面に伏せるように言ってきた若い男の声が間近に聞こえてきた。顔を上げる。

「あっ……」
「ん?」

 視線の先に、褐色肌で黒髪の青年が立っていた。ひと目見てすぐに、この国の人間ではないことが分かる見た目。

 スラリとした長身。精悍でありながら高貴そうで優美な顔付き。そんな彼の金色の目が、私の顔をジッと見つめてくる。カーっと、顔が熱くなるのを感じた。

 しばらく、彼の顔に見惚れてしまった。なんて綺麗な顔をした男の人なのだろうかと思って。

「あっ! だ、大丈夫です」

 気を取り直した時、慌てて返事をする。変な声が出てしまった。怪しく思われたのではないか。

「手を」
「あぅ。ありがとう、ございます」

 地面に倒れていた私の目の前に、美しい青年が手を差し伸べてくれた。私は感謝の言葉を口にしながら、彼の手を握る。

「きゃっ!?」
「おっと、すまない」
「ご、ごめんなさい」

 繋いだ手を力強く引っ張り、地面の上に立たせてくれた。勢い余って、彼の身体にもたれ掛かってしまった。慌てて彼の近くから離れた私は、謝りながら顔を伏せる。

「怪我は無いかい?」
「多分、大丈夫、です」
「それは良かった」

 先ほどとは違った緊張で、彼との会話がおぼつかない。絶対、変に思われている。だけど緊張して、普通に会話することが出来ない。

「俺の名は、ヴァルタル」
「あ。私は、ルエラです」
「ルエラか。美しい君によく似合った、良い名前だ」
「そ、そんなことはないと思いますが。……ありがとうございます」

 青年に名前を褒めてもらった。嬉しい気持ちと恥ずかしい気持ちが混ざりあって、どう反応するべきなのか分からない。とりあえず、感謝だけ伝えて黙ってしまった。
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