盗んだだけでは、どうにもならない~婚約破棄された私は、新天地で幸せになる~

キョウキョウ

文字の大きさ
上 下
15 / 40

第15話 責任を取れ ※エンゲイト公爵家当主視点

しおりを挟む
 息子のウォルトンから、スターム侯爵家のベリンダ嬢をどうにかして助けてほしいとお願いされたので、色々と手を回した。

 まずは、スターム侯爵家について調査を行った。ベリンダ嬢とペトラ嬢について。ついでに、ハルトマイヤー公爵家の次期当主についても調べさせた。

 調査の結果を確認しながら、取引内容を考える。ナハティガル男爵家に協力を要請して、大臣にも報告しておいた。国王の了承も得て、計画を実行する。

 そして、スターム侯爵家で話し合いが行われた。

 話し合いを行ったナハティガル男爵家の当主であるアレッサンドロの報告によると、取引に関する話し合いはあっさり終わったらしい。

 こちらが提示した内容で、向こうは納得したという。取引の金額については、少し渋ったようだ。だが、提示した金額を少し上げただけで、すぐに承諾したと聞いている。

 アレッサンドロが上手くやってくれた。それに加えて、彼らはベリンダ嬢の価値をかなり低く見ているようだった。

 直前に婚約を破棄されたこと。そして、アイデアを盗用したという問題を起こしたからこそ、価値が低いと考えたのだろう。

 調査した結果、ベリンダ嬢が無実の罪を着せられた事は明らかだった。

 ウォルトンが言っていた内容が、事実だった。妹のペトラ嬢が、嘘をついている。それなのに、その嘘を信じているスターム侯爵家とハルトマイヤー公爵家の者達。

 その事実を知った時、私は呆れてしまった。あまりにも愚かだと。

 だけど、私達にとっては都合がいい。彼らの愚かさを利用して、ベリンダ嬢を引き取らせてもらった。

 ベリンダ嬢が居なくなった後、スターム侯爵家は酷い状態になるだろうな。彼らの力の源は人脈だ。それは評判だったパーティーに支えられていた部分が大きかった。

 ベリンダ嬢が居なくなると、評判のパーティーが開けなくなる。そうすると人脈が失われて、金策が困難になると予想される。次第に衰退していくだろうな。彼らは、それを理解していないのだろうか。

 家が衰退した原因が判明した時、彼らはナハティガル男爵家に文句を言ってきそうだ。娘を返せ、なんて図々しい事を言いそうな雰囲気があった。そんな事を言われて、返すわけがない。しっかり対処出来るように、今から備えておく。

 ベリンダ嬢を守れるように準備しておいたほうが良さそうだと、私は考えていた。


***


「お父様、大事な話とはなんでしょうか?」

 大事な話があると言って、私はウォルトンを呼び出した。目の前に座っている彼に、ベリンダ嬢を引き取った事を説明する。

「お前が、助けてほしいと頼んだベリンダ嬢について。ナハティガル男爵家に協力してもらい、引き取った」
「本当ですか!? ありがとうございますッ!」

 嬉しそうに感謝を述べる息子。そんな彼に対して、私は厳しい口調で言う。

「ここまでお膳立てした。だから後は、お前が彼女を幸せにするんだ」
「え?」
「お前とベリンダ嬢を結婚させる」
「け、けっこん……」

 私が告げると、彼は驚いた表情をしていた。今まで結婚するのを嫌がり、18歳になっても婚約者が居なかったから。いきなり、結婚させると言われても困るだろう。だが、今回は逃さない。

「お前が助けたいとお願いして、色々と手を回した。無事引き取ることに成功したが、それで終わりではない。ここからが本番だ」

 私の言葉を聞いたウォルトンは、ゴクリと唾を飲み込む。ここでしっかり話して、彼の意識を変えさせなければ。

「助けた責任を取れ。彼女の人生を背負って、お前がベリンダ嬢を幸せにするんだ」

 ウォルトンは、ベリンダ嬢を助けたいと言った。それなら、最後まで面倒を見るべきなのだ。私の息子なら、必ず成し遂げてくれると信じている。だから、頑張れ。

「わ、わかりました。僕、頑張ってみます!」

 ようやく結婚する気になったようだ。やる気に満ちた様子で返事をするウォルトンを見て、大丈夫だと思った。きっと上手くいく。彼女とウォルトンは気が合いそうだから、心配ない。そんな予感がした。

「もちろん、彼女の気持ちを確認することも大事だ。だから一度、彼女と会って話をするんだ。話し合いの場は、私が用意する」
「はい。話してみます」

 ベリンダ嬢の意思を無視して、無理やり結婚させる気はない。お互いのことをよく知ってから、彼女が納得した上で決めなければいけない。これは、絶対に譲れない。

 それにしても、ようやくウォルトンにも良い相手が見つかった。結婚するのを嫌がって、ずっと逃げていたからな。流石に今回は、断れないだろう。これで、我が子の心配もなくなる。かなり、気が楽になった。良かった、本当によかった……。
しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

【完結】で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?

Debby
恋愛
キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とクラレット・メイズ伯爵令嬢は困惑していた。 最近何故か良く目にする平民の生徒──エボニーがいる。 とても可愛らしい女子生徒であるが視界の隅をウロウロしていたりジッと見られたりするため嫌でも目に入る。立場的に視線を集めることも多いため、わざわざ声をかけることでも無いと放置していた。 クラレットから自分に任せて欲しいと言われたことも理由のひとつだ。 しかし一度だけ声をかけたことを皮切りに身に覚えの無い噂が学園内を駆け巡る。 次期フロスティ公爵夫人として日頃から所作にも気を付けているキャナリィはそのような噂を信じられてしまうなんてと反省するが、それはキャナリィが婚約者であるフロスティ公爵令息のジェードと仲の良いエボニーに嫉妬しての所業だと言われ── 「私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 そう問うたキャナリィは 「それはこちらの台詞だ。どうしてエボニーを執拗に苛めるのだ」 逆にジェードに問い返されたのだった。 ★★★★★★ 覗いて下さりありがとうございます。 女性向けHOTランキングで最高20位までいくことができました。(本編) 沢山の方に読んでいただけて嬉しかったので、続き?を書きました(*^^*) ★花言葉は「恋の勝利」  本編より過去→未来  ジェードとクラレットのお話 ★ジェード様の憂鬱【読み切り】  ジェードの暗躍?(エボニーのお相手)のお話

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

永遠の誓いをあなたに ~何でも欲しがる妹がすべてを失ってからわたしが溺愛されるまで~

畔本グラヤノン
恋愛
両親に愛される妹エイミィと愛されない姉ジェシカ。ジェシカはひょんなことで公爵令息のオーウェンと知り合い、周囲から婚約を噂されるようになる。ある日ジェシカはオーウェンに王族の出席する式典に招待されるが、ジェシカの代わりに式典に出ることを目論んだエイミィは邪魔なジェシカを消そうと考えるのだった。

婚約者様。現在社交界で広まっている噂について、大事なお話があります

柚木ゆず
恋愛
 婚約者様へ。  昨夜参加したリーベニア侯爵家主催の夜会で、私に関するとある噂が広まりつつあると知りました。  そちらについて、とても大事なお話がありますので――。これから伺いますね?

【完結】婚約破棄されたから静かに過ごしたかったけど無理でした

かんな
恋愛
カトリーヌ・エルノーはレオナルド・オルコットと婚約者だ。 二人の間には愛などなく、婚約者なのに挨拶もなく、冷え切った生活を送る日々。そんなある日、殿下に婚約破棄を言い渡され――?

虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました

天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。 妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。 その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。 家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。 ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。 耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。

処理中です...