帰還勇者の盲愛生活〜異世界で失った仲間たちが現代で蘇り、俺を甘やかしてくる~

キョウキョウ

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ハヤトの新しい仕事

第19話 大会観戦

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 剛との仕事を無事に終えたハヤトは、日本に帰国した後に大事な予定があった。

 莉々が所属しているバドミントン部が都大会に出場するという。彼女が出場することを聞いた時から、応援に行こうと決めていた。

 仕事が長引かなくてよかった。長引いていたら、今日は見に来れなかったな。そんな事を考えながら、ハヤトは会場となる体育館に向かっていた。

 会場に到着すると、既に多くの観客で賑わっていた。親御さんらしき大人たちや、制服姿の高校生たちが次々と会場に入っていく。ハヤトも列に並び、中に入った。

 広い体育館の中央には複数のコートが設置され、それぞれで熱戦が繰り広げられていた。観客席は半分ほど埋まっており、選手や観戦者たちの応援する声が飛び交う活気ある雰囲気に包まれていた。

 会場内を見渡していたハヤトの目に、一人の少女が飛び込んできた。青と白のユニフォームに身を包み、金色の髪をポニーテールにまとめた莉々だ。彼女はコート脇で準備運動をしていたが、ふと顔を上げた瞬間、ハヤトと目が合った。

 彼女の表情が一瞬で輝くのが見えた。

 莉々はチームメイトに一言告げると、小走りでハヤトの元へと駆け寄ってきた。その目には、喜びの光が宿っていた。

「ハヤト、来てくれたんですね?」

 彼女の声は高揚感に満ちていた。

「もちろん。約束していたからね」

 ハヤトは微笑みながら、そして励ますように言った。

「今日は頑張って」
「はい!」

 莉々は、試合に向けてやる気をみなぎらせる。

「こんにちは、ハヤトさん」

 二人が会話する合間に、優しい声が聞こえた。振り向くと、そこには莉々と同じ金髪に碧眼を持つ美しい女性が立っていた。

「お母さん!」

 莉々の母親である高橋エレナだ。ハヤトは彼女と面識があった。夜遅くなってしまって莉々を家まで送った時に、何度か顔を合わせたことがあったから。ちなみに、莉々の父親とも面識がある。

「どうも、エレナさん」

 ハヤトは丁寧に頭を下げた。

「今日は娘のために応援に来てくださって、ありがとうございます」

 エレナも礼儀正しく会釈を返す。彼女の顔には娘とよく似た、優しい微笑みが浮かんでいた。

「この子、ハヤトさんが大会の応援に来てくれって、楽しみにしていたんですよ」
「もう、お母さん!」

 莉々は顔を赤らめて母親を軽く睨んだ。しかし、その表情には照れ隠しの可愛らしさがあった。

「えっと……それじゃあ私、試合の準備があるから行くね」

 彼女は恥ずかしさを隠すように言った。

「莉々なら勝てる。練習した成果を見せてくれ」

 ハヤトは彼女を見送りながら、力強く言った。

「頑張ってね。怪我だけはないように気を付けて」

 エレナも娘に声をかけた。彼女の言葉には、娘を思う母親としての深い愛情が込められていた。

 莉々が仲間の元へ戻っていくのを見送った後、ハヤトとエレナの二人だけになった。周囲を見回すと、選手の両親、年配の夫婦や若い学生たちなど、様々な観客が続々と席に着いていく。

「エレナさん、俺も一緒に見学していいですか?」

 ハヤトが尋ねた。いい年した男が一人で高校女子の試合を見ているのは、ちょっと不審に思われるかもしれない。そう考えると、誰かと一緒に観戦する方が無難だと思ったから。

 どうやらエレナも一人のようだったので、一緒に大会を観戦していいかを聞いてみた。

「もちろん、いいですよ」

 エレナは微笑みながら答えた。

「一緒に応援しましょう」

 二人は観客席へと向かうと、ちょうど良い位置を見つけたので腰を下ろした。程なくして、アナウンスが会場に響き、試合開始が告げられた。

 莉々の試合は、もう少し後のようだ。行われている試合を見ながら、バドミントンの試合の流れを把握していくハヤト。なるほど、あんな感じなのか。なんとなくルールは知っているけれど、実際に試合を見るのはハヤトにとって初めてだった。

 そしてようやく、莉々がコートに立つ。対戦相手は、莉々より背の高い少女。その表情からは、並々ならぬ闘志が感じられた。

『あの感じ、強そうだな』とハヤトは思った。

 どうやら、莉々の対戦相手は前回都大会の優勝者であるらしい。いきなり、そんな強敵との戦いなのか。

 試合が始まると、両者は一進一退の攻防を繰り広げる。莉々の身体能力は高く、コート内を軽やかに動き回る姿は他の選手たちよりも一段上に見えた。しかし、相手も簡単には点を与えず、巧みなテクニックでシャトルを打ち返している。

「うっ」

 試合を見ていたハヤトは、思わず声を漏らした。莉々が一点を失ったから。相手のネット近くに落とす技に反応できなかった。その後も、彼女は何度か競り負けて点数を取られていく。もどかしい。

 隣で見ているエレナも真剣な表情で、勝敗の行方を見守っている。

「おっ」

 ハヤトは思わず身を乗り出した。莉々の動きが、少しずつ洗練されていく。まるで相手の行動パターンを読み取り、この短時間で対策を練っているかのように。

 そういえば、彼女はこういうのが得意だったな。

 異世界でのリリアも同じだった。彼女は敵の魔法パターンを素早く見抜き、最適な対抗魔法を編み出す才能があった。前世の才能が、現代でも違った形で花開いている。

 莉々の動きが明らかに変わり、守りから攻めへと転じていた。シャトルを狙った強烈なスマッシュは、相手コートを突き刺すように決まる。その姿は、まるで舞う蝶のように美しく、同時に鋭い鷹のように力強かった。

 会場全体が熱気に包まれる。莉々のチームメイトたちからは「頑張れ、莉々っ!」という声援が、相手チームからは「負けるな!」という応援が飛び交う。観客席からも拍手や歓声が上がった。会場で、一番の注目を集めている。

 接戦を続ける両者。第一ゲームを莉々が取り、第二ゲームは惜しくも相手に奪われた。最終ゲームでは、一時は莉々がリードするものの、相手も粘り強く追い上げる。

「頑張れ!」

 ハヤトは思わず立ち上がって声援を送った。ここで気を抜いてはいけない。戦いは最後まで気を抜かずに。勝ちに貪欲になれ。そんな思いを込めて叫んだ。

 その声を聞いたのか、コート上の莉々が一瞬ハヤトを見つめた。彼女は額から汗を流しながらもにっこりと微笑み、そして再び試合に集中する。次のサーブは力強く、相手の隙を突くように精密に打ち込まれた。

「マッチポイント!」

 審判の声が響く。続くラリーは息詰まるような緊張感に包まれた。莉々は前後左右に素早く動き、シャトルを追い続ける。そして、相手の動きが少しだけ甘くなったその瞬間、隙を見逃さずに彼女は鋭いスマッシュを決めた。

「ゲームセット! 勝者、高橋選手!」

 会場に歓声が響き渡る。莉々はガッツポーズをして喜びを爆発させた。それから、すぐに相手選手と握手を交わして健闘を讃え合う姿は、スポーツマンシップの象徴のようだった。

「ハヤトさんが応援してくれて、莉々はとても嬉しそうね」

 そう言って、エレナは優しく微笑んだ。その表情には、何か深い理解と安心感が浮かんでいるように見えた。

「莉々の活躍を、これからも見守っていきたいですね」
「ええ、ぜひお願いします。莉々にとって、ハヤトさんは特別な存在のようですから」

 エレナの言葉に、ハヤトは何も答えられなかった。彼自身も、莉々が自分にとって特別な存在であることを強く感じていた。それは、異世界での仲間という絆だから。その事実を、打ち明けるつもりはないので口を閉じた。
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