災厄の婚約者と言われ続けて~幸運の女神は自覚なく、婚約破棄される~

キョウキョウ

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厄を払って心機一転※王子視点

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「これで、ようやく仕事に集中することが出来るな」

 ルエラとの婚約関係を解消した後に、気持ちを新たにして仕事を始めることにしたクライブ王子。本来ならグレムーン王国の最高権力者であるサディアス王がするべき仕事を、クライブ王子が代わりにこなしていた。

 現在、サディアス王は病にふせっている。代わりとして、1年ほど前から王位継承順位1位であるクライブ王子がメインとなって国を動かしていた。

 この機会をうまく活用して、王子は次期王として相応しいことをグレムーン王国の国民たちに示そうと必死に活動してきた。将来を見据えて、王国を豊かにするための重大な決断を繰り返し行ってきた。

 けれど今のところ、彼の思うようには出来ていなかった。

 各地方の治安が、かなり悪化している。貴族たちの領地運営が失敗が続き、領民の不平不満が噴出していた。貴族の指揮する領兵だけでは抑えることが出来ないほどの反乱が頻発していた。

 失敗した貴族たちが解決するべき問題だろうと言ってやりたいが、放置することは出来ない。

 各地方で起こった反乱を鎮圧するため、王国軍の出動が何度も繰り返し行われた。今のところ何とか抑えることは出来ている。しかし、軍費をどんどん浪費していた。それだけでなく、王族と貴族の関係も不安定になってきている。

 他国との関係も、徐々に不穏な空気が漂い始めていた。

 隣国のメーウブ帝国は、軍備増強に積極的だという噂も流れてきていた。あの国のターゲットが、グレムーン王国に向けられた時にどうするのか。今の状況で他国からの侵略を食い止められるのだろうか。そんな、大きな不安の種を抱いている状態である。

 我がグレムーン王国を取り巻く様々な状況は、最悪だった。

 だが、クライブ王子は未来に希望を持っていた。今まで上手くいかなかったのは、災厄の婚約者であるルエラという存在が身近に居たから。

 少し前までは、自分の実力を発揮して不運にも負けないように国を治めようと努力してきた。しかし、実力ではどうにも出来ない事があると認識するべきだった。運が悪くて、国家運営が上手くいかない。そう王子は考えて、ルエラとの関係を続けようと努力してきたことを後悔した。

 彼女との関係など、さっさと解消するべきだった。時間を無駄にしてしまった。

 王としての仕事を始めてから1年が経ち、それまでの認識を改めたクライブ王子。さっさと婚約相手との関係を解消しようと、各方面に働きかけた。

 そして先日、ようやく婚約を破棄して彼女との関係を断ち切った。不運を払うことが出来た。

 国家運営に関して、不安要素の排除は完了した。後は、実力を示して国を運営していくだけ。そう考えて、王子は未来に希望を持っていた。

 クライブ王子は、グレムーン王国がこんな最悪な状況に陥ってしまっている原因はルエラが災厄をもたらしたせいであると、本気で考えていた。

「よし、やるぞ」

 気合を入れる。そしてクライブ王子は、仕事を始めるのだった。
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